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小説家になろうの異世界転生の転換

異世界転生は進化している

異世界転生が「小説家になろう」で流行りだしたのが、いつごろからなのかは私には分からない。

しかし、私が小説家になろうに登録した2014年頃には、すでに『異世界迷宮で奴隷ハーレムを』が累計1位だったため、それ以前から流行っていたのは間違いないと思う。

今現在でも、累計ランキングの作品を見てみると、その多くに異世界転生が含まれているのは、ご存知のとおりだ。

ところで、この異世界転生のテンプレートが、近頃微妙に変化していることに気付いているだろうか?

かつてのテンプレートは、

1.まずトラック(ないし何らかの事故)で主人公が死ぬ。

2.神様に出会い、お詫びという形でチートをもらい、赤ちゃんからスタートする。

3.最初はおっぱいを飲み、小便や大便を漏らして尊厳を破壊され、新しい世界の言葉を覚えていく。

4.赤ん坊の頃から、すでに異常な成長力で存在感を見せつける

およそこのような流れが定型化されていた。

なろうをあまり読まない多くの人が揶揄(やゆ)するこの形式だが、実は序盤の書き方としては満点に近かった。

いきなり主人公が死ぬというショッキングな出来事で興味を誘い、なんやかんやの理由をつけてチートをもらい、異世界を現代地球人の観点から把握させ、活躍させる。

実に無駄のない流れだったと分析できる。

ところが、あまりにもこの公式で容易にポイントが稼げたために、陳腐化してしまった。

そして、またこのパターンか、と読者に飽きができ始めた。

そこで、作者たちも黙ってはいなかった。

やり方を微妙に進化させていったのである。


異世界転生における近頃のパターン

近頃では、異世界転生では死亡するシーンが描かれないことが多い。

あるいは神様(笑)とのやり取りもなく、異世界でいきなりチートを貰ってスタートする展開すらある。

これは公式が行き渡り、小説家になろうという世界ですでに周知されているという前提ができたからだろう。

幼児期の描写も大幅にカットされるケースが多く、とある作者としても幼児期のイベントを無理やり入れるべきかどうか、迷っているという話を聞いたこともある。

個人的な意見では、入れなくて良いと思う。

小説家になろうという世界の中で書く分には、省いて良い。

ただし、これを書籍化する際にまで省いて良いかは、判断が難しいところだ。

なろうを知らない読者がいないとも限らないからだ。大胆な省略は、知らない読者を混乱させてしまうかもしれない。


異世界転生の今後の予想

現在、ありとあらゆるチートを主人公に投与されている。

異世界転生がより陳腐化してしまうのは避けられない。

もちろん、王道の中で少し軸をずらすというやり方は常に一定の層に受けるだろうけれど、全体の流れとしては下降線を描くのではないだろうか。

この時必要になるのは、一定の強みを持った、軸の持った作品だと思う。

異世界転生するにしても、ある技能を現代日本ですでに培っていた人間であるならば、より独創性が出せて、陳腐化を防げるのではないだろうか。

それは鍛冶師かもしれないし、薬剤師かもしれないし、経営コンサルタントでも良いかもしれない。実際にそういう作品も掲載されている。

というか、私は今後は異世界転生よりも異世界転移が主流になる気がしている。

先を見通す目はないが、そうなるとオモシロイと思っている。

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