「少年ハリウッド」はアイドルの教則本

君たちは「少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 49-」、「少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 50-」を見たか!?私は見た。

もう大変な作品だ。あらゆるアイドルアニメの教則本と言ってもいいです。

少ハリについてはツイッターで何人かのフォロワーさんがよく口にされてたので気にはなっていたんですが、いかんせんキャラデザ(アイドルものの割にスゲェ線が多い。動かす気があるのだろうか?動くのである。)の壁とアニメを新しく見るおっくうさに怯えて手を付けていませんでした。

↑線が多い………多くない?

しかし「アイドル作品について何か考えたことがあるのなら少ハリを見るべき」「他のアイドル作品の見え方が一変する」などという熱い言葉に感化されたので、dアニメストアに加入し2日で完走いたしました。一回間違えてdTVに加入しました。

第一話が始まった瞬間、何とも言えないOPとクレヨンしんちゃんのごときシンプルなタイトルロゴに面食らう。OP、次からは飛ばすかもしれない…私は引き気味だった。(まさかその後、イントロを与えられただけでハローハロー世界してしまう体になるとは知らずに…。)

15年前に解散したアイドルグループ、「少年ハリウッド」の名を継ぐ新生少年ハリウッドとして集められたカケル、シュンシュン、マッキー、キラ、トミー。シンデレラガールズのような「みんなで楽しく頑張ろうネ!」などというハツラツな空気など皆無である。そこに突然ブチこまれたアイドルのキャッチフレーズ練習。

シュンシュン「笑顔でキュン!怒りんぼに…シュン。この八重歯にかけて、君の最後の彼氏になることを誓いますっ。十五歳の高校一年生、シュンシュンこと、舞山春です!」

私「助けてくれ~~~~!!!!!!!!!!!」

恥ずかしい。イタい。耐えかねる。1話でこんな視聴者を試すような真似を…????あまりに挑戦的なアニメだ。まるっきり台風だなこりゃ…!しかし当たり前なのだ。彼らはこの名乗りをクソ恥ずかしいと思っている。だからこっちも恥ずかしいのだ。

「アイドル的行為」とは日常からしてみればこっぱずかしいもの。

その後、マッキーは電車で女の子にきゃあきゃあ陰で騒がれながらこう語る。

「きゃあきゃあ言われて手を振るのって、裏を返せばバイバイってことなんじゃないの。アンタたちこっちの住人じゃないからって」

そうなのだ。アイドルは現実から浮いた存在。少年たちは日常の世界に暮らしながら、アイドルという非日常の自分も兼任している。

こういった「日常からの乖離」のようないわゆる「アイドル作品にまつわる諸問題や疑問」が全て詰まっているのが少年ハリウッドなのです。


特に、この作品の根幹ともなっている「アイドルは永遠になれるか?」という問題でしょう。

一般にアイドルを扱う作品の登場キャラクターたちは、若いです。アイマス(デレ、ミリはちょっと年齢は特殊だが)も、プリパラも、アイカツも、ラ!も。

だから曲や作品に「未来」「永遠に」「輝きの向こう」というキーワードは用いられる。ずっとずっと頑張るよ!ずっと一緒にいるよ!

しかし現実問題、そうではないことを私たちは知っている。そうではないことを知りながらも綺麗な言葉でごまかされに行っている。

もはやSMAPでさえ解散してしまうこの現実で永遠のアイドルなんて…。

少ハリ3話でトミーは、すでに解散してしまった初代少年ハリウッドが撮影した合宿のビデオを見ます。まだ解散していない初代メンバーは希望一杯に夢を語るのです。『みんなでずっといたいな!』『永遠にアイドルでいたいです!』…叶ってないじゃん!少ハリは3話にして「永遠にアイドルなんてムリなんだよ!!!!!!」ということを無残にもキャラクターにも、視聴者にも叩きつけてきた。

