10人で金貨を分ける倫理パズル
おはようございます。🐤
面白いパズルがあったのでやってみました。ハマりました。
答えが意外な結果になる倫理パズル
【問題】
10人からなる海賊団が60枚の金貨をどのように分配するかを決める会議を開きます。会議は次のように進行します。
最年長者がどのように分配するかを提案する
その提案に対して提案者も含む全員で多数決をとる。賛成が半数以上であれば可決、半数未満ならば否決
提案が可決された場合は、その提案通りに金貨を配分して終了
提案が否決された場合は、その提案をした海賊を海に投げ込み、残った海賊で会議を「1」からやり直す
あなたは10人の中で最年長者なので最初の提案をしなければなりません。海に投げ込まれず、なおかつ自分のもらう金貨の枚数を最大にしようと思った時、あなたはどのような提案をしたらいいでしょうか。
【補足】
金貨を割ることはできませんので分配は必ず「金貨何枚」という単位で行います。金貨を1枚ももらえない人がいても構いません。
年齢は全員異なり、また全員が全員の年齢を把握しています。
海賊は全員が頭が良いうえに極めて利己的で、常に自分の利益を最大にするために行動をします。また「全員がそのような行動をする」ことを全員が知っています。
海賊は仲が悪いので自分が利益を損なわずに誰かを海に投げ入れられる機会があれば迷わずそちらを選ぶ
考え方
私が得意なのは「問題を単純化して考える」ことです。いきなり10人で考えるとわからなくなるので、まず2人から考えてみることにします。
その前に登場人物を具体的にイメージしておきましょう、補足説明の条件にあうように、次のような名前=年齢の人たちとします。
21才、22才、23才、24才、25才、26才、27才、28才、29才、30才
最初はどうしましょう、21才と22才? 30才と29才?
これによってわかりやすさが違うかもしれないので、まず21才くんと22才くんの2人の場合から考えていくことにします。
2人の場合
登場人物は2人、21才くんと22才くんです。
これは簡単です。
年長の立場になってみてください。自分が提案した分け方が100%採用されて、それで分配は終了します。
だって、2人の時の「半数以上」は1人が賛成すれば足りますからね。
補足の条件より、22才くんは、21才くんの利益とか、その後自分がどう思われるかなど全くおかまいなしに、自分が60枚、21才くんは0枚という、自分の利益を最大化する配分方法を提案し、それが採用され、そのとおりに配分して終了します。
2人の場合の配分は(年長順) 60:0
3人の場合その1「60:0:0」
次に3人の場合です。登場人物は21才くん、22才くん、23才くんです。
今回も最年長くんが60枚で、残りの2人が0枚だったらどうなるでしょうか?
60:0:0
最年長くんは当然ですが賛成です、残りの2人の気持ちを考えてみます。
【2番目の気持ち】
ここで2番目くんが「自分の利益を最大にする」には賛成/反対のどちらでしょう。
もちろん必ず反対です。
なぜなら、最年長くんが賛成するのは確実ですから、仮に2番目の自分(22才)が賛成するとそこで配分が決定し、0枚が確定します。
しかし、2番目の自分が反対して、年少くんも反対すると、最年長くんを海に落として、残った2人で会議を再開することになります。そうなるとさっきの「2人の場合」の年長の立場になり、60枚もらえることが確定します。
ということで、賛成=0枚が確定、よりも反対して60枚の可能性に賭けることが合理的です。よって「60:0:0」のとき2番目くんは必ず反対です。
【最年少の気持ち】
では、最年少くんが「自分の利益を最大にする」には賛成/反対のどちらでしょうか。
「60:0:0」の条件が出された時点で、最年少くんは0枚が確定してしまいます。なぜなら、この提案に賛成すると0枚が確定しますし、反対すると「2人の場合」の年少の立場になり、0枚であることが確定するからです。
ここで補足の最後の条件が生きてきます。「海賊は仲が悪いので自分が利益を損なわずに誰かを海に投げ入れられる機会があれば迷わずそちらを選ぶ」
なので、「60:0:0」のとき最年少くんは必ず反対することになります。
ということは、「60:0:0」を提案すると確実に最年長者は海に投げられるので、この配分は提案できません。
3人の場合その2「59:1:0」
