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サッカーも陣地は重要 〜J2リーグ第36節 レノファ山口FC vs 京都サンガF.C. プレビュー〜

J2リーグ第36節 レノファ山口FC vs 京都サンガF.C.のプレビューです。

前節の振り返りはこちらです。

*追記しました。ぜひご覧ください!

対戦成績

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過去7度の対戦があるこのカードですが,対戦成績は京都の3勝2分2敗となっています。そこまで明確な差はありません。

スコアを見ていくとお互いに点を取り合う展開が多いことが分かります。クリーンシートは京都の2度だけで山口はまだありません。今年の両チームも攻撃的ですからこれまでのように点を取り合う展開になっていくのでしょうか。

ただ,前回の対戦は京都が山口に2-0で完勝しました。山口とすれば3バックに変更するきっかけとなったのがこの京都戦でした。京都は古巣戦の庄司が前半のうちに退場となり数的不利での戦いを強いられることになりましたが,山口の攻撃をきっちりと受け止め逆にカウンターで2点目を奪うという完璧な試合運びを見せました。


京都サンガの現状とあれこれ

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京都は現在16勝11分8敗の勝ち点59で5位に位置しています。プレーオフ圏外の7位の水戸とは勝ち点差が2,自動昇格圏内の2位大宮とは勝ち点差が4となっています。今の京都は上の自動昇格の争いについていけるかプレーオフの出場をかけて争うことになるのかの瀬戸際にいると思います。山口戦の次が現在3位の横浜,好調の新潟との対戦になっていきます。それを考えればアウェイとはいえ14位の山口からは勝ち点3が欲しいところだと思います。

京都は夏の移籍での大きな動きというものはなかった印象です。放出・加入共に2名です。放出では磐瀬剛群馬へ,呉少聴とは広州恒大との期限付きの契約を解除しました。一方加入は期限付きでガンバから藤本淳吾神戸から中坂勇哉を獲得しました。この2名は実力的には大きな補強だと思いますが,まだ京都の戦力になりきれていないのではないでしょうか。藤本は1度のスタメン出場と5度の途中出場,中坂は4試合の途中出場で1ゴールとなっています。

では京都の数字に参りましょう。

まずは京都の戦い方を表している数字の紹介です。Football-LABのデータによると京都は「ボール支配率がリーグ1位の59.9%となっています。平均で6割近くボールを保持しています。 

ただ,このボール保持も自陣でただボールを回しているだけなのかどうかが重要になります。ゴールを奪うことが最終的な目的なわけですから自陣でパスをつないでいるだけでは意味がありません。

そこで敵陣の30mライン進入回数を見てみると1試合平均51.5回でこれまたリーグ1位,そしてペナルティエリア進入回数も14回でリーグ2位となっています。つまり,自陣で回しているだけではなく効果的に敵陣に進入するボール保持になっていることが読み取れます。

この京都のボール保持は攻撃面だけではなく守備面でも効果を発揮しています。相手の攻撃を受けた回数を示す被攻撃回数の数字が京都は110.4回リーグ1位の少なさとなっています。ちなみに山口の被攻撃回数は129.3です。

この被攻撃回数の少なさは自分たちがボールを持つ時間を長くして試合をコントロールできているからだと言えます。さらにシュートを打たれた回数もリーグで最も少ない1試合平均10.3本となっています。これも敵陣でのボール保持で相手を京都のゴールから遠ざけていることが影響していると思います。

つまり,京都は敵陣でボールを保持する時間を長くすることでチャンスを作り出しながら同時に相手の攻撃の機会を奪うという戦い方をしていることが読み取れるわけです。

ですから,山口とすればいかに京都からボールを奪うか京都の陣内でプレーする時間を長くできるかが勝利へのポイントとなるのだと思います。京都の戦い方を知ることで山口の戦い方のポイントが予測できるのです。


