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小説家のスランプの抜け方 地獄から脱出する3つの手法

 今から3年前の2015年のこと。私はかつてないスランプに陥ってしまった。文字が浮かばない。悩みに悩んだ末に書いても、到底満足ができずに書いた文章をすべて消してしまう。残るのは真っ白な原稿だけ。

 締め切りはどんどんと近づき、心は焦る一方。早く何とかしなくては……という心の声を聞きながらも、どんな文章も書ける気がしなかった……。

 編集さんに謝罪と締切延長のメールを何度送っただろうか。打ち切りも覚悟していた。気付けばスランプを抜け出すのに、二年と半年が経っていた。

 あまりにも遅い復活だったと思う。スランプを抜け出そうと試行錯誤し、ようやく書けるようになった。スランプは「狙って」脱出できるもの、という自信もついた。長らく回復を待って、出版させてくれた編集の高原氏には心から感謝を述べたい。ありがとうございます。

 小説を書いていて、あるいは文筆業を営んでいて、深刻なスランプに陥る方は少なくない。ところが、脱出方法をしっかりと考え、方法にまで磨き上げ、書かれた記事を見たことはなかった。あれば私自身が実践していた。

 そこで、実体験からスランプの抜け方を紹介したい。長らく書けずに困っている、本当に悩んでいる方には、光明になるかと思う。

これから先は、

1.スランプとはどういう状態か?
2.一般的なアドバイスが役に立たない理由とは?
3.スランプを脱出し、楽しんで創作に励むための3つの手法

について書く。

そもそも、スランプとはどういう状態なのだろう?

ある精神科医は、スランプを自分で壁を作ってしまっている状態だと言っている。

自分で高い目標を掲げているから、そこに現状が到達できていない状況だと。

私は、スランプを理解するのに、学校のテストが分かりやすいと思う。

普段50点を取ってる子が80点を取れば、「今回は良くできた、嬉しい」という感情を抱くだろう。

だが、普段100点を取り続け、それが当たり前になっている子にしたら「なぜ80点しか取れないんだ!?」となってしまう。これがスランプだ。

学校のテストは採点基準がある。どこを間違ったのか調べ、勉強し直せば、再び高得点を取ることは比較的難しくない。

小説などの文筆業のスランプの解消が難しいのは、この採点が主観的でしかなく、どこを修正すればいいか分かりにくいところだ。難癖のつけ放題だ。

また、自分で自由に点数をつけられるところも大問題だと思う。

周りからすれば合格ラインに達しているにも関わらず、不合格の烙印を押してしまう。他の人が採点すれば90点の文章でも、自分では厳しく見積もりすぎて、50点にも達しない。

そして、ますます自信を失ってしまう。
自信を失って基準点が下がればいいが、基準点はそのままという状態だ。

だから、小説家や文筆業がスランプを抜け出すには、自分が確実に良い文章を書けているという確信を抱けるようにすること

あるいは、厳しすぎる目線を緩めてあげることが必要になる。

次に、スランプ脱出の一般的なアドバイスについて取り扱う。

一般的なアドバイスの危険性について

1.時間と距離を置く方法の危なさ

私がスランプに陥った時には、周りから「無理に書こうとするのは良くない。一度距離を取るのが良い」というアドバイスを多数いただいた。

この方法にはいくつか、危険がある。

ひとつは締め切りの問題

プロとして生活していると、締め切りは信用問題に関わってしまう。よっぽど売れっ子でないかぎり、次の仕事が回ってきづらく(こなく)なる。ゆっくりできるぐらい締め切りに余裕があるなら別だけど、そんなことは滅多にない。

その上本人の意識が、時間がかかっているから、(より良いものを作らなくては……!)と焦り、ますます目線が厳しくなる危険性もある。私はこの問題に直面してしまった。

次に、本当にスキルが下がってしまう危険性もある。

書くというのはスキルの問題であり、スキルは使わなければ下がってしまう。

本当は十分な実力があったのに、書かないことでますますスキルが低下し、余計に納得がいかなくなるという悪循環に陥る。

他の良い作品を読む

これもよく言われたアドバイスだった。上手な作品に触れ続けることで、感性の歪みを正す、というような主張だったように思う。また、純粋に気晴らしになったらと言う考えもあったのではないかな。

しかし、スランプに陥っている時は平静な判断ができない。

焦っていて視野狭窄状態に陥っている。マイナス思考にどっぷりと浸かり、上手な作品と比べてしまう。相手は傑作ばかり。やっぱり自分の作品なんて……。いかに実力があっても、スランプ状態では負けているように感じてしまうだろう。

また、「どのように感じたか」は主観的な判断基準のため、実際の比較には役立たないという問題もある。

メンタルをポジティブにする

これはスランプのときに、検索して出てきた考え方。

スランプに感謝する。
スランプを受け入れる。
スランプを成長のためと前向きに捉える。

こんなことが簡単にできたら誰も苦労しない。誰が「ああ、書けない満足できない、ありがとう! これで私は成長できる!」と思えるのだろうか。これではただのマゾだ。

本当にスランプに陥っている時の感情はこうだ。もう書くこと自体が怖い。でも、一番恐れていたのは、もう二度と小説が書けないのではないだろうか。本当に大切な趣味を奪われる恐怖。これに勝る恐怖はなかった。

いい加減なことは書かないでほしいと腹立たしく思ったものだ。これはある程度、スランプを脱出できている人の思考ではないだろうか。

ここから先は、具体的で、私自身が効果のあった改善法について3つ紹介する。すべて、私自身が試行錯誤し、その上で効果があったと言えるものばかりだ。

ただ、有料なので、本当に困っている人だけ買って頂けたら良いと思う。

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