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食・農・生活をひらく場が見えてきた話

せいことオノフミで仕掛け中の、「作り手と届け手と食べ手をつなぐ場づくりプロジェクト」。2018年の年末ごろから少しずつ進めてきました。それぞれの現場で挑戦してきたこと、今考えていることを出し合ってみたら、にわかに「わたしたちの場」が立ち上がってきました。

出てきたものを道しるべとすべく、言葉にしておきます。

●わたしたちの場では、
食べものを中心として、それに関わる
 作り手:農業生産者・経営者
 届け手:加工・流通業者
 食べ手:生活者
が、それぞれの立場を持ちつつも、対話を通じてお互いを知り、ひらき、出会います。
食べること・働くことは人間の根幹であり、人とつながり生きる希望であることを、場を共につくる一人ひとりと共有します。
●わたしたちの場の持ち味は、
・ヒエラルキーを持ち込まないフラットさ
・コミットメントを強要しない寛容さ
・多種多様なコンテクストの参加者が集う
・事実ベースの経験や気持ちがお互いの刺激と祝福になる
ことです。
●わたしたちが場を営むのは、生活者であることに加え、
・オノフミは、食料消費・食生活の研究、日本農業経営大学校専任講師
・せいこは、鑑賞対話ファシリテーター、ワークショップ・デザイナー、場づくりコンサルタント
というバックグラウンドがあることが大きな要素です。

今回の記事は話したことの書き起こしです。
食や農はもちろん、イベント企画設計、教育普及プログラム、場づくりに関心がある方にも読んで(聴いて)いただきたいです。

音声で聴きたい方はこちらをどうぞ。

______________________________________

せいこ: わたしは、他の配信番組でも話したんですけど(これとかこれ)、とある映画にまつわる対話のイベントのファシリテーションのお仕事をさせてもらったことが、最近では一番大きかった出来事です。「これぞ私がやりたかったことです!」みたいな。

オノフミ: すごい。

せいこ: そこから展開して、このプロジェクトも、「あ、なんかやれそう感が出た!」っていうところに、今いますねえ。

オノフミ: すばらしー!

せいこ: まさに、《作り手と届け手と食べ手》がいる対話の場だったんですよ。

オノフミ: ああ、映画の作り手の方と。

せいこ: 作り手は監督さん。届け手は配給さん、宣伝さん、(追記:劇場さんも)。食べ手は観客の人たち。みんなが一緒に混ざって、お互いの立場はありながら、そこから見える景色を交換したり、お互いに刺激を受け合って、より映画を共に育んでいる。わたしはそういう場や画(え)を見て、「ああ、やっぱいいなぁ」って。こればっかやって生きていきたいなって思ったですね(笑)。オノフミさんもその場に来てくださったんですよね。

オノフミ: はい、行きました。沈没家族の映画の話はツイッターなどでいろんな方がシェアされているのを見ていて、ちょっと興味はあったけど、すごく興味があったかっていうと、「うーん...」っていうくらいの感じ。そもそもそんなに映画を観ないんですよ。

せいこ: あ、そうなんだ。

オノフミ: そうなんですよ。そうなんですけど、せいこさんがわざわざメッセージを送ってくださって、「きっとなんかあるんじゃないかと思ってる」と書いていたり、せいこさんがどういう思い入れでやっていらっしゃるかなどを、いろんなところで書いてらっしゃるのを見て、これは我々の場のこともあるし行こう、と。しかもここがたぶんせいこさんにとっても大舞台というか、メルクマールになる場なんだとしたら、これは体感した上で、せいこさんがどういう手応えを感じられたかを聞いたら、より腑に落ちたり、なんかすごくいい経験ができるのでは?という期待もあり、行きました。映画を観る前に行きました(笑)。

せいこ: ああ!そうそう、観てないけど来てくれたのがありがたい(笑)。その日は映画を観た人だけじゃなくて、観てない人も来てもいいよって言ったら、なんと4分の1くらい観てない人が来て(笑)。

オノフミ: そうそう、けっこういらっしゃいましたよね!

