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歴史の重みを感じる薩長対決 〜J2リーグ第37節 鹿児島ユナイテッドFC vs レノファ山口FC プレビュー〜

J2リーグ第37節 鹿児島ユナイテッドFC vs レノファ山口FCのプレビューです。

前節の振り返りはこちらです。


対戦成績

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Jリーグでの対戦は今年が初めての鹿児島と山口ですが,その初対戦は1-0でホームの山口が勝利を収めました。この勝利は山口にとっての今シーズンホーム初勝利でした。決勝点はDF菊池流帆のJリーグ初ゴールでした。

ちなみにこの両者は2014年のJFLでも対戦がありました。山口ホームでは1-2で鹿児島の勝利,鹿児島ホームでは0-3で山口の勝利となっており,今年の対戦も含めた通算対戦成績は山口の2勝1敗です。
前回の鹿児島ホームの対戦では現在京都に所属している宮城雅史の2ゴール岸田和人のゴールが生まれました。その岸田はJFLの山口ホームでの対戦でもゴールを決めています。一方鹿児島では現在も所属している赤尾公が山口ホームの試合で決勝点を奪っています。

互いにJFLで対戦した時のメンバーはほとんど残っていませんが,現在も所属している数少ない選手がJFLでの対戦でゴールを奪っているということが面白いですね。


鹿児島ユナイテッドの現状とあれこれ

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鹿児島は現在9勝4分22敗の勝ち点31で20位に位置しています。残留に向けては勝ち点を1つでも積み上げていきたいという状況が続いています。ただ最近5試合の成績を見ると1分4敗,さらに直近6試合勝ちがありません。そういった現状の中では前節の町田戦の勝ち点1は連敗を5で止めたという意味で良い結果だったのではないでしょうか。

夏の移籍では5選手を獲得しました。

1.FC東京からMF平川怜
2.韓国の釜山からDFヨンジェミン
3.柏からGK猿田遥己
4.琉球からFW和田凌
5.ギリシャのアポロンラリッサからFWルカオ

この5選手のうち前節の町田戦に出場したのはFWのルカオのみとなっているようにこの夏に獲得した選手達が欠かせない戦力になっているかというと少し微妙なところがあると思います。

さて鹿児島の数字紹介に参りましょう。全部で3つです。

1.山口戦は勝利することになっている!? 〜ホームとアウェイの成績比較〜
2.残留に必要な得点力 〜得点と失点について〜
3.鹿児島の歴史を知る男 赤尾公  〜山口に対して相性の良い選手紹介〜

まずはホームとアウェイの成績の違いについてです。鹿児島の今シーズンのホームとアウェイの成績を比べるとかなりの差があることが分かります。ホームでは7勝10敗の勝ち点21(リーグ17位),アウェイでは2勝4分12敗の勝ち点10(リーグ22位)となっています。ホーム戦の方が1試合少ないにも関わらず倍の勝ち点を稼いでいます。

残留のためには苦手なアウェイで勝ち点を稼ぐよりもホームでどれだけ積んでいけるのかがカギになるはずです。なぜなら残り7試合のうち4試合がホームでの試合になり,延期されている岐阜との直接対決もホームで行われるからです。ちなみにホームの4試合では山口・岐阜・岡山・水戸と対戦します。

また,今シーズンここまでの鹿児島のホーム戦の流れを見ていくとこの山口戦は勝利する可能性が高いことが分かります。それはなぜか・・。

鹿児島の今シーズンホーム6試合目の4月21日の琉球戦から2連勝→2連敗→2連勝→2連敗の流れが続いているからです。この連勝連敗の流れが3回も続いています。次の流れに入るとすると4回目になります。

この山口戦はどのような状況で迎えるかというと,上の直近5試合の成績の画像を見てもらって分かる通り山形戦・京都戦と連敗しています。したがって山口戦から連勝の流れが再び始まることが予想できるわけです。

これはオカルト強めの話で信じるか信じないかはあなた次第という感じなのですが,こういったことを知って試合を観るのもまた面白いのではないかと思うのです。

さあ気を取り直して別の数字に参りましょう。鹿児島の得点と失点についてです。鹿児島のサッカーというとやはり攻撃というイメージがあります。金鍾成監督が率いていることもあってゴールを取られても取り返す攻撃的なサッカーのイメージを私は持っています。

