見出し画像

大杉潤著「定年ひとり起業」生き方編 自由国民社

 定年を前にして、私も含め、これからの生き方に思い迷っている人々は多いのではないだろうか。人生100年時代の声もある中で、日本の社会制度、企業の雇用の在り方は、まだまだ追いついていないように思われる。

 本書は、研修講師、企業コンサルタント、ビジネス書作家の大杉潤氏が、新しい定年後の幸せな人生設計およびライフスタイルを提案した、「定年ひとり起業」、「定年ひとり起業 マネー編」のシリーズ第3弾の本で、「定年ひとり起業」シリーズの集大成の書籍である。

 初めに著者の大杉氏を紹介する。大杉氏は、早稲田大学卒業後、日本興業銀行に22年勤務の後、東京都に転職し新銀行東京の創業メンバーを務める。その後、人材関連会社、グローバル製造業の人事、経営企画の責任者を務めた後、57歳で退職。かねてから構想していた「定年ひとり起業」を自ら果たす。様々なチャレンジを経て、「定年ひとり起業」を軌道に載せ、65歳の現在に至る。

 本書は、大杉氏が自ら実践した「定年ひとり起業」の考え方、実践的なノウハウ、そして読書家の大杉氏が読んだ1万冊以上のビジネス書から得た知見を余すところなく書き綴ったシニアの新しい生き方の指南書である。

 それでは、本書の概要を紹介する。

 著者は、本書のはじめに、シニア世代の誰もが感じている”定年後の不安”に関して、こう語っている。

 私が定年前に起業して、フリーランスで仕事をすることにした理由は、人生100年時代を前にして、多くのシニア世代(40~60代)の皆さんが、今感じているのと同じように、定年後の長い人生に大きな不安を感じたからです。
 その先の人生の方が長く、65歳以降も仕事を継続して収入を維持していきたいと考えたのです。
 そのためには、「雇われる働き方」ではなく、自ら事業を起こす必要があると考え、そのためにも転職も3回行って、様々な業界で実務経験を積んできました。
 こうした多様な業種の会社での経験と、いずれ独立起業を念頭に置いて準備した活動があって、57歳で「定年ひとり起業」を果たしたのです。(中略)
 「定年後の3大不安」と言われる「お金」「孤独」「健康」(3K不安)をいっぺんに解決する最良の方法が、「85歳まで現役で働く」というのが、私の持論です。

大杉潤著「定年ひとり起業」生き方編より

 そして、著者が考えた生涯を通じた働き方である”トリプルキャリア”の概念、そして取り組み方を語る。
(ファーストキャリア:40代~50代、セカンドキャリア:60歳前後5歳から75歳まで、サードキャリア:75歳以降)

 トリプルキャリアとは、働く期間を3つに分けて戦略的に準備する「生涯現役の働き方」ですが、会社員として働く期間をファーストキヤリアとします。
 今は副業もOKになっている会社も増えて来ていますので、できれば定年が視野に入って来た40代から50代には次のキャリアにつながる副業を開始することをお勧めします。
 セカンドキャリアは「定年ひとり起業」で、60歳定年時か前後5年ぐらいの間に「ひとり起業」をして、雇われない働き方に移行します。(中略)
 セカンドキャリアはフリーランスということで会社員のように毎月、安定した給与収入が得られるわけではありません。
 そこで、収入源を複数持っておくこと、すなわち複数の異なる種類の仕事を掛け持ちで行うことが収入を安定化させるためのこつになります。(中略)
 しかしながら、サードキャリアでは複数の仕事を掛け持ちで行っていくのは健康面・体力面で負荷が大きくなってくるため、これだけは人生の最後までミッション(社会的使命)として取り組み続けていきたいというライフワークに絞って活動する生き方に移行するのです。

大杉潤著「定年ひとり起業」生き方編より

 次に、筆者が提唱する「定年ひとり起業5原則」を紹介する

1.会社員(または公務員)として働いた経験を長く持った上で50代または60代というタイミングで独立起業する
2.個人事業主として開業するか、ファミリー・カンパニー(妻を社長とした合同会社など)を設立して独立し、原則として自分ひとりで事業を行う
3.自宅を事務所にするなど初期投資を最小限に抑え、多額の仕入れや在庫保有を行わず、借金もしない、家族以外の従業員を雇わないという低リスクの事業形態とする
4.厚生年金を確保した上で、年金のプラスアルファの収入(月5~10万円程度)を目指す規模の事業からスタートし、好きなことを仕事にしてストレスなく働く
5.会社員時代の経験である知識・スキル・人脈をフル活用し、足りないリソースは外部に業務委託する形で規模を拡大せずに「長く働くこと」を最優先に事業を運営する

大杉潤著「定年ひとり起業」生き方編より

 本書では、先に紹介した、「トリプルキャリア」、「ひとり起業」、筆者の考えるシニアの理想の生き方をベースにし、その実現のため方法を、以下の内容を通じ、実践的に紹介している。

〇働く期間を3つに分ける「トリプルキャリア」
・トリプリキャリア特にセカンドキャリアへのよりシームレスな移行の仕方
・セカンドキャリア、サードキャリアで、自分が生涯にわたって取り組む仕事の見つけ方、考え方
・シニアには特に大切になる”時間”の捉え方
・戦略的に準備すべき「4つのスキル」
〇幸せな定年後に必修の「ICT活用」
・「定年ひとり起業」で必修となるブログ、SNSによる情報発信について
・ネット証券での老後資金作り
・「複利」と「習慣」のパワー
〇定年後の「健康法」
・著者が読書から得た健康に関する知見の紹介
〇定年後ライフスタイルを考える「珠玉の15選」
・著者が1万2000冊以上のビジネス書の中から最も参考にして取り入れた書籍とそのポイント
〇夢に向かう構想が描けるデュアルライフの醍醐味
・筆者が実践している2拠点生活の内容、醍醐味

 以上が本書の概要になる。

私が本書を通じた学びは
・定年後も、生涯生きがいを持って生き続けるのに、「定年ひとり起業」、「トリプルキャリア」の考え方は、魅力的に感じた。
・「定年ひとり起業5原則」も、会社員を経て、ひとり起業を実践した筆者ならではの、リスクをミニマイズした、堅実な考え方で、自分の生き方を考える上で、参考になった。
である。

 本書は、シニアの新しい生き方である「定年ひとり起業」、「トリプルキャリア」の考え方、実践方法について、極めて具体的に学びを得ることが出来る。定年後の生き方を考えている方には、ぜひ一読をお勧める。また、フリーランスの方にも、参考になる部分が数多くあるので、購読してみては如何だろうか。

 筆者が”おわりに”書いた文章が印象に残ったので、最後に紹介する。

 格差社会の本命は「高齢者の格差」です。
IKIGAI(生きがい)と言えるライフワークを持って生涯現役・生涯貢献で、健康寿命の幸せな人生を送るのか、そうでない人生を送るのか、すべては70代からの人生ではっきりします。
 それを決めるのは、50代、60代のあなたの「人生の選択」です。
 ひとりでも多くの会社員の皆さまが、本書をきっかけに、定年ひとり起業というライフスタイルを選択して幸せな人生に向けて一歩を踏み出すことを心からお祈りしてペンを置きます。

大杉潤著「定年ひとり起業」生き方編より

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?