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猫のいるしあわせ

『猫』と一緒に暮らしてみたいと思うのは、私の欲望でもある。
SNSに溢れる愛猫自慢。
愛猫家さんたちの幸せそうな顔。
その、どれもがうらやましい。
動物保護に熱心は友人からは、保護猫を勧められるがどうにも一歩踏み出せない。

小学生の時、豆柴がやってきた。私と、同じ誕生日でとても可愛かった。
末っ子だったので、妹ができたようでうれしかった。
でも、動物は人間より成長するスピードが速い。あっという間に年をとり、子犬を2回産んで、老犬になった。
妹だと思っていたのに、大学生の時に息を引き取った。
その翌日、起きたら声が出なくなっていた。大学で、心理系のゼミに所属していたので、当時の教授がカウンセリングをしてくれた。
いわゆる、『ペットロス』というやつだった。

その経験から、動物を飼うという行為に疑問を持つようになった。
最後まで責任もって飼えるのか、幸せにできるのか、逃げだしたらどうしよう、今の給料でちゃんとした医療を提供できるのか、ありとあらゆる疑問でがんじがらめになって結局は飼えないままでいるのだ。
SNSに溢れる愛猫家さんたちの、幸せそうな笑顔もきっとそんな疑問や苦労を乗り越えた先にある笑顔なのだろう。

そんな事を考えながら、梅が咲き始めた庭で近所の野良猫を撫でる。
ふにふにするお腹の柔らかさと、毛のほわほわした感触に、指の先からじわりとしあわせが伝わってくる。

今の、私の生活にはこのくらいのしあわせがちょうどいいのだろう。


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