せいこ: そう、けっこういて。それがすっごいおもしろかったんですよね。観てない人でも、映画に対する何らかのイメージや期待を持って絶対来るはずだとは思っていたから。

オノフミ: あ、そうですね。

せいこ: 実際の場でもそのイメージや期待を言ってみたらいいし。観た人は観た人で、「もう絶対観た方がいいよ!」「なぜそう思うかというと」を語れる。だけど「(ここは肝だから言わない方がいいぞ...)」みたいなことも調節してくれるだろうと(笑)。

オノフミ: 確かに。

せいこ: そこの新鮮味はあったんじゃないかな。この場じゃなければ、きっと「ネタバレ」とかいって避けたりするじゃないですか。

オノフミ: あー避けますねー。

せいこ: それを堂々とやるっていう。でも内容を話しても大丈夫で。

オノフミ: そう。観た方が「ここがよかった」みたいな話をしてくださるんですけど、それを聞いて「興ざめ!」とか、「知らないでおきたかった!」というよりは、「えっ、それを自分の目でも見たい!」っていうような感じだったんですよね。

せいこ: うん。だからもはや「ネタバレって何だっけ?」みたいな感じに、ちょっと今...まぁちょっとずれますけど、そういう関心も今出てきたり...。

オノフミ: ええ。うん、うん。

せいこ: あと何か発見とかありました?

オノフミ: 本当に観ないで行ったにも関わらず、いろんなことがそこから思い出されたんですよね。そもそも、ものすごくあの映画が観たかったとか、ものすごく自分にとって切実なことってほどでもなかったんです。でも、そこで語られているお話を聞いたり、考えたりしてるうちに、なんか自分の昔の経験とか、「あ、こういうこと考えたことあったなぁ」とか、今の自分と繋がる部分があったり、そういうのがいっぱい呼び起こされたんですよ。

せいこ: うん、うん、うん。

オノフミ: うん、そう。で、やっぱり話していく中で...なんだろう...やっぱりあれは共同保育がテーマの一つになっている映画で。切実にそれをやる人の話で。「ああいうのがいいな」と思っている人ほど、「わたしにはできないしなー」とかって思いそうな。

せいこ: 「特別なあの人だからできるんだよー」とか。

オノフミ: はい。わたしもただ映画を観ただけだとそう思って、モヤモヤしながら帰ったかもしれないですけど、そこでいろんな人の話を聞いたり、そのあと、せいこさんとのやりとりがあったりして、「自分とそういうものの関わり方」みたいなことが、たぶん映画を観ただけとは違う答えみたいなものが出た、感じがしました。

せいこ: うん、うん、うん。

オノフミ: うんうんうん。わたし映画を観に行くと、その日の夜は絶対、夢を見るんですよ。

せいこ: へえ。

オノフミ: 映画に関係あるかどうかはさておき、絶対、夢を見るんですね。普段、そんな毎日見たりしないんですけど。つまりそれは、観るといつも以上に脳が活性化されるから。それだけ刺激を受けているのに、でも普段はあんまり人に言えないんですよね。一人で観に行ったり、家族と観に行っただけだと。それが人と思い起こされたことを話して、さらにいろんな人が思ったことが聞けることで、すごく広がった...、開いた...そうそう、開いたっていう感じがしました。

せいこ: へえー、そんな体験を!

オノフミ: はい、そんな体験を。そうそう、そうでした。

せいこ: 『沈没家族』という映画のタイトルで。そして、そのイベントのタイトルが、『語らずにはいられない、沈没家族と"わたしの家族"』。【わたしの家族】というテーマがちょっとセンシティブかなって思ったので、対話するにあたって、いくつかルールを共有しました。でも、そんなに怖がってたわけじゃなくて。

オノフミ: ええ。

せいこ: きっとこの映画を観て話したいって思う人だったら大丈夫だろうと思っていた。我々の場で扱う【食】や【農】というテーマにしても、経済的なこと、生い立ちに触れてくることもありますよね?

