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あなたの創作活動と著作権 [120]

 近年中国とアメリカとの間で繰り広げられる貿易摩擦。その一つの原因として挙げられるのが中国による知的財産権の侵害です。知的財産権とは、ある人の作品に対してその作成者に与えられた権利のこと。通常、その作品一定期間を独占的に使用する権利が与えられます。そしてその権利は、2つの部門に分けられます。それは、工業所有権と著作権です。工業所有権は特許や商標権などビジネスに対する権利で、著作権は主に文学や芸術作品に対しての権利となっています。
さてそんな著作権は今年の通常国会で大きな注目を集めました。ただそれは米中摩擦のことではありません。著作権法改正案についてです。

  そもそも著作権とはどういう権利なのでしょう。日本では著作権法という法律で著作権が守られています。その法律が守る権利は、大きく分けて2つです。1つは作成者の人格権を保護するための権利、もう1つはその作品の利用を保護する権利です。作者の人格権というのは、作者の名誉を守る権利。例えば「その作品には必ず私が作ったと(作者の名前を)明記する」といった事を決めることが出来ます。またその作品を公表するかどうかを決めたり、またその作品の意図が勝手に変えられないようにすることも出来るようになります。一方で、作品の利用の保護はいろいろな状況に対応出来るように複雑になっていますが、基本的には作成者の意向が最大限反映されるようになっています。
しかし、この権利は永久に保障される訳ではありません。基本的に公表後70年と決まっています。これは生死に関わりません。その為、著作権は相続が出来るのです。
さて、そんな著作権法が保護をする対象ですが、2つ条件があります。
・思想もしくは感情を創作的に表現した物であること。
・文学、学術、美術または音楽の範囲に属すること。
これらを満たしていないと保護されません。つまり、統計やアイデア、模倣などは対象外なのです。

  さて、政府が今年国会に提出しようとしていた著作権法の改正案は何が話題になったのでしょう。今までは、違法に投稿された音楽や映像のダウンロードが規制されていました。しかし改正案では、規制の対象を全ての著作物にするとされました。またダウンロードのみならず、スクリーンショットも禁止されます。
この改正案は専門家やネット利用者などからの懸念の声を受けて、国会に提出は見送られました。しかし、改めて著作権の事について考えなくてはならないでしょう。
何故なら、例えばこの改正案であなたがアプリで使っているアイコンが違法であるとされる場合があったためです。もし仮にそれが誰かの描いた作品で、使う許可を得ていなかった場合のことですが・・・。

  昔のように大国同士の武力による戦争がなくなった今、特に先進国を中心に個人での芸術活動が活発化していると言えるでしょう。あなたもその1人かもしれません。多くの人が創作活動に関わり、いろいろな分野で新しい芸術が生まれています。その一方で、多くの人間が関わるようになったため、小さな事から大きな見解の相違が起こるようになってきました。例えば「他人の曲をカバーする」というのは創作活動かもしれませんが、「他人の絵をカバーする」、つまりその絵を解釈してアレンジを加えるというのは果たして創作といえるでしょうか。それを芸術だという人もいれば、単なる真似に過ぎないという人もいるでしょう。さてその作品に対して司法はどう判断するのか。これに著作権を与えてしまうのでしょうか。今まで書いてきたことをふまえてみて、我々は常に平等な判断を下せると思いますか。
もしかしたら制作者1人1人のモラルの問題かもしれません。モラルさえしっかりしていれば解決出来るかもしれない。しかしそもそも、人間の創作の意欲というものは理性で制御出来るものなのでしょうか。いや、そんなことを許していては著作権者がいつまでも嫌な思いをする。いろいろな意見が出るはずです。この芸術の分野においては、争いなど起こらないで欲しいですね。

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