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空を飛ぶ夢

毎日、空を飛ぶ夢ばかり見ていた。

地面を蹴って、からだが浮かぶ。思ったとおりのところへ飛んでいける。風景が、あるくよりずっと早くながれていくのを横目でみながら。たまにほうきにのったり、のらなかったり。海に浮かぶ小さな島まで行って、きれいな色のジュースをのんだり、木に実っているお菓子を食べたりもした。

学校は毎日行った。仲間はずれにされても、無視されても、悪口を言われても、ものを投げつけられても、毎日行った。大事にしているランドセルを蹴られると、ばぁちゃんの顔が浮かんだし、お母さんが買ってくれたハンカチを見ると涙が出た。悔しくても、やりかえさなかった。毎日毎日学校に行った。

眠れば空が飛べる。


私のなかにいるあの子に、頑張ったねって、言えてなかった。

もう空を飛ぶ夢はみない。歩いて、自転車で、車で、電車で、飛行機で、自分で選んでどこでも行ける。

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