オノフミ: 非常にあるんですよね、それが。

せいこ: そこがわたしたちにとって怖れとしてあった。

オノフミ: ありましたね。

せいこ: でも「真ん中にくるもの」があって、その対象とあなたとの関係、その対象とわたしとの関係っていう話を一生懸命するのが良いっていう設定であれば、「ああ、あなたはそうなんですね」「わたしはこうです」という会話になる。そこでは傷ついたりすることはあまり起こらなそう、大丈夫っていう感じがしたんです。「家族」というテーマでこれだけしゃべれるんだったら、食なんか全然いけるじゃん!みたいな感じ(笑)。

オノフミ: そうそう、そうなんですよ。映画『沈没家族』は、家族の話の中でもけっこうディープというか、親子、パートナーとの関係とか、人によってそういうことに対する価値観も違うような話題だった。近い経験をしてる人にとってはすごく心を揺さぶりそうな、敏感なところに刺さる人もいるような話だった。でも行ってみたら、自分の話をかなりオープンにされる方もいたし、かといって、それを聞いて自分の中の何かが、「ウッ苦しい...」ってなるとかもなかった。話してる人も無理をして話してるとかでもなく。映画を観て、自分が自然に思ったこととして、映画との関係で話していて。

せいこ: うん、うん、うん。

オノフミ: もちろん映画を観て思ったことなら、別に家族の話をしなくてもいいし。自分の話をしなくても、思ったことを言ってもよくて。

せいこ: ああ、そうそう。何を言ってもOKで、歓迎されて。

オノフミ: しかもそれは全部、その映画を介してつながってるから、「いや、それ今違う話でしょ」とかもなく。

せいこ: そうそうそう、本当に全部、「文脈の中で必要だから出てきているものだ」という了解が全員にあったという感じがわたしもしていて。

オノフミ: そうですね。2回席替えをしたので、3人で話すタイミングが3回ありましたけど、それぞれ全然違って、「家族」の話をガッツリしたテーブルもあったし、別のテーブルでは、「映画や漫画を2度以上見ることの意味」みたいな話をしたり(笑)。

せいこ: えー、そんな話をしてたんですねー(笑)。

オノフミ: でもそれも全然文脈の違う雑談ではなくて。「2回観たことで、わたしはこう思った」という話をしているうちに、「映画を2回見るってそういうよさがあるんですね」という発見につながったり。一つの同じものから、それだけいろんなことが派生するっていうのもおもしろかったですねぇ。

せいこ: うん、うん。そして、観客同士の対話ももちろんおもしろいんだけど、そこに作った人や出演してた人とかもいて。登壇しますと宣言して顔を出していた人もそうだし、それ以外にもさりげなく出演者が何人か座っていたりもして。すごくフラットに話せてよかったんですよね。

オノフミ: あ、そうですねぇ。

せいこ: 「作った人と出演してた人の話を聞くだけの時間」も作って、「観た人の話を聞くだけの時間」も作って、そして最後はみんな混ざる、みたいな設計にしてました。

オノフミ: はい。そうですね。映画の中のご家族に近い状況の方もいらっしゃったけど、でもその人が偉いとか、その人が言うことは聞かなきゃ、とかでもなかったですね。

せいこ: そうそう、ぜんっぜんないですね。

オノフミ: 「そういう話もあったんだー」という扱いだし、その人たちも教えるとかじゃなくて、他の人の話も「へえーなるほど」「そういう意味もあったのか」みたいな感じで聞いてらっしゃって、ほんとフラット。

せいこ: それはやっぱり映画が真ん中にあって、フラットになるような設えなんですねぇ。2回席替えをしたりも設計だし。

オノフミ: そうそう。一個の体験じゃなくて、その対話を複数体験すると、なんか本当にフラットだしいろいろある、その人と対象の関係がこんだけあるんだな、と思える。

せいこ: 映画の力と場の力と。「力」っていうとわかりづらいか。映画の魅力やオープンさ、たくさんのテーマを内包しているということと、場が安心、安全、健やかに設計され進行されていくことと。