そんな鹿児島の失点数はリーグワースト2位の67失点となっています。正直この数字は私の印象の範囲内のものです。失点が多くなってしまうのもある程度はしょうがないと思います。ただ,それに対して得点を奪うことができていないのではないかと思います。

鹿児島の得点数は37でリーグで下から5番目の少なさです。ほぼ1試合に1点ペースなのですが最近の6試合では2点しか奪えていない現状があります。6試合のうち4試合は無得点に終わっています。

6試合勝ちなしの状況の中で新潟に6点を奪われるなど失点の部分に目が行きがちかもしれませんが,それよりも4試合で無得点であるということの方が鹿児島にとっては大きな問題だと思います。

栃木との残留争いでは点を取られても相手より多く取って勝つ試合を1試合でも増やすことが必要でしょう。栃木は試合の中での出入りを小さくして勝ち点を1つずつでも積み上げる戦略が取れるチームだからです。この好対照なチームの残留争いは最後まで目が離せません。

鹿児島としてはリーグで4番目に失点の多い山口を相手に点の取り合いをして勝つという試合を演じられるかどうかだと思います。この点が1つの見所でしょう。

最後にその得点を取るために山口に対して相性の良い選手を1人紹介しておきます。それが赤尾公です。最近3試合連続スタメン起用されている赤尾ですが,山口戦の成績は2試合に出場して2ゴールを挙げチームも2勝となっています。たかが2試合ですが守備的な選手が2試合で2ゴールを挙げているわけですから無視できない数字だと思います。

赤尾が出場した試合というのが1つは対戦成績のところでも書いた14年のJFLでの試合です。鹿児島ユナイテッドFCが山口に唯一勝った試合です。そして,もう1試合がその1年前の2013年の全国地域サッカーリーグ決勝大会での山口戦です。この時に赤尾が所属していたのがヴォルカ鹿児島というチームです。この大会のグループBでレノファとヴォルカが同組になりそこで対戦がありました。そこでの対戦では2-1でヴォルカがレノファを下しているのですが,赤尾が同点ゴールを決めています。

鹿児島の歴史を知る赤尾ですが,戦うステージが変わっても山口戦に対しての相性の良さを発揮するのかどうかに注目です。


レノファ山口の現状とあれこれ

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山口は今年唯一の下関でのホーム戦に勝利し12勝7分17敗の勝ち点43となっています。ホームでは3連勝となった一方でアウェイではなかなか勝ち点を積めていない現状がありますからこの鹿児島戦は重要になります。

山口についての数字は2つです。

1.仕事人の岸田と工藤 〜鹿児島に対して相性の良い選手紹介〜
2.山口の必勝パターンは1-0!?  〜今シーズンの試合のスコア分析〜

まずは選手の紹介です。鹿児島相手に2ゴール決めている選手が岸田和人です。対戦成績のところで書いたようにJFLでの対戦の時にゴールを決めています。そして,もう1人鹿児島相手に結果を残しているのが工藤壮人です。工藤は鹿児島戦には今年の試合に途中出場した以外に1試合スタメンで出場した試合がありました。それが2017年の天皇杯2回戦サンフレッチェ広島vs鹿児島ユナイテッドFCの試合です。この試合は3-2で広島が辛くも勝利を収めたのですが工藤が2点を決めています。

最近はなかなか出場機会の少ないFWの2人ですが,そんな中でも仕事ができる選手たちだと思うので出場した時にはチームを勝たせるゴールを期待したいと思います。

2つ目は1-0というスコアについてです。前節の京都戦を1-0のスコアで勝利した山口ですが,ここで私は「1-0の試合が意外と多い気がするのだよな」と思いました。山口も鹿児島と同様にどちらかと言えば取られた分を取り返して勝つというイメージを持たれることが多いチームだと思います。

実際のところはどうなのでしょうか。

調べてみると今シーズンの山口の12勝のうち半分の6勝が1-0というスコアでした。鹿児島との第1戦も1-0のスコアでしたし意外と多いのかもしれません。ちなみに昨シーズンは16勝のうち6勝が1-0でした。鹿児島は今シーズンの9勝のうち1-0は1度だけです。そして失点数がリーグ最少の山形の1-0での勝利は18勝のうち6勝です。