アイマスの765は「あげる、終わらない全てを!」と歌った。しかし10年後、コンテンツはどうなっているだろうか?20周年を迎え大きな公式の動きが減り、かすかなイベントに全力をあげてファンが食らいつくサクラ大戦のようになるんだろうか。それは必然なんだけど。…とか考えてて最近悲しくなってたんです。

でも少ハリは有限だからこそ、永遠にするにはどうすればいいのか?ということをぐるぐる考えさせてくれる。有限の中で何ができるのか。永遠とは何なのか。

その他にも

「バッシング、自分が世に必要とされていない恐怖」

「握手の意義、ファンの意義」

「居場所とは何か?センターとは何か?」

など、アイドル生活において起こる可能性のある諸問題が目白押し。とりあえず346プロダクションは新人アイドル全員に少ハリ全26話の視聴を義務付けておいてほしいと思います。

私が特に痺れたのは少ハリ16話「本物の握手」でのファンの一言。カケルのファンだという女性はカケルと握手してこう話します。

「気軽に握手できないくらい凄いアイドルになってほしい、そうすれば今日のこの握手がもっともっと価値のあるものになる」…と。

うーん!と私は死ぬほど唸りました。以前ハロプロ大好き声優陶山さんのトークかなんかで「握手っていうのはその人の人生の数秒間を貰ってることなんだ」と語っていてなるほどなあ~と思ったんですが、それはその人が価値ある存在だからなんですよね。当たり前だけど。

アイドルっていうのはもちろん有名になってからする握手もですけど、輝けば輝くほど過去にした握手でさえも宝物に変えることができるのだと。

い、言われてみれば…………。いつかどこかで、彼らと握手をした彼女たちは語るのかもしれません。「私○○くんと握手したことあるんだから~!」と。

それを彼らが知ることはなくても、彼らは握手を通して誰かの未来にさえも宝物を与えることができる。ふ、深ェ~~~~~~!23分でこんな話まとめられるのかよ~~~!!!!!!!

とにかく少年ハリウッドはアイドルの諸問題がめちゃくちゃスマートに描かれたアイドル界の教則本なのです。毎回毎回アイドルポエムっていうんでしょうか、なんていうかキャプテン!今日の格言!みたいな感じでアイドルとは何か、みたいなモノローグが入るんですけど、その日本語がとにかく美しい。

「ハリウッド東京がくれた、雨音の拍手を僕は永遠に忘れない」がマジでビューティフルジャパンセンテンスすぎて失神しました。国語の偏差値が上がっちゃう~~~~~~~~~~~~!!!!!!!配点10。

それとは抜きに私が感心した(偉そう)のは、空気感ですね。ぶっちゃけイタくて耐えられない瞬間が何度も襲ってくることがあるのですが、それが不思議と段々クセになってくる。

なんていうんでしょうか。部活や友達間でだけ面白い内輪ネタって、こういうのだよなあ!って思いました。だからめちゃくちゃ最初は居心地が悪い。「内輪だけがおもしろくなってる空間」をこんなに秀逸に描いた作品って例を見ないんじゃないでしょうか?そしてこれがだんだん面白くなっていったのは、私が少ハリを見ているうちにいつの間にか「少ハリの身内」になっていたからなのでしょう。25話のモノマネ死ぬほど面白かったもんな。

あと一々ギャグセンスがトンチキなのに、それを一々ハイテンションでツッコむことがほとんどないのもクセになります。おんのじ!おんのじ!すりつぶしてみなヨ!!どういう言語センスしてんの?サイコーだよ、お前ら…。

もうとにかくよかった。我ら少年ハリウッド!最高!!なんかどの話が良かった?って言われたらよくわかんないけど全部!!!!!!って言う。少ハリはアイドル哲学、アイドル教習。我ら少年ハリウッド!!!!!!!!!!!お前らみんな~~~♪おかしいよ~~~~♪

私の推しは、マッキーかナ…。(あまりにもわかりやすくて恥ずかしいわ。)

マッキーとキャットは百合。(?)


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