オノフミ: うんうん、そうですね。

せいこ: 目的を持って、効果を考慮して設計されてるっていうこと。そう、あと、今日もういっこ話したかったのは、キャスティングのこと。

オノフミ: はい。

せいこ: 今回でいうと映画側の人がどういう人なのかということがすごく重要なんじゃないかなって、今日来る前にちょっと思ってたんですよね。

オノフミ: 映画側の作り手と届け手がどういう人か。

せいこ: うんうん。だから食や農でいえば、作る人は生産者さん。届け手は、例えばスーパーのバイヤーさんとか?

オノフミ: 八百屋さんとか。

せいこ: そうそう。私たちがやろうとしてることの、まだ見たことはないんだけど、「対等さ」...どっちがえらいとか、作ってるから偉いとかじゃないんだっていうことをあらかじめ持っていてくれる人がいいですね。

オノフミ: ああ、そうですね。

せいこ: 『沈没家族』でいえば、監督もそう。出演者で、その映画の主人公と言ってもいい、監督の母の穂子さんの二人は、めちゃくちゃフラットで。

オノフミ: うん、そういう感じがしました。

せいこ: めちゃくちゃオープンで。ほんとあのような人たちだから、成立したのもあるなって思っていて。

オノフミ: ああ、それはたぶんそうですねぇ。

せいこ: 言い方は悪いんだけど「教えてやろう」とか、人の話を聞かないで自分の話だけしたい、という感じだと、フラットな場を一緒につくるのは難しい。だからそこの共有ができたり。あるいはもともと、あの人なら大丈夫っていう確信がほしい。

オノフミ: ええ、ええ。

せいこ: 例えば、わたし・せいこと、その人との普段のやりとりの中でも、そういうもの(対等でないふるまいや言動)が全然出ないとか。オノフミさんとの関係の中でも、ぜんぜんない、そして三人になった時もないとか。

オノフミ: ええ、ええ。

せいこ: という事前確認みたいなものがけっこう大事だと思う。立場やネームバリューとか、やってらっしゃることとかもすごい大事なんだけど。...ネームバリューってのはやだな。

オノフミ: まあ、なんですかね。

せいこ:  「それで社会で生きてる」っていうか(笑)。

オノフミ: ええと、なんだろう。

せいこ: 核がある人?すいません。言葉が不自由…。

オノフミ: 「それで社会に出ている人」、まさにそれ。

せいこ: そうそうそうそう。自らもそれを名乗れる、みたいな人かな。

オノフミ: プロ?

せいこ: そうそう、プロ。うんうん、そうだね、そうそう。そして、プロなんだけどフラットでいる人?

オノフミ: そうですね。プロであるというプライドとか、職業上の矜持みたいのはあるけど、「だから上です」とかじゃなくって。

せいこ: なくって。

オノフミ: そういう立場ですよっていう。

せいこ: うんうん。

オノフミ: そして「あなたは別のその立場ですね」と、フラットに尊重しあえる。

せいこ: フラットで尊重。あとは、好奇心?

オノフミ: そう、好奇心!!好奇心ですねー。

せいこ: 好奇心を持って食べ手の話もおもしろく聞けたり。むしろ「それを聞きたかった!」とか。「こういう場でなければ聞けないからぜひ聞きたい!」とか。そういう熱い感じだといいな。

オノフミ: いいですねー。

せいこ: わたしは全然、農業界に詳しくないんだけど、イメージや像が固まってきた感じがあるから、それでこの場をやれそう感っていうのが出てるな。誰とやるかっていうのは、すごく大きいから。

オノフミ: 像が固まってきた、はい。わたしもやっぱり、「やれそう感の手前」にこないだまではいたんですよね。

せいこ: うんうんうん。

オノフミ: それは、《作り手》《届け手》《食べ手》って言ったときに、わたしはどうしても農業界の人間でもあるけれども、でもこの場に関しては圧倒的に食べ手の立場なんですよ。