次に考えるのは「自分が59枚、もう一人に1枚」という分け方です。1枚分ける人を賛成票にすると、2対1で自分の提案が通り、59枚をゲットできます。
というわけで、分け方は2通り「59:1:0」か「59:0:1」かです。まず前者から考えます。
59:1:0
ここで2番目くんの立場で考えてみます。
さっき考えたとおり、3人で最年少者が0枚の配分である場合、最年少者は必ず反対します。
そして年長者は必ず賛成することがわかっているので、2番目くんの意見で結果が決まります。
2番目くんが賛成する=2番目くんの1枚が確定
2番目くんが反対する=1番目を海に落とし、再会議⇒60枚が確定
というわけで、「59:1:0」の時、2番目くんは必ず反対します。そして最年長者は海に落とされます。だから最年長者はこれも提案できません。
3人の場合その3「59:0:1」
さて、ここがポイントです。最年少くんの立場で考えます。
この場合、最年長はもちろん賛成で、2番目くんは「3人の場合その1」のとおり、必ず反対します。
ということは、最年少くんの意見で結果が決まります。
最年少くんが賛成する=最年少くんの1枚が確定
最年少くんが反対する=1番目を海に落とし、再会議⇒0枚が確定
どっちもどっちですが、あくまで自分の利益を最優先ということで、最年少くんは1枚の方を選択します。つまり「59:0:1」の時は、最年長と最年少くんがともに賛成票を入れ、その配分に決定して終了します。
だから、3人の場合は、最年長者は「59:0:1」と提案し、59枚をゲットすることになります。
3人の場合の配分は(年長順) 59:0:1
これが結論です。ふぅ…長かったですね。
4人の場合
次に4人の場合です。4人の場合、最年長者自身は賛成するとして、その他に1人賛成票を獲得すれば、2:2で賛成が過半数となり、配分が決定します。最年長者は1人の賛成票を獲得することを考えればOKです。
その賛成票を誰にすれば良いのかが作戦のポイントです。
2番目か、3番目か、それとも最年少を味方にするか? 考えてみましょう。
4人の場合その1「59:1:0:0」
3番目と最年少くんは反対しそうですね…一応考えてみます。
【最年少の気持ち】
最年少くんは、ここで賛成すると0枚が確定
反対した場合は2通り
他の1人が賛成すれば0枚が確定して終了
他の2人が反対すれば再会議になり、次の会議で「3人の場合」の最年少になれるので1枚が確定です。
なので、最年少くんの選択は1枚の可能性が残る反対です。
【3番目の気持ち】
3番目くんは、ここで賛成すると0枚が確定
反対した場合は2通り
2番目くんが賛成すれば0枚確定で終了
2番目くんが反対すれば再会議⇒「3人の場合」の2番目なので0枚が確定
なんとかわいそうな3番目くん、どのみち0枚が確定です。
ということは補足の最後の条件「海賊は仲が悪いので自分が利益を損なわずに誰かを海に投げ入れられる機会があれば迷わずそちらを選ぶ」より、最年長を海に落としたいので反対を選びます
【2番目の気持ち】
すでに3番目と最年少くんが反対だとわかっているので、2番目くんの意見で結果が決まります。
2番目くんが賛成=自分の1枚が確定
2番目くんが反対=最年長くんを海に投げ、「3人の場合」の最年長となり、59枚が確定
これは当然反対で59枚ゲットを選びますよね。
ということは最年長者は「59:1:0:0」は提案できません。
4人の場合その2「59:0:1:0」
次に3番目を味方につけるパターンです。
これまでの例で、最年少は0枚なので反対です。
【2番目の気持ち】
0枚なのでいかにも反対しそうな2番目くんのことを考えてみます。
2番目くんが賛成する=0枚が確定して終了
2番目くんが反対するのは2通り
3番目が賛成して0枚確定終了
3番目が反対して、最年長を海に投げて再会議⇒59枚確定
やっぱり反対ですね。59枚の可能性。
【3番目の気持ち】
2番目と最年少が反対とわかっているので、3番目くんの意見で結果が決まります。
3番目くんが賛成=1枚が確定して終了
3番目くんが反対=最年長を海に投げて再会議⇒「3人の場合」の2番目になるので0枚が確定
ということで、わずか1枚をゲットするのが最適な選択肢です。3番目くんは賛成で、最年長者は59枚ゲット。4人の場合の最年長者の選択肢はこれ「59:0:1:0」になります。
4人の場合その3「59:0:0:1」
では4人の場合の最後です、最年少が1枚だとどうなるのか? 最年長くんは海に投げられるのでしょうか?
