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ポケモントレーナー・トレーナー

際限なく甘やかしてきたヨシタロウは5歳になった。

涙ながらに突然訴えた「おとなになりたくない、(仮面ライダー)ギーツになれなくてもいい」「ながれぼしにおねがいする」「パパとママにずっとあまえていたい」などがあったが、痛く感銘した妻により、星の見える展望台つきのホテルに年末宿泊した。

私はデッド視力のためそもそもまともに星が見えないし、高度がある山中の夜はそれはそれは寒く、2歳児がコケまくるため早々に私とともに居室に引っ込んだ。

遅れること10分くらいだろうか、夜空を見続けた母子は戻ってきた。

報告を要約すると

「流れ星を計画的に見るのは、流星群の日でも無いしほぼ不可能だ」

「望遠鏡から見える木星へお願いで、ずっと甘えるという点だけ叶うということでヨシとした」

まあそれは妻の話であり、ヨシタロウの関心はもう星にも無い。

ただ、「りゅうせいぐん」には劇的な反応を見せた。

人気ポケモン「カイリュー」が使う代表的なわざが「りゅうせいぐん」である。

トレンドリーダーである小学校低学年の従兄弟のビンビンに受け、ヨシタロウはいま空前のポケモンブームだ。

クリスマスに「スカーレット」を買わされた。が、彼は、ひらがなそこそこ読めはするが、早くないので、音読しながらやっている。

「緑」しかやったことないジジイの私は急速にポケモン知識を吸収し、5歳児となったヨシタロウを仕込みに仕込んだ。

そして初めての対人戦。相手は小学生2年生の従兄弟である。

「おそらく相手は積み技やアイテムを使いこなせない、最初に選んだパートナーポケモンであるウェーニバルへの対策を軸に、小学生男子が選びがちなドラゴンか伝説多めだろう。であればこちらは、ウェーニバル対策にはミミッキュ、ほかフェアリー、こおり多めで行こう。あとは弱点ついてきそうなのに備えて『じゃくてんほけん』で攻撃をあげてワンパン、念のため最後に『つるぎのまい』を覚えて『きあいのタスキ』をつけたルカリオを入れとくので最悪これで勝てる」

私の戦術を5歳児がどこまで咀嚼しているか分からないが、ストーリー攻略においてヨシタロウが敗北するたびに交代して圧勝する私への信頼は厚く、普段「靴下くらい自分で履いてよ」などの指示は完全に従わないくせに、ポケモンのことは完全に指示に従う。

かくして、5歳児はSwitch一つを持って単身従兄弟の家に行き、小学生をボコボコに完封して帰ってきた。妻側の姉妹仲を引き裂く暗躍ぶり、我ながらあっぱれだ。

「じゃくてんほけんがおもったとおりになってさいこうだった」

5歳児のポケモントレーナーとしての成長も著しい。

私はこれから、ポケモントレーナー・トレーナーを名乗ろう。これでおまんまを食いたい。


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