せいこ: うんうんうん。

オノフミ: そうすると、《食べ手》にとってこれが意味...意味というか、少なくともおもしろいっていうのはすごくよくわかるし、自信はあるんですけど、《作り手》や《届け手》にとってどういうところがいいか、という説明があまりうまくできないなーって、ずっと思ってたんですよね。

せいこ: うんうんうん。

オノフミ: これを録る前にせいこさんと「でもその説明がつかなくても良いのではないか」ということを話してました。説明がつかなくても、「なんかありそう感」と言うか、Aを押したら B になります、この場に参加したらこれになれます、この知見が得られますっていう説明は、できない。

せいこ: うん、できない。

オノフミ: できないんですけど、こういう場って今までなかったし、なかったからなんかおもしろそうかも、ということは示せる気がする。それでいいのかなっていう気持ちになった。『沈没家族』の場で、あれだけいろんな人が対象とのいろんな関係をオープンにして、みんな楽しそうだったのを見ていたら、今自分が持っている言葉や知識で説明できなくても...いや、むしろ、説明しようとする方がちっちゃくなっちゃうっていうか。

せいこ: ああ、そうねー、そうかも。

オノフミ: 自分の持っている語彙で、しかも自分とちょっと違う領域の人に無理やり伝えようとすると、どうしても小さくなるというか。説明不足に、逆になる、みたいな。

せいこ: ああ、説明不足に逆になる。

オノフミ: 説明しようとすればするほど遠のいていく、みたいな。

せいこ: うんうんうん。

オノフミ: でも説明しなきゃと思ってたんですけど、「きっと〇〇さんにもおもしろいと思いますよ!」みたいなのでいいのかなっていう感じがして。

せいこ: ああーーうんうんうん。

オノフミ: 今話してて思ったのは、たぶん、《食べ手》の側の人に対しては、わたしそういう説明の仕方をすると思うんですよ。お誘いするときに、「わりと○○さん、好きだと思う」みたいな言い方を。

せいこ: うん、私もすると思う。てか、実際もうした(笑)まだ何もやってないのに(笑)。

オノフミ: それと同じ感じでいいのかもしれないなって思いました。『沈没家族』でもそう思ったし、それとは別に、せいこさんとご一緒した『新しいカテイカ』っていうのイベントでも、ワークショップみたいなことをしましたけど、その時のフラットな感じも含めて、何とかなるんじゃないかなって。

せいこ: フラットであればなんとかなる。あー、あとは、その場がどういう場なのかの、絶妙な説明ぶりによって、切実な人は必要な切実さを持ってくるし。「なんかありそう感」のみで行って、思いがけず自分の切実さに気づかされた、みたいなこともあるし。べつに切実とかはないんだけど、楽しかったー!もあるだろうし。いろんな人がいられるようになるんだなぁって今聴いてて思った。

オノフミ: ああー!今聞いてて、わたしも思ったのは。

せいこ: うふふ(笑)

オノフミ: やっぱり事実を説明することがすごく大事なんだって。

せいこ: そう!そうそうそう!(笑)。

オノフミ: そうそうそう(笑)。「これにどういう意味がある」とかいうことはその人が決めることだったりして。もちろんそれを説明するのが必要なときもあるんですけど。でも、それより大事なのは、事実を事実としてちゃんと説明すること。それを見て、興味がある人は、それがどういう興味かはさておき、自分なりの動機で来てくれる。

せいこ: うん。来て、安心安全で楽しそうだったら、もうあとは自分の実感の話しかしないよね。

オノフミ: ああーそう、そうですねぇ。

せいこ: 聴いてもらえたら、対話だから、それに対する応答があって。自分の話したことが、他者に対して影響を及ぼす。わたしが話したから、相手がそれを受けて返してくる体験をして。それが繰り返されて網目のようになっていって。どこかでちょっと「あれ!?」と思うことが万が一あったとしても、それは場の設計...例えば席を替えるとか話題を変えるとか、いろんなことができる。

