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スイミングと初恋〜三角関係編〜

未就学児を襲うさまざまなウィルスの流行は、スイミングとて例外ではない。ヨシタロウも数週間休むこととなり、大好きな今田美桜ちゃん似のミオちゃんも同様で、2人はめちゃくちゃにすれ違った。

検定の日、ヨシタロウはギリギリ治ったので久々に行ったところなぜか習ってないのにテストに合格、ミオちゃんは受験すらしていない。結果、ヨシタロウはとうとう最上級クラスに進級してしまった。「スパルタクラス」という恐ろしい名前なのだが、いまだに私が居る場合抱っこしないと移動しない彼はスパルタに耐えうるのだろうか。そしてクラスが決定的に別れたことにまだ気づいてない。

そして、唐突に打ち明けるが、ヨシタロウのセクシャリティ問題である。

ドレスが着たいといえばドレスを買い与えている。肌着を買う際に、「これがいい」というので、最近メインではキャミソールみたいなやつを着ている。仮面ライダーギーツが好きだが、プリキュアも好きだ。

まあ、私とて初めて妻の父に会った時はめちゃくちゃに女装していた者だ。彼のセクシャリティがどこに着地するか楽しみである。

で、話をスイミングに戻す。

スイミングには、美少女ミオちゃんとは別に、美少年が居る。

若い頃の玉森裕太さんみたいな、色白で線が細く、爽やかな笑顔を持った真ん中分けだ。ヨシタロウと同い年なはずだが、妙にスラっとしている。仮にユウちゃんとしよう。

ミオちゃん不在の間、ユウちゃんとヨシタロウは急接近している。というか、知らなかったが保育園が一緒でもともと仲良いらしく、ユウちゃんはヨシタロウを追うようにスイミングに入ったのだ。

ユウちゃんとヨシタロウのスキンシップがすごい。彼ら2人は別にしゃべったりしない。ただ見つめあって、3分くらい無言で、ほっぺたをピタとくっつけて抱き合うのだ。

3分だ。

10秒くらいならアハハ、ウフフ、かわいいね。で済む。

3分である。

M-1グランプリが予選で2分、決勝で4分というと3分という異様さがわかるだろうか。

30秒くらいまでは私も、ユウくんの両親も笑って見ている。ちなみにユウくんの両親は絵に描いたような美男美女である。

しかし、3分である。

「ねぇ。もう良くない?」

「長くない?」

「どこ見てんの」

「なんか言えよ、黙っててこええよ」

両サイドの親の言うことなど2人は聞いていない。

「ねぇ、もうほら、行くから」

「イオンに行くから」

「勘弁してくれ」

いろいろ言うものの、最終的になかば腕力で引き離すことになる。そして、2人の愛は再び盛り上がるのだ。たぶん。なんなんだ。

そんなヨシタロウが最近ハマっているのは、首を前後左右にリズミカルに傾けながら、つま先立ちで肩をいからせて「おしっこぅ!おしっこぅ!」と言いながら近づいてくることである。芸風で言うと、ハリウッドザコシショウさんに近い。顔は、親の欲目フィルタを入れたとして、せいぜいバイク川崎バイクさんだ。愛嬌と清潔感はあるが、アイドルではないと思う。

そして今回、度重なる各自の休みを乗り越えて、3人が揃った。

感動の再会したヨシタロウ、ミオちゃん。しかし、そこに現れるユウちゃん。

3人でよく分からないことを叫びながら、プールサイドでジャンプしている。

ミオちゃん、ユウちゃんが並ぶと絵力が強い。うちのザコシもおしっこぅおしっこぅ言っていて別の意味で強いが、なんだろう、このトレンディドラマどこがくっつくか、めちゃくちゃ結論が見えていて父は悲しい。ザコシ、玉森裕太、今田美桜だぞ。ザコシ、絶対余るだろ。

「ユウちゃん」

「ん」

そしてじゃあそろそろ、という感じで2人の3分無言ハグが始まる。最初は笑っていたミオちゃんも1分を超えたくらいで不安な表情に、そして徐々に嫉妬に染まっていく。

「なあ、もういいでしょう」

なんだろう、ミオちゃん、お願いだからこいつはやめておいた方がいい。そんなことを思いながら、2人のほっぺたを引き剥がす。最近、足腰が強くなったのかなかなか動かない。さすがスパルタクラスだな

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