【最年少の気持ち】
ここで最年少が賛成すると1枚が確定します
反対すると2通り
他の1人が賛成すると1枚確定で終了
他の2人が反対すると、最年長を海に投げて再会議⇒「3人の場合」の最年少なので1枚ゲット確定
つまり、どのみち1枚が確定します。となると、自分の利益を損なわないので「補足の最後の条件(略)」により、最年長を海に投げたい気持ちが働き「反対」にまわります。
【3番目の気持ち】
賛成すると0枚確定
反対すると2通りだけど、再会議⇒1枚確定の道があるので、やっぱり反対
【2番目の気持ち】
賛成すると0枚確定
反対すると2通りだけど、再会議⇒59枚確定の道があるので、やっぱり反対
というわけで最年長者は「59:0:0:1」は提案しません。
なんとなく見えてきましたね。
4人の場合の配分は(年長順) 59:0:1:0
5人の場合
だいぶ長く、めんどくさくなってきたので、スピードアップします。
5人の場合は、3人の賛成が必要です。最年長の賛成と、その他2名の賛成が必要なので、次の6通りが考えられます。
58:1:1:0:0
58:1:0:1:0
58:1:0:0:1
58:0:1:1:0
58:0:1:0:1
58:0:0:1:1
6つも考えるのはいかにも無駄が多いので、ちょっと絞ってみましょう。
これまでの経験から、2番目に1枚渡しても賛成にまわることはあり得ないと考えていいかと思います。
なぜなら、2番目は「反対多数で不成立」により「次の最年長」になれます。そして最年長になれると、自分の提案次第で大きな利益をもらえることがわかっているからです。だから2番目は1枚あげても賛成にはまわりません。
ということは、次の3通りに絞られます。
58:0:1:1:0
58:0:1:0:1
58:0:0:1:1
5人の場合その1「58:0:1:1:0」
経験から、0枚の2番目と最年少は反対にまわりそうです。3番目と4番目の気持ちを考えたら足りそうです。
【3番目の気持ち】
賛成は2通り
4番目が賛成=1枚確定
4番目が反対=「4人の場合」の2番目になり、0枚確定
反対=「4人の場合」の2番目になり0枚確定
なので、賛成です。
【4番目の気持ち】
賛成=1枚確定
反対=「4人の場合」の3番目になり、1枚確定
どのみち1枚は確定となり、自分の利益を損なわないので「補足の最後の条件(略)」により、最年長を海に投げたい気持ちが働き「反対」にまわります。
というわけで、この案は採用できません。
5人の場合その2「58:0:1:0:1」
これも、0枚の2番目と4番目は反対なので、3番目と最年少の気持ちだけを考えます。
【3番目の気持ち】
賛成は2通り
5番目が賛成=1枚確定
5番目が反対=「4人の場合」の2番目になり、0枚確定
反対=「4人の場合」の2番目になり0枚確定
なので、賛成です。
【最年少の気持ち】
賛成=1枚確定
反対=「4人の場合」の4番目になるので0枚確定
なので、賛成です。
最年長が海に投げられない、5人の場合の結論はこれっぽいです。
5人の場合その3「58:0:0:1:1」
最後だからめんどくさくても考えてみましょう、4番目と最年少の気持ちです。
【4番目の気持ち】
賛成は2通り
最年少が賛成=1枚確定
最年少が反対=「4人の場合」の3番目となり1枚確定
反対=「4人の場合」の3番目となり1枚確定
なので「(略)」により反対です。
というわけで、最年少の気持ちを考えるまでもなく、この提案はできません。海に投げられてしまいます。
というわけで結論、5人の場合の配分は
58:0:1:0:1
6人の場合
だいぶ長く、めんどくさくなってきたので、スピードアップします。(という言葉さえもコピペで済ませます)
6人の場合も、3人の賛成が必要です。なので5人の場合と似ています。最年長の賛成と、その他2名の賛成が必要なので、次の10通りが考えられます。
58:1:1:0:0:0
58:1:0:1:0:0
58:1:0:0:1:0
58:1:0:0:0:1
58:0:1:1:0:0
58:0:1:0:1:0
58:0:1:0:0:1
58:0:0:1:1:0
58:0:0:1:0:1
58:0:0:0:1:1
この中で、下剋上が目の前にぶら下がっている2番目に1票もたせるのは無駄なので、残りの6通りを考えます。