オノフミ: ええ、ええ。

せいこ: やれそう!(笑)

オノフミ: やれそう、やれそう。うん、そうですねー。事実を話すっていうのが、わりとキーワードだったのかもしれないですねー。

せいこ: ねー。

オノフミ: 主義主張とかじゃなくて、事実。

せいこ: ああ、そうそう。「事実」を聴いていくと楽しいんですよねぇ。

オノフミ: そうなんですよ。その事実が、当たり前だと思っていたことと違うことが往々にしてあって。

せいこ: そうそうそうそう(笑)

オノフミ: ああ、そうだったんだー!っていう。

せいこ: 「それ、週に何回くらいなんですか?」って聞かれて、「あっ、いつもいつもって思ってたけど、1回しかない!」とか(笑)。

オノフミ: あ、そう!意外とね。「よく食べますー」とか言ってたのに、「こないだ食べたのはいつですか?」って聞かれて、「あ、去年?」とか(笑)。

せいこ: そうそうそう(笑)けっこう自分の認識ってテキトー。

オノフミ: そうなんですよねーーー。

せいこ: もうそこに心の話とかぜんぜん要らない(笑)。過去の傷とかそんなんぜんぜん関係ない(笑)。関係ないっていうか、なんだろう...事実の確認だけでもう十分に発見があって楽しい。対話したら、そのあとは自分の中で気づくことがはじまる。

オノフミ: あ、そうですねー。うんうん。

せいこ: 人間がいてくれてありがたい(笑)って。相手があるってありがたいなー。「腹筋のとき、足押さえててくれてありがとう」とか、「玄関先にお花を植えたら、反応してくれてありがとう」とか。

オノフミ: ありがとう、とか。それについて聞いてくれて、広がるー!とか。

せいこ: うんうんうん、そういうのやりたいですねー。

オノフミ: そうですねー。ああ、だからこのあいだの『新しいカテイカ』のワークショップのときも、「家事についてのモヤモヤを話す」というテーマで3人で1組になって。1人は話す人、1人は聞く人、1人はメモを取る人になる。聞く人は、まぁ、聞くんですよね。

せいこ: 一生懸命、聞くんですよね。

オノフミ: そう、質問もちょっとしたりして。そこで聞いてもらったり、お題を設定してもらうから語れるっていうことがある。解決したいことや考えたいことがあっても、問われて語らないと、さっきせいこさんが言ったように、「自分の中での気づきがはじまる」というところまで行かないんですよね。解決しようと思ったって、それだけではまだたぶん導火線に火がつかない。でも聞かれると、「あ、こんなこともあった」っていうのが思い出されて、それが楽しいってこともあるし、何かにつながることもあるし、誰かとつながるきっかけになったり。

せいこ: その場で推奨されてることが明確であれば、人は必要な分だけ、自分で判断して話すんだなって思う。

オノフミ: あ、確かに。

せいこ: 推奨されてるっていうのは、つまり、「こういう課題を話していい」とか。「存分に話したらいい」とか。「本当に思ってること話していい」...いや、「本当に思ってること」って気持ち悪いな...。「何かにフォーカスして事実を話す」とか。「役割」でもいいか。

オノフミ: ああ、そっか。「あなたは今、話す役割の人」。

せいこ: そこに一生懸命になればいい。

オノフミ: だから、「しゃべりすぎてすいません」とか言わなくていい。

せいこ: あーそうそう!

オノフミ: 「自分のことばっかりしゃべってごめんなさい」ではなく、「あなたは今しゃべるお役目です」から、専念していてよい。

せいこ: 「もっと困ってる人はいるのに」とか(笑)そういうのも要らないし。

オノフミ: ああ、そうそう(笑)、「私なんかがこんなこと」とか。

せいこ: 「家庭がある人はもっと大変だと思うけど」とか(笑)なんかもう、ぜんぜんそういうのはない。

オノフミ: だから「自分の話」ですよね?

