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同じ轍を踏まないための戦い 〜J2リーグ 第28節 ヴァンフォーレ甲府 vs レノファ山口 プレビュー〜

J2リーグ第28節 ヴァンフォーレ甲府vsレノファ山口FCのプレビューです。

前節の試合の振り返りはこちらです。


対戦成績

 昨シーズンが初対戦の両者は,この試合が4試合目の対戦となります。今シーズンのみらスタでの対戦では,甲府が山口のミスを突きながら5得点を挙げ勝利しました。
 小瀬での対戦は、山口をJの舞台に引き上げた上野さんが甲府の監督に就任して直後の対戦でした。オープンな展開となり両者に勝利するチャンスがありましたが、甲府は現在岐阜に所属するバホスが、山口は現在群馬に所属する渡辺広大が得点を挙げてのドローでした。


ヴァンフォーレ甲府の現状

 甲府は現在12勝7分8敗勝ち点437位となっています。7月は1勝1分3敗と調子が上がらない状況となっていましたが、8月に入って町田・徳島に連勝し勢いに乗ってきているという現状です。
 夏の移籍ではジュニオールバホスを岐阜後藤京介を群馬へ放出、そして群馬から小泉勇人を獲得しています。さらに、アラーノリマというブラジル人をポルトガルのエストリルからレンタルで獲得しています。なんとこのアラーノリマという選手は13日に獲得のリリース、17日の山口戦から出場してくる可能性があるようです。

 さて、甲府の数字で特筆すべきは後半での得点の多さです。今シーズンここまで41得点の内訳は前半に13ゴール後半に28ゴールとなっています。特に61分以降のラスト30分では20ゴールをも奪っています。全得点の約50%を試合終盤の30分で奪っていることになります。そのせいなのか、失点も後半の方が多いです。内訳は前半に11失点、後半に16失点です。
 前半はどちらかというとおとなしい展開、後半はオープンな展開が多いのではないかと推測できます。
 それから、後半に得点を多く取ることと関係していそうな数字が先制した時の勝率の高さです。甲府は今シーズン14試合で先制点を奪い、11勝1分2敗の好成績を残しています。勝率78.6%という数字はリーグ3位タイの数字です。
 先制点を奪って守備を固めリードを保った状態で試合を進めながら、試合の終盤相手が前がかりになって攻撃に来たところをカウンターで追加点を奪って逃げきるという戦い方で勝ち点を積み上げていると言えそうです。

 今シーズンの甲府のホームでの成績は、6勝2分5敗となっています。そして、ホーム戦での連勝は今シーズンここまでありません。甲府は前回のホーム戦は町田に勝利しているため,山口戦では今季初のホーム戦連勝を目指すことになります。


レノファ山口の現状

 前節柏に真っ向勝負を挑んだものの跳ね返され1-4の完敗を喫した山口ですが、今週は衝撃の移籍のリリースが出されました。

 まず、高木大輔のJ1ガンバ大阪への移籍です。昨シーズン東京ヴェルディからレンタルでやってきた高木は3トップの一角として開幕から山口に欠かせない戦力となりました。そして今年はヴェルディから完全移籍で加入、序盤こそコンスタントにスタメン出場というわけではありませんでしたが、6月に3バックへ変更してからは右WBとして、瀬川が栃木に移籍してからは左WBとして試合に出続けていました。
 わずか1年半の在籍でしたが山口のファンサポーターに愛された高木大輔が遂にJ1の舞台に挑戦します。昨シーズン序盤リーグを席巻した3トップを組んでいたオナイウ、小野瀬はJ1で活躍しています。高木大輔にはそれに負けない活躍を期待したいです。


 そして、高木大輔の移籍のリリースの直前に出されたのが鳥養祐矢のFC琉球への移籍のリリースでした。これも山口のファンサポーターに衝撃を与えました。


 このツイートのリプ欄や山口サポーターの反応からも彼がどれだけ愛されていたかということがわかります。チーム在籍「5年半」という数字は岸田とともに今の山口では最長です。JFLから山口とともにまさに駆け上がってきた選手のしばしの別れとなりました。
 山口を愛し,山口に愛された鳥養の「選手としての挑戦」を応援したいと思います。
 また田中貴大の鈴鹿アンリミテッドへの移籍も今週発表されました。これでこの夏に瀬川,田中,鳥養,高木がチームを去ることになりました。いずれの選手もWBを務めることができる選手達です。今の山口のシステムではカギとなるサイドの選手の層が薄くなってしまうのではないかという点は少し心配です。

 チームを去る選手がいれば,新たにやってくる選手もいます。ガンバから高宇洋の育成型期限付き移籍加入が発表されました。中盤の選手として攻守にわたる活躍を期待したいです。流石に甲府戦のスタメン出場はないと思いますが,すぐに出場機会がやってくると思います。

 さて,この試合は甲府でのアウェイ戦となりますが,山口の中部地方での成績はどのようになっているのでしょうか。山口がJ3に参入した2015年からの中部地方での戦績は17試合戦って6勝7分4敗となっています。当然この17戦は山口からしてみれば全てアウェイ戦ですから,それを考えると2つの勝ち越しという戦績は悪くないと思います。山口はこの試合に勝って勝ち越しを1つ増やせるでしょうか。


