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M&A 売却額の大きさ=ポテンシャル

「M&A」に関して3つ目の投稿です。以前に記載したように、雑誌や動画サイトでよく見られる教科書的な、「それっぽい小難しい表現で、現実のジャッジに繋がらない耳障りの良い話」は書かないことにコミットして書いていきます。


本日のテーマは、
M&Aに於いて重要なポイントの一つである、
「事業のポテンシャル」をどう伝えるか?についてです。

先に記載しておくと、仲介である私の役割は、いたずらに価格を釣り上げるコトではありません。
「結果的」に売却額が双方合意の上、上がったということは、その一部に、私の介在価値はあったと言えます。
「企業の価値よりも、安さが決め手になる企業」よりも
「ポテンシャルが高い企業が、納得した価格で手に入る」
方がM&Aは成就すると思っています。

※勘違いしていただきたくない重要な点として
「売却側からの言い値で、〇〇億円を希望」と言われても、それをそのまま鵜呑みにはしません。希望は限りなく尊重しますが、仲介の責任として妥当性・買収側の許容範囲になるかどうかを見定めた上限で設定します。
よくM&Aの入門書には、
「結局、売手がいくらで売りたいかでしかない」と書いてあることが多くありますが、であれば、M&Aの仲介サイトに掲載して、機械的に相手とマッチングすればよいと思います。

これまでも、売却側の提示金額から下げていただくこともあれば、一方で、意外に多いのは、私が調査すすめ、社長からの話を聞き、そうすると、売却希望額(=事業のポテンシャル)が上がることもあります。これもまた、仲介会社の役割であり、価値の一部です。

ここからM&Aに於いて重要なポイントがいくつかあるうちの一つとして、
「事業のポテンシャル」をどう図るか?が重要です。


(1)本来のポテンシャルはどの程度見込めるのか?

「売上」ー「コスト」=「利益」

特に、ここ数年の業績に引っ張られてしまいますが、そもそも、本来そのマーケットで、その業態であれば、アッパーでどれくらいの業績が見込めるのか?また、売上だけではなく、コスト構造も重要で、理想の形を組めると、どれくらいの利益を創出できるのか?

この見定めは、非常に重要です。

私自身が、婚礼業界の事業再生に長く携わっていたおかげで、この思考や視点が身についており、マーケットからの逆算で、どのくらいポテンシャルがあるかを見出すとともに、コスト構造も、俯瞰でみて、どれくらい最適化が出来そうかの感覚が得られます。コスト構造に於いても、ポテンシャルの見定めが重要です。


(2)再生に、多額のハードの投資は必要か否か?

「今うまくいっていないのであれば、ハードへの多額の投資が必要か?」

買収側の企業の懸案として、買収後に多額の投資が必要なのではないか?
という懸案がついて回ることが多くあります。ここでも、戦略的なアドバイスが出来る人がいると、全く違う選択肢が得られることがあります。

とある案件でも、
「魅力は感じるけども、ハードへの投資が絶対に必要」と思っておられる買収側の社長との面談がありました。
私からの提案としては、少なくとも、おそらくこの5年は、既存の施設で戦える。今現在の低迷の要因は、施設ではなく「マーケティング戦略にある」というものでした。
ここで詳しくは書けませんが、5年で事業を復活させ、自ら投資額を生み出し、且つ少額のハードへの投資で次のエンジンを積める手法もお話しすると、そこからは、霧が晴れたように、ディールが進み、買収価格に対しても、相当な値ごろ感を感じていただき、譲渡が行われました。
あのまま、ハードへの多額の投資ありきで進んでいれば、おそらく買収価格も下がり続け、成約にならなかったと思います。

一般的なM&A企業は、買手企業が「改装しなくてはならない」と言えば、
仲介企業「はい、そうですか。いくらを想定していますか?」という答えしかできないことが多くあるものです。未来のオプションを照らすのも、M&A仲介の重要なポイントだと、私は考えています。

(3)人・組織の正しいポテンシャル

「人・組織」はどう評価すればいいのか?

他社の人・組織の評価には頭を悩ませるものです。さらにM&Aでは、事前に個人情報は得ることが出来ても、直接話を出来るのは、最終契約書に署名捺印が完了してからになることが多いです。

それもあってなのか、組織図に、職歴、役割、キーパーソンは誰か?
という情報だけ記載してあり、それっぽい会話をしただけで終了することがほぼであるように感じます。「この人には、残っていただかないと困る」という様な、情報などが挙げられることが多くあります。

「それだけで大丈夫ですか?」というのが私見。

それっぽい形式的なやり取りと、機械的に困る・困らないというやりとりだけでは、組織のポテンシャルは図れません。

事業再生を直接担ってきたので、実感をもって人・組織は、マネジメントによって、進化・変容・成長するコトを知っています。

規模が大きくなると、社長が全ての人・組織の特徴・ポテンシャル迄ご存じであることは、少ないこともあり、また、M&Aは万一にも情報漏洩があってもなりません。

そこで私は3つの事を行うことを通じで、人・組織のポテンシャルを把握します。

①基本合意書締結前、会社で社長が閲覧できる資料・情報を全て聞き出し、仮説を組み立てる。まったく目的の異なる、日ごろの研修資料の提出物や、営業数値、360度評価などを見て、視座の高さ、定量的・定性的な貢献度までを知るなどのことまで行います。

②基本合意書には、売却価格のレンジを設けておき、基本合意書締結後には、売却側企業のCHROレベルの方には、アクセスすることを事前にお願いしておきます。そのうえで、最終合意の段階では、人・組織の分も加算して、提示していただきます。
※もちろん、実施の有無は、案件の状況・特性に拠ります。

③自身で実際に現地に見学に行く。
 もちろん、例えば結婚式場の見学者のフリをしていくなどは絶対にしません。例えば、併設されたレストランを利用するとか、そうした類です。人・組織は、実際にみるとその健全性や、ポテンシャルがつかめるモノです。

企業は、人・組織が織り成してきた歴史です。
M&Aがその歴史を継承していく為の手段なのであれば、その人・組織が最も高い評価を受けられるようにするのもまた、企業だけではなく、新たなスタートに立つ人・組織にとっても重要なコトだと私は思います。



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