本書は、著者が、”絶対悲観主義を通して物事を考えることの有用性”を語った書籍である。学者が書いたとは思えない、ユーモアとセンスのある文章。その一方で、本質を突いた知見がちりばめられている。読後は、肩の力が抜けて、気軽に前に歩み出せる気持ちになった。
初めに楠木氏に触れる。楠木氏は、一橋大学ビジネススクールで教鞭をとる傍ら、執筆、著名企業のアドバイザリーボードメンバーを務める、日本を代表する経営学者である。2023年には、大学で要職に就くのを嫌い、定年前に退官。現在は特任教授としての立場で、国内外の研究者、企業幹部を指導している。
それでは本書の概要を紹介する。
はじめに、著者は、絶対悲観主義について、こう語る。
そして、絶対悲観主義の概念を説明する。
そして絶対悲観主義の6つの効用を語る。
さらに、筆者は、絶対悲観主義から見える、幸福の条件、健康と平和、お金と時間に関して、その洞察を語る。私は、幸福の条件、健康の中で取り上げた高齢化への考え方に、共感を感じたので紹介する。
まず幸福の条件について
そして高齢化問題について
以上が本書の概要である。
私が本書を読んで、考えたこと、学んだことは、
1)チャレンジの際には、「頑張る」「成功する」を、セットで考えるのが一般的だが、絶対悲観主義の「たぶん失敗するだろうけど、どりあえずやってみよう」というマインドセットは、一歩踏み出すときに、きわめて効果的。考え方の一部として、取り入れる価値があると感じた。
2)幸福の条件で、”幸せの内実は主観の極み”の示唆は極めて本質的。
”しょせん一回の人生、一人の自分しか生きられません。人生晴れの日ばかりではない。それでも、生活の充実は「今・ここ」にしかありません。”
の言葉を、胸に刻んで、生活していきたいと思った。
3)年齢を重ねた時に大切になるのは、教養と語り、教養を、以下、言語化してくれている部分は、大きな学びとなった。
”自分を客観視する。世の中での自分を俯瞰して見る。具体的なことごとの背後にあるものを抽象化して本質をつかむ。ようするに知性です。なによりも自分の経験と頭と言葉で獲得した価値基準を持ち、精神的な自立と自律を保てているか。”
である。
本書には、絶対悲観主義を切り口に、縦横無尽に、自己認識、組織論(チーム論)等、様々な事象を語っている。その考え方は、常識にとらわれず、本質を突いたものであり、物事の考え方の新しいヒントになると思った。著者の言葉を借りると”思考のストレッチ”である。本レビューを読んで、著者の考え方に興味を持った方には一読をお勧めする。