さて,あと2つだけ京都の数字を紹介させてください。

1つは京都の先制点を奪った試合の成績です。
京都は金沢と並んで先制点を奪った試合がリーグで最も多いチームです。その数は21試合になります。そしてその勝敗が15勝6分と京都は先制点を奪うと無敗なのです。この数字が今年の京都の好調を支えているとは思うのですが,ここから自動昇格を狙うのであれば引き分けを勝ちに持っていく必要があると思います。

京都の先制時の勝率は71.4%です。これは決して悪い数字ではないのですが昇格を争う他のチームと比べるとやや見劣りする数字です。先制点を奪って逃げ切る試合をやりきることが自動昇格に向けてはカギになると思います。

2つ目はアウェイでの成績です。京都はアウェイで勝ち点を拾っていくことがこの先重要になってくると思います。
それもそのはず,京都は現在ホーム戦14試合負けなしが続いています。その間8勝6分と少し引き分けが多いことが気になりますがホームでは勝ち点を計算できる状態になっています。
一方でアウェイでは直近の鹿児島戦で勝利を収めたもののその前の5試合では4連敗と1つの引き分けという成績でした。今シーズンの京都の8敗のうち最初の2敗はホーム,その後の6敗はアウェイという状態となっています。今回の山口戦はそのアウェイ戦です。

京都が再び上昇気流に乗るためには先制して逃げ切ることアウェイで勝ち点を拾うことがキーになってくるでしょう。


レノファ山口の現状とあれこれ

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山口は前節岐阜と引き分け11勝7分17敗となりました。勝ち点は40に到達し残留に大きく近づきました。

今週は代表戦ウィークということでその影響がJ2では出てくることがあります。山口からは川井歩がU-22のブラジル遠征に追加招集されました。個人的には大歓迎の出来事です。彼にとって何かのきっかけになる遠征になれば良いと思っています。ただ後述もしますが,京都戦を考えれば川井がいないのはチームにとって痛手であることは間違いありません。

さて,京都の方でスタッツを紹介したので山口のスタッツも確認してみましょう。これもFootball-LABのデータです。
山口といえば攻撃の印象が強いと思いますが,得点数は47でリーグ11位という数字になっています。つまり,得点を奪うことに関してリーグの中で印象ほど優位に立っていないということです。

ではスタッツからはその攻撃に関してどんなことが読み取れるのでしょうか。

山口の特徴は攻撃回数が多いということです。1試合平均128.9回はリーグで3番目の多さです。これは攻守の入れ替えが多いことを示していると考えられます。

そして30mライン進入回数は41.1回でリーグ5位ペナルティエリア進入回数は12.5回でリーグ4位となっています。これは良い数字だと思います。なぜなら,敵陣深くまで進入してチャンスになりそうなシーンを多く作り出しているということが読み取れるからです。

次に敵陣に進入した後のシュートについての数字です。シュート本数は1試合平均で13.9本でリーグ6位となっておりリーグ平均より1本ほど多いという数字です。ただこれもリーグで上から6番目ですから決して悪くありません。

次にシュートの質を見てみましょう。シュートの質を表す指標としては枠内シュート本数が挙げられます。枠内シュートは1試合平均4.4本でリーグ9位となっています。ここがリーグの平均ぐらいの数字になっているのです。

つまり,リーグで真ん中ぐらいの11番目の得点数にとどまっている要因シュートの質がリーグの平均ぐらいであることに関係しているのではないかと言えます。敵陣に進入してシュートを打つことはリーグの中で比較的多い方にポジショニングしているものの枠内シュートのところでリーグ平均ぐらいになってしまっているのではないかということです。

ここから山口の攻撃の課題はフィニッシュの部分であることが推測されます。シュートに行くまでのラストパスやクロスの精度,そして最後のフィニッシュの質が注目点になるのだろうと思います。
試合の評価はこの部分に注目しうまくいっていたかいなかったかを見ることで行っていくのが良いのではないでしょうか。


