虐待に至ってしまった親にもケアを

虐待に至ってしまった親御さん・養育者の方が、ご自身の回復に取り組みながら、子どもへの虐待的言動・行動を止めることを目指す、《MY TREEペアレンツ・プログラム》が、今年も9月から東京エリアは国分寺ではじまります。

更生や矯正ではなく回復。今まさに辛い思いをしている方へ届けばと願うと共に、それ以外の方にも、このような回復プログラムがあることと、プログラムが必要な理由を知ってもらいたいと思い、書いています。

わたしはこの活動を友人から聞いて知り、陰ながら応援している者として、ご紹介しています。


MY TREEは、虐待行動の向こうにある痛みや悲しみを丁寧に扱い、生きる力を取り戻すことをサポートするプログラムです。
子育てが苦しい、子どもへの暴言・暴力を止められない、子どもを無視してしまう...やめたいのに、変わりたいのに、自分だけの力だけではどうにもできないという方に向けたもの。つまり実際に行動に移ってしまって悩んでいる方を対象にしています。

理論と実践に基づき2001年に開発されたプログラムを訓練されたファシリテーターが進行する、少人数での語り合いを中心とした、支え合いのグループです。18年の実績があります。13回のプログラムは、一見すると長いようにも見えますが、回復というものには、一つひとつを味わい実感していく時間と、ゆっくりと紡がれていく関係性が必要だということを表しています。

このチラシにある、東京でMY TREEペアレンツ・プログラムを実施している《アフターケア相談所ゆずりは》は、児童養護施設、自立援助ホーム、養育家庭等を退所した方、高校卒業後に自立生活を余儀なくされる方が、安心して助けを求められ、問題解決へ向かえるよう伴走型支援をしている事業所です。http://www.acyuzuriha.com/


東京の「ゆずりは」以外にも、全国でプログラムが実施されています。
詳細はこちらをご覧ください。


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わたしがこのプログラムをシェアしている個人的な経緯や思いとしては、まずは、信頼している友人がかかわっている活動、ということがあります。

そして、その友人から紹介してもらった本を読んだことがあります。このプログラムを開発し、普及活動をしておられる森田ゆりさんの編著「虐待・親にもケアを」を読み、感想をシェアする読書会に参加しました。

わたしはどちらかというと「された側」の視点から、虐待というテーマを長らくみてきたのですが、自分のある種の「回復」が進むにつれて、次第に「した側」にも関心が移っていくようになりました。そしてそれは裏表一体のことなのだ、と自分事としても理解するようにもなりました。

子は親を救おうとする。
しかし親を救うのは、親自身であり、そこにケアとサポートが必要なのだと思うのです。

この親の回復プログラムが必要な理由は、『虐待・親にもケアを』の随所に書かれていますが、P63の箇所がもっとも的確に言い表しているのではないかと思い、引用します。


すべての子どもは、安全、そして安心な環境で育つ人権を有しており、いち人格として尊重に基づき扱われ、体罰や虐待、そのほかのどのような屈辱的な扱いも受けてはならないのです。この理念の実現のため、虐待に至った親が子どもとの尊重に基づいた健康な関わりを持つための土台は、まず親が自分自身の人権尊重、自分という存在の唯一無二のかけがえのない大切さを心から深く感じることから始まります。

もっと深い思想と記述もこの本の随所にあるのですが、あえてこの箇所のみに、わたしなりの言葉を加えてみます。
・親も一人の人間としてこの社会の中で、尊重され尊厳をもって生きる存在であり(親の人権)、
・虐待をしてしまっている親自身が助けを求めている人であり(親の福祉)、しかし懲罰では解決しない。
・また、親に変わってもらいたい、一緒に暮らしたいという子の願いは大切にされるべきで(子の権利と福祉)
・そしてより広い観点からは、暴力は公衆衛生・健康上、グローバルな社会課題である。暴力は構造的に不可避な社会問題なのではなく、「予防」が可能である。(WHO"World report on violence and health" 2002および2015年の国連のSustainable Development Goals:SDGs 16.2 「子どもに対する虐待・搾取・取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する」などより)

言うまでもなく、虐待を受けてしまった子の側のケアや回復もとても重要です。「どちらかを重点的に救おう」という話ではありません。人権=生きる力を土台にした、ケアやサポートも重要であり、予防段階も含め、まだまだ足りない状況に思えます。

それらの必要性にも関わらず、日本では、虐待に至ってしまった親の回復支援がまだ法制度の中には組み込まれておらず、このMY TREEのプログラムも、任意での参加と聞きます。まずは受け皿が増えることと、裁判所が親の回復プログラム受講を申し渡せるよう、法改正が急務です。


最後に、『虐待・親にもケアを』の「はじめに」からの引用をご紹介します。本書を貫いている理念のようなものです。わたしは読むたびにいつも心に響き、内から力が湧くような思いがしています。


虐待に至ってしまった親たちの回復支援は、子育てスキルを教える養育支援ではありません。母親支援でも、父親支援でも、子育て支援でもなく、その人の全体性回復への支援です。虐待行動に悩む親たちは、今までの人生において他者から尊重されなかった痛みと深い悲しみを、怒りの形で子どもに爆発させています。加害の更生は被害によって傷ついた心身の回復からしか始まらないのです。MY TREEの参加者たちは、親である前に一人の人間として尊重される体験を得ることによって、自分を回復する礎としてきました。

 参加者を母親として、父親として、妻として、嫁としてといった分断されたアイデンティティとして見るのではなく、人間の全体性に訴えるホーリスティックなプログラムであることがMY TREEプログラムの特徴です。


今まさに辛い思いをしている方へ届いたなら、また、それ以外の方にも、このような回復プログラムがあることと、プログラムが必要な理由を知って関心をもっていただけたなら、とてもありがたく思います。

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ほのぼのと舟押し出すや蓮の中 漱石
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舟之川聖子|Seiko Funanokawa

鑑賞対話ファシリテーター。場づくりコンサルタント。関係性のデザイン。対話。共有したい・伝えたい・残したいものがある人と、鑑賞者に橋をかけ、集う一人ひとりが味わい尽くせる場をつくります。blog: http://hitotobi.hatenadiary.jp/

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