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占い師から歯並びをキレイにした方が良いと言われて歯科矯正を決意したら大変だった話し ep14

『世界の片隅で・・・』

「もうすぐ目を覚まされますよ」

遠くから、話し声が聞こえてくる。
無意識に瞼が動く。1日ぶりの目覚めに、後悔した。
まるで、遊園地のコーヒーカップに全速で乗せられてるような気分。
大門が『頑張ってね』って言ったのはこのことだったのか・・・!
二度と目を開けるまいと誓ったのに、動いたせいで起きた事に気付いた看護師さんや家族が声をかけてくる。
「haku さん、気分どうですか?」
って、歯が上下に固定されてるのに話せるかい!
「少し目開けれますか?」
いやだよー
開けたくないよー
そう思っても通じない。首を振りたかったけど、眩暈がますますひどくなりそうだったし何より全身が動かせない。
意を決して、もう一度恐る恐る目を開ける。部屋の天井がぐにゃぐにゃと歪む。胸の辺りはむかむかと吐き気がした。麻酔がまだ残ってるのか意識は朦朧としてる。

なんとか頑張って看護師さんの問診に答える。直後、吐き気がピークに達して中学生以来のベッドの上で嘔吐。点滴やドレーンに繋がれて、手で押さえることもできず・・・この屈辱的な状態に半泣きだ。
「大丈夫ですよ~着替えましょうね!」
看護師さんや姉(現役看護師)がテキパキと介助してくれて、すぐにさっぱりとなった。
それでも、手術なんかしなければ良かったとこの時は後悔で押しつぶされそうだった。

夜になって母や姉も帰り、病室で一人。
頭上では、ずーっと何かのアラートが鳴っている。何より、一日中挿管されていたせいか、鼻の粘膜が腫れて吸っても吸っても酸素が入ってこない。
口も固定されているため呼吸がほぼできない状態だった。
そんな状態なので、夜中になっても眠る事はできずベッドの上で修行の様な苦しみに耐える。ふと、『あーエベレストに登った人は空気薄くてこんなに苦しいんだ。私は、このまま誰からも忘れられてずっと苦しいままなんだなー・・・』と、世界の片隅で一人ぼっちになったような感覚に陥るのだ。
術前のハイテンションはどこへやらである。
そして、ようやく浅い眠りに就けたのは空が明るくなり始めた頃だった。

次回、『ルパン三世 sweet lost night 〜魔法のランプは悪夢の予感〜』(再)

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