こうして見ていくとリーグで5番目に失点の多いチームの勝利の半分が1-0という事実も比較的珍しいものなのかもしれません。

観ている方としてはたくさん点が入る試合を観たい気持ちがあるかもしれませんが,厳しい戦いの中1-0で6試合も勝っていることが現在残留争いからある程度離れた位置にいる要因だと思います。鹿児島戦も京都戦のような展開になることも予想されますので0に抑えて1点取って勝つということも十分に考えられるでしょう。


展開予想

画像4

スタメン予想は両チーム共に前節と同じにしています。山口のスタメンの注目は代表帰りの川井歩が起用されるかどうかだと思いますが,前節の京都戦を観ても石田の存在は大きいと感じますし川井もブラジル帰りな面がありますからここは石田としてみました。

鹿児島の注目は酒本のポジションです。シーズン前半は前線のポジションで起用されることが多かったのですが,ここ最近は右SBで起用されることも増えてきています。前節の町田戦も右SBで起用されています。酒本は監督の信頼度が高く戦術的にもキーマンになる選手だと思いますのでどのポジションで起用されるのかに注目すると鹿児島の狙いが分かるかもしれません。


鹿児島の前節町田戦についてですが,前半は町田のサッカーに手こずる部分がありつつも後半ルカオに代えて五領を投入したあたりから流れを掴みチャンスを作っていました。

相手が町田だったこともありどこまで参考になるか分からない部分がありつつも構図としては「鹿児島のボール保持に対して山口がどれだけ規制をかけることができるか」が見所になると思います。山口としては基本的には京都戦と似たようなプランになるかと思います。つまり,いかにボールを敵陣で奪うことができるかです。鹿児島はその逆ですね。

その見所に基づけば先ほど挙げた酒本は右SBで起用されるのではないかと思います。鹿児島が山口のプレスを剥がしていくために重要なのはやはりSBでしょう。SBにはビルドアップの逃げ道となり攻撃のスイッチを入れることが求められます。左サイドには砂森和也という今シーズンの出場時間チームNo.1の絶対的な存在がいます。ですから右サイドをどうするかということが重要だと思うのです。

酒本は町田戦でもビルドアップの起点としての役割をこなしていました。酒本を右SBで起用すれば砂森と酒本で前進することがある程度計算できるのではないかと思います。

山口が守備で気をつけたいことはこのSBからの斜めのパスです。町田戦でも酒本や砂森が攻撃のスイッチとして中盤とディフェンスラインの間に斜めのパスを入れるシーンがありました。特にプレスに出て行った後はこのライン間が空きやすくなるので戻りの早さが重要になってくるはずです。ぜひここに注目してください。

逆に山口の攻撃,鹿児島の守備に関して言えばポイントは鹿児島のボランチを務めるであろうニウドです。ニウドは町田戦を観てもピッチの色んな所に顔を出してボールを奪うことができる選手です。サイドに追い込んだ時に彼が加勢してボールを奪うことができます。ピッチのいろんな場所に動いてボールを奪うという意味でいうと私の中では鹿島のレオシルバのようなイメージもあると思っています。

このようにニウドの動きに注意をする必要があるわけですが彼がよく動くということはその背後であったり横であったりにスペースができるはずです。このニウドが動くことによってできたスペースを突けるかが山口のポイントになると思っています。町田戦でいうと13分の森村のシュートシーンなどがそうだと思います。前に奪いに行きたいニウドの背後に森村がポジションを取ってそこへ1つ奥へのパスを通すことでチャンスを作ったシーンです。これが1つのヒントだと思います。

攻守において1つずつポイントを挙げてみました。スタメン発表から両チームの狙いが感じ取れると思いますのでぜひそこから注目してこの薩長ダービーを楽しみましょう!


*文中敬称略

*データは以下のサイトのものを参考にしています。
 Football-LAB (http://www.football-lab.jp/kyot/preview/)
 Soccer D.B.(https://soccer-db.net)
 J.League Data Site (https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
 transfermarket(https://www.transfermarkt.com)

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