最後にこの試合が年1の下関開催ということで下関での成績を見てみましょう。

Jリーグに加入した2015年以降の成績は8試合を戦い5勝3敗となっています。昨年は下関では2試合行っており讃岐に1-0岐阜に4-12連勝という結果でした。ちなみにその前の水戸戦にも勝利しているため現在下関では3連勝中となっています。

最近の成績を見ても下関開催の相性は比較的良いと言えると思います。今回は昇格を候補の京都との対戦です。厳しい相手ではありますが,相性を生かして勝利を期待したいところです。


展開予想

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予想スタメンはこちらです。京都はひとまず前節と同じメンバーとしました。
山口は川井の欠場の代わりに誰が入りどんな配置になるのかが全く読めません。川井が代表で欠場,石田が負傷という状況ではSBがいないということになります。ここは前貴之を右SBに戻しドストンをCBで起用するのが自然だと思いますが,もしかすると起海斗のデビューがあったりするかもしれません(怪我してないですよね?)。

ここから追記の分となりますが,時間がないので手短にいきたいと思います。

ポイントは京都の現状に書いた通り,山口が「京都からどうボールを奪い,京都陣内でプレーする時間を長くできるか」だと思います。逆に京都はそれをさせないことが重要になるはずです。

これを考えた時に京都がどのようなシステムで試合に入ってくるかが1つの見所になりそうです。山口は川井が欠場するためどんなシステムかは正直分からないところもありますが,おそらく4-2-3-1でしょう。それに対して京都は前節の愛媛戦を3-5-2のシステムで戦っています。私は3-5-2の方が3-4-2-1より山口は守りやすいと考えます。ですから,京都は前節とはシステムを変えて臨んでくるだろうと思いますのでそこを見てもらうと京都の狙いが見えてくると思います。

3-5-2の方が山口は守りやすいと考える理由は,皆さんご存知の庄司を抑えることを考えた時に庄司がアンカーとして1人で中盤にいてもらった方がプレスを嵌めやすいからです。京都が3-5-2であれば,システムの噛み合わせ的にアンカーの庄司にはトップ下の三幸がマークにつけるので,山口が庄司を抑えるためにわざわざ形を変える必要がありません。やはり京都は庄司が起点になりますのでここを抑えることが試合のポイントにはなります。

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(こんな感じで3-5-2の方が噛み合わせが良いはずです)

2つ目の見所は京都が3-4-2-1だった場合に山口がどんな形でプレスをかけるのかです。3-5-2とは異なり3-4-2-1と4-2-3-1では噛み合わせが良くありません。こうなった時に庄司を抑えながら同時にビルドアップのうまい安藤や本多にどのようにプレスをかけていくのかを見たいと思います。

いかに京都陣内でプレーできるかということがポイントになるとはいえ,京都に押し込まれる時間帯は必ず出てくるはずです。そうなった時には中を締めるブロックを作ることができるかが重要になります(まあ当たり前なのですが笑)。愛媛戦を見る限り京都は攻撃を急いでしまうことがあるように見えました。自分たちの配置が整っておらず相手がブロックを作り縦パスを待ち構えている時に縦パスを入れようとして,引っかかってカウンターを受けるシーンがいくつかありました。

ですから,山口は自陣の守備では京都に攻撃を急がせることができれば理想です。そのためには我慢強く守ることが重要になってくると思います。

見所としては以上の3点ぐらいかと思います。
おそらくいつも以上にたくさんの人がこの試合を観るでしょう。12日のデイゲームはこの試合だけですし台風でみんな家にいるでしょうから(J2ドラフトも昨日ありましたしね)。そんな中で山口らしい良い試合をして上位の京都に勝利するところを見せて欲しいと思います!


*文中敬称略

*データは以下のサイトのものを参考にしています。
 Football-LAB (http://www.football-lab.jp/kyot/preview/)
 Soccer D.B.(https://soccer-db.net)
 J.League Data Site (https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
 transfermarket(https://www.transfermarkt.com)

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