展望

 こちらが予想フォーメーションとなります。
 甲府山口ともに水曜日に天皇杯を戦ってから中2日の試合となります。甲府は前節の徳島戦から11人全員を変更してJ1の首位FC東京相手に見事な勝利を収めました。ですから,山口戦のメンバーは徳島戦のメンバーと同じだと予想しました。システムは不動の3-4-2-1です。唯一心配なことがCBの小出の状態です。前節の徳島戦ではコンディション不良のため前半で試合を退いていました。怪我ではないようなので問題なく山口戦には出場してくると思いますが,果たしてどうなるでしょうか。
 山口の方は柏戦からドストンと菊池,工藤を除く8人のメンバーを変更してセレッソに挑んだものの0-3の完敗となってしまいました。そして,臨む甲府戦ですがスタメン及びシステムは全く読めません
 なぜかと言いますと,まずは先ほど書いた高木の移籍の影響です。左サイドに誰が入るかが全くわかりません。天皇杯ではパウロを試したようですが,試合が観れていないのでどうだったのかが分からず,ひとまず石田としました。石田も右サイドの選手ではありますが,霜田監督のコメントを見ると右だけではなく左もできる選手として獲得したようなので,左サイドでのスタメンもあると思います。
 次に菊池流帆の出場停止の影響です。3バックの左として不動の地位を築き始めていた菊池ですが,この試合は累積警告で出場停止になります。そこに誰が入ることになるのでしょうか。
 最後に,高井和馬と前貴之の状況が全く分からないこともスタメン予想を難解なものにしています。高井はおそらく水戸戦で負傷した影響で柏戦,セレッソ戦でベンチ外となっています。前貴之は謎です。練習中に負傷したのか何なのかは分かりませんが柏戦,水戸戦とベンチを外れています。彼らが甲府戦に出場できるのかどうかで話が全く別物になります。
 山口のシステムは柏戦,セレッソ戦と3-5-2でした。ですから,この甲府戦も3-5-2のシステムで予想しましたが,vs甲府を考えると3-4-2-1もあると思いますし,山口の状況を考えれば4バックもあると思います。果たして,山口がどんなメンバー,システムで臨むのでしょうか,ここは1つの見どころです。

 さて,甲府の試合は前節の徳島戦を見ました。基本的には5枚のディフェンスラインと4枚の中盤でブロックを作り,そこからウタカ・ドゥドゥ・曽根田の3人のカウンターという戦い方でした。展開も前半のうちに先制し,1-0で時間を進め徳島が前がかりになったところを94分にカウンターでトドメの2点目を奪うという理想的なものでした。しかし,中盤の選手が積極的に前に出て行ってのプレスやボールを保持する時は保持して時間を消費することもできるという戦い方のバリエーションの方が印象に残りました。
 特に,ブロックを作ったところから前に出て行って相手を潰すというプレーは非常に強烈でした。ですから,山口としてはサイドに起点を作ったところから斜めのパスでゴールに迫っていきたいところです。それから,ブロックを作られる前に攻める事も重要です。徳島戦でもボールを奪われて前線の3人が戻り切る前,5-2で守らざるを得ないときにサイドの深い位置まで運ばれるという場面が後半の立ち上がりにありました。甲府が5-2で守っている時にいかに攻められるかが山口としては重要になってくるでしょう。

 逆に甲府の攻撃ではやはりウタカ・ドゥドゥ・曽根田の3人に注意が必要です。これは,柏戦の経験を生かすしかありません。強烈な個に対して個でどのように守るかです。甲府はウタカ・ドゥドゥがゴールを決めた試合は今シーズン負けなしです。特に山口はドゥドゥとの相性は良くありません。ドゥドゥは山口戦にこれまで3試合出場し3勝と勝率100%です。山口はここを抑えなければ勝利はありません。
 前線の選手以外で言えば,3バックのサイドの選手は攻撃の起点になれるため注意が必要です。右の小柳は徳島戦で綺麗な縦パスからチャンスを作っていましたし,左のエデルリマは自分で持ち運ぶことができる甲府のキープレーヤーです。山口はこの2人の選手にどれだけ圧力をかけられるでしょうか。それが必要となります。
 徳島戦では徳島がシステムを後半から変更し,3-4-2-1のミラーゲームになると徳島が流れをつかみ始めました。甲府はミラーゲームを苦手としている情報もありますので,山口が3-4-2-1で試合に臨む可能性もあると思っています。

山口としては,柏→甲府という対戦順は今シーズンの第1節→第2節と全く同じ流れです。前節柏に負けてしまったため,今回の甲府戦にも敗れてしまえば,開幕と同じ流れでの連敗となってしまいます。同じことを2回繰り返すことは避けなければなりません。シーズン残り3分の1で反撃をする弾みをつけるためにも甲府相手からの勝利を期待しましょう。


*文中敬称
*データは以下のサイトのものを参考にしています
 Football-LAB (http://www.football-lab.jp/kyot/preview/)
 Soccer D.B.(https://soccer-db.net)
 J.League Data Site (https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)

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