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田んぼサッカーで見えた次への期待 〜J2リーグ 第23節 レノファ山口FC vs アルビレックス新潟 振り返り〜

2019年J2リーグ第23節 レノファ山口FC vs アルビレックス新潟の試合は,2-2で引き分けとなりました。今回はその試合の振り返りです。

前回の試合の振り返りはこちらです。


田んぼサッカーへの対応

前回対戦で2-0で敗北を喫した新潟との再戦は,田んぼサッカーとなってしまいました。サッカーであってサッカーでない試合でしたが,その結果は,先制したものの逆転され,アディショナルタイムに追いついての引き分けでした。

この結果に対する率直な感想としては,「負けなくてよかった」というものです。どちらに転んでもおかしくない紙一重の展開だったと思いますが,このピッチに対応していたのは,どちらかと言えば新潟だったのではないかと思います。

なぜなら,お互い割り切りが必要なピッチ状況の中で,より割り切ることができたいたのが新潟だったと思うからです。

新潟は,前節とメンバーが同じながらも前線のブラジル人を筆頭にフィジカルの強さやボールを扱う技術の高さ,スピードをもって攻撃を繰り出してきました。特に,レオナルドとフランシスはこのピッチ状況でも「うまさ」を出していました。

そんな中で山口もこのピッチに対応していた吉濱と高井を中心にサイドの深い位置まで運んだり,ディフェンスラインの裏を取ったりしていきました。

攻撃の面は,個人で打開できるレオナルドとフランシスがいる新潟に若干分があれど,そこまでの差はないように感じました。なぜなら,攻撃の面の割り切りは山口もできていたからです。

割り切りという点で差があったと感じるのは,守備の面です。もっと場面を限定すると,自分たちのゴールに方向に走って相手のロングボールを追っている時の対応です。

8分の菊池と渡邉新太の走り合いや17分の楠本とレオナルドの走り合いにおいての菊池,楠本のそれぞれの対応は,難しいところではありますが外に出して欲しいと思いました。

20分の三幸が自陣でボールを持ってレオナルドにかっさらわれかけたシーンや31分の高木がフランシスからボールを奪われたシーンももっとシンプルにプレーできた場面だったのではと思いました。

最初に挙げた2つのシーンは,ボールのバウンドの状況や自分の態勢などを考えると非常に難しい対応を迫られたとも思いますし,そういった状況に追い込んだ新潟がうまかったとも言えると思いますが,この4つのシーンは,共通して相手ボールになってもボールを外に出すことが必要でした。

後に挙げた2つのシーンは特に,奪ったボールを大切にしようとして結果奪われるというプレーだと見えました。チームの原則の中では大切なことですが,この試合の状況では割り切りきれなかったことによるプレーだったと感じました。

新潟の方は,そういった欲を出さず,プレーを切ることが山口よりできていたと思います。35分に1度,岡本が高井に奪われるというプレーがありましたが,それぐらいだったと思います。

このように,割り切りが必要な試合でそれがよりできていたのが新潟だったと思います。それでも山口が試合に負けなかったのは,さっきのようなプレーで奪われかけても食らいついて対応してボールを奪い返したり,相手にミスをさせたりすることができたから思うので,その点ではDF陣も粘り強くやれていたと思います。


実績と経験を持つ工藤壮人の存在

そして,山口が負けなかった要因には,同点ゴールを挙げた工藤壮人の存在が欠かせません。間違いなく彼のプレーがチームに勝ち点1をもたらしました。

今シーズンここまでの工藤は,期待通りの活躍を見せているとは言えません。前節終了まででリーグ戦では2ゴールにとどまっており,11試合のスタメン出場はあるものの18節以降は2試合の途中出場で9分しかプレーしていません。

昨年リーグ戦では12試合しか出場していないことやプレシーズンマッチでの骨折などシーズン開幕をコンディションが整っている状態で迎えることができなかったことは間違いありません。それでも,山口で活躍できるということで獲得してきたし,起用してきたのだと思います。それだけの実績と経験を持つ選手です。

この試合では,実績と経験のある「まさに工藤」というプレーが出たと思います。

工藤は川井に代わって80分に投入され,宮代と2トップを組みました。その後86分にドストンが投入され菊池と宮代の2トップ,そのトップ下に工藤といった形になりましたが,得点場面になるまで1度も工藤のもとにボールが届きませんでした。80分に投入されて得点を奪ったシュートを打つまで1度も足でボールを触っていないのです。91分40秒で1度ヘディングで後ろにそらすプレーがありますが,その1度だけです。そんな状況でも工藤は体を張ってこぼれ球を作ろうとしたり,相手ボールになったら切り替えてまず戻ったりすることを誰よりも行っていました。

その姿勢と経験が初めてのボールタッチであのシュートを生んだのではないかと思います。彼の経験の中でシュート枠に入れれば何かが起きると感じ,それを意識したあのシュートだったわけですが,初めてのボールタッチでその通りミートができてしまうこともさすがだと感じました

そして,ゴールを奪った後も顔色1つ変えず,次の逆転ゴールに向かってすぐ自陣に戻るというあの姿勢も印象に残りました。このようなチームのために自分のできることを愚直にやり続ける姿勢が同点ゴールにつながったのでしょう。そして,角度はありませんでしたが95分最後のシュートシーン,大外ににポジションを取っていた工藤にボールがこぼれてきたのだと思います。

今年の山口が現状降格圏と勝ち点差7つけられている要因には,各ポジションに実績と経験のある選手たちがいることが大きいのではないでしょうか。DFでは坪井,MFでは佐藤,FWでは工藤といった選手がいることでチームが大崩れしていないのかもしれないと感じました。

宮代が加入してFW陣はさらに激しいポジション争いになっていますが,ここからの工藤の活躍にも期待したいと思います。


このメンバーでのサッカーが見たい

さて次は大宮とのアウェイ戦です。この新潟戦が田んぼサッカーになってしまったので,普通のサッカーをこの試合と同じメンバーで1度見てみたいです。特にようやく本職の右で起用された川井のプレーを楽しみにしています

川井はシーズン途中で山口に加入してずっと左サイドバックでのプレーが続いていました。本職の右ではない左サイドでは,どうしても縦への脅威が出ず攻撃が停滞してしまうこともありました。そんな中で川井はトゥーロン国際大会に派遣されました。そこには本職の右サイドで縦の突破やアーリークロスなど本来のプレーを出している川井がいました。ですから,トゥーロンを通して山口でも右サイドでの起用が見たいと改めて思いました。

そして,チームは川井が遠征に帯同すると同時に3バックに変更,川井が右サイドでプレーできる状況がようやく巡ってきたものの高木と瀬川が良いプレーを見せていたためにそのチャンスが回ってきませんでした。

そんな中前節の負けを受けて,遂に右でのプレーチャンスを川井は得ることができましたが,あいにくの田んぼサッカーとなり,川井の良さが出る状況ではありませんでした。

ですから,次の試合ではこれまでの鬱憤を晴らすような川井のプレーが見ることができると思っています。幸い,瀬川を使えばもちろんのこと高木でも左サイドはガンガン縦に行くことができます。左から縦に進んで,そこから右サイドに展開,川井の正確なクロスからのゴールなんていう妄想が現実になることを期待しています。

*文中敬称略



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