6人の場合その1「58:0:1:1:0:0」
3番目の気持ち
賛成は2通り
4番目が賛成=1枚確定
4番目が反対=再会議で「5人の場合」の2番目=0枚確定
反対=「5人の場合」の2番目=0枚確定
合理的な判断は賛成
4番目の気持ち
賛成=1枚確定
反対=再会議で「5人の場合」の3番目=1枚確定
「(略)」により海に投げ込みたくて反対⇒これは不採用
6人の場合その2「58:0:1:0:1:0」
3番目の合理的な判断は賛成(6人の場合その1より)
5番目の気持ち
賛成=1枚確定
反対=再会議で「5人の場合」の4番目=0枚確定
合理的な判断は賛成⇒この提案は採用できる(6人の場合の結論ぽい)
6人の場合その3「58:0:1:0:0:1」
3番目の合理的な判断は賛成(6人の場合その1より)
6番目の気持ち
賛成=1枚確定
反対=再会議で「5人の場合」の5番目=1枚確定
「(略)」により海に投げ込みたくて反対⇒不採用
6人の場合その4「58:0:0:1:x:x」
4番目の気持ち
賛成は2通り
他1票が賛成=1枚確定
他1票が反対=再会議で「5人の場合」の3番目=1枚確定
反対=再会議で「5人の場合」の3番目=1枚確定
「(略)」による海に投げ込みたくて反対⇒不採用
6人の場合その5「58:0:0:0:1:1」
5番目の気持ち
賛成は2通り
最年少が賛成=1枚確定
最年少が反対=再会議で「5人の場合」の4番目=0枚確定
反対=再会議で「5人の場合」の4番目=0枚確定
合理的な判断は賛成
最年少の気持ち
賛成=1枚確定
反対=再会議で「5人の場合」の5番目=1枚確定
「(略)」により海に投げ込みたくて反対⇒不採用
というわけで結論はその2の
58:0:1:0:1:0
7人の場合
だいぶ長く、めんどくさくなってきたので、スピードアップします。(という言葉さえもコピペで済ませます)
7人の場合は4人の賛成が必要です。最年長の賛成と、その他3名の賛成が必要なので、次の20通りが考えられます。(6C3=6*5*4/(3*2*1)=20)
57:1:1:1:0:0:0
57:1:1:0:1:0:0
57:1:1:0:0:1:0
57:1:1:0:0:0:1
57:1:0:1:1:0:0
57:1:0:1:0:1:0
57:1:0:1:0:0:1
57:1:0:0:1:1:0
57:1:0:0:1:0:1
57:1:0:0:0:1:1
57:0:1:1:1:0:0
57:0:1:1:0:1:0
57:0:1:1:0:0:1
57:0:1:0:1:1:0
57:0:1:0:1:0:1
57:0:1:0:0:1:1
57:0:0:1:1:1:0
57:0:0:1:1:0:1
57:0:0:1:0:1:1
57:0:0:0:1:1:1
例のごとく、下剋上狙ってる2番目に1枚あげるのは無駄です。
なので10通り考えるのですが、なんとなく答えは見えてきたので、いきなり答えを検証します。
7人の場合その1「57:0:1:0:1:0:1」
3番目の気持ち
賛成は2通り
他1票が反対=再会議で自分は2番目=0枚確定
他2票が賛成=1枚確定
反対=再会議で自分は2番目=0枚確定
賛成(基本的に3番目は賛成する)
5番目の気持ち
賛成は2通り
最年少が反対=再会議で自分は4番目=0枚確定
最年少が賛成=1枚確定
反対=再会議で自分は4番目=0枚確定
賛成(基本的に5番目、というか奇数番目は賛成する)
最年少の気持ち
賛成=1枚確定
反対=再会議で自分は6番目=0枚確定
賛成
一般化
0枚の人は反対する(考えなくてもなんとなくわかるよね)
奇数番目の人に1枚あげると賛成してくれる
偶数番目に1枚あげても賛成してくれない(海に投げたくなる)
ということで、奇数番目の人に1枚あげてたら丸く収まる、ということでした。だから10人の場合も「56:0:1:0:1:0:1:0:1:0」でファイナルアンサーです。
長々とお疲れさまでした。あー疲れた。
池田洋平さんとは
私はこの方の大ファンで、数学の本を書いたり、エンターテイメントのショーをやったり、面白くておしゃれなおもちゃを作ったりされています。
END
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