せいこ: そうそう。

オノフミ: 自分と、対象の話、なんですよね。 

せいこ: そうそうそうそう!自分と対象の話。ほんと。そこに集中することが推奨されてる。

オノフミ: 「他の人がどう、とかじゃなくて、自分とその対象の話をしてください」っていうお題で、あなたはしゃべる役割です。うん。わたしが勤め先のゼミでやっているグループインタビューも、なんとかこれまで拙いながらもフラットさを保ててたのは、「あなたがどうしているか」という事実を聞いてきたんだと思うんですよね。「こう一般的には言われていますが、あなたは?」とかでもなく、「"あなたは"どうなんですか?」と。しかもインタビューを受ける方には、「話してもらうことで、学生の役に立ちます」っていう、そういうお役目をやっていただいてる、みたいな。

オノフミ: なんとかそういう場になれていたような気が、あらためて考えるとしますねぇ。

せいこ: うんうん。そうだ、さっき話を聞いていてすごいいいなって思ったことがあった。学生さんが小野ゼミを選んだ理由が、「そこでしかやらなそうだから」っていう話。グループインタビューだったり、「小野ゼミでこれをやります」って言ってるようなことはそもそもやったことがないし、聞いても実際に何をやるかをそんなに全部わかったわけじゃないんだけど、なんか他ではできなそう、なんかありそう感(笑)があるから。

オノフミ: なんかありそう感(笑)

せいこ: 「だから他のゼミも選べるんだけど小野ゼミに来た」っていう話だったですね。

オノフミ: そう。「なんなら他のゼミでやってることの方が、自分の今までの文脈では価値や内容がよくわかる」とその学生は言っていて。「でも、だからこそ、逆に自分でただ普通に暮らしていては選ばなそうなことをやる」って言ってましたねぇ。

せいこ: うんうん。うーん、なんかこの話をあとで聞いたら、まだこの世にない仕事をつくってる身としては、めっちゃ励まされるだろうなぁって思った。今話してても励まされてるんだけど、後から繰り返し聞きたい、みたいな感じになってる(笑)。

オノフミ: ああー。それが何かわかっている、全てがわかってるってことがいいとは限らない、行動を後押しするとは限らないですよね。たぶんわかんないから選べるとか、わかんないからそっちにしよう。自分ではやらない。わかんないってのはそういうことだ、みたいな。

せいこ: うんうんうんうん。

オノフミ: 今まで見たことないし、名前がつけられないけど、だからきっと新しいことに出会えるって思う。

せいこ: うん。

オノフミ: きっとせいこさんのお仕事も、「なんかよくわかんないけど、"場"とかわかんないけど、今まで行ってきたセミナーや勉強会とはなんか違う」って思って来てもらう...みたいなのはありますよね。

せいこ: ねー。......えーと、それでですね、我々の場の「やれそう感」はあるのですが。

オノフミ: はい。やれそう感はあります。

せいこ: 「いつやるか」は、まだ全然話してなくて(笑)。

オノフミ: そうですねー(笑)。

せいこ: まだそこまでは行けてないんだけど、ぜひまた話しましょう。

オノフミ: はい。もう近づいております、わたしたち。

せいこ: はい、近づいております。もうこっちでいい!って感じだよね。

オノフミ: そうですね!分かれ道の前の、「うーん、どっちだっけ?」みたいなのが、「今、こっち!」っていう。

せいこ: うん!

オノフミ: ポイント切り替えしました。

せいこ: 鉄(笑)。

オノフミ: 鉄です!(笑) はい。

せいこ: そうですね。また次回お楽しみに!

オノフミ: はい。

せいこ: 今日はありがとうございましたー。

オノフミ: ありがとうございました。

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舟之川聖子|Seiko Funanokawa

鑑賞対話ファシリテーター。場づくりコンサルタント。関係性のデザイン。対話。共有したい・伝えたい・残したいものがある人と、鑑賞者に橋をかけ、集う一人ひとりの豊かな鑑賞体験を促進する場をつくります。https://seikofunanokawa.com/

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