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飛躍のための足固め 〜J2リーグ第7節 レノファ山口FC vs 徳島ヴォルティス 振り返り〜

2019年J2リーグ第7節レノファ山口FC vs 徳島ヴォルティスの試合は,1-2で徳島ヴォルティスの勝利となりました。今回はその試合の振り返りです。

前回の試合の振り返りはこちらです。



1.小野原の存在によって構築されそうな右サイドの新たな関係性


この試合の唯一の得点は,小野原のクロスをパウロが合わせるという形でしたが,小野原がこの試合披露したパフォーマンスは,大きな収穫となったと思います。

持ち味のボール奪取の部分はもちろん,得点に絡むプレーも見せ,攻撃面でも印象的なパフォーマンスを披露しました。

その中で,私の最も印象に残ったポイントは,パウロとのコンビネーションです。特に,パウロの動きを見ながら,チームにとって必要なプレーができる点が印象に残りました。

この試合のパウロは,これまでの試合よりもポジションを崩してでボールに絡む機会が多かったように思いました。そのことは,試合後のコメントでも触れられています。


-田中パウロ淳一選手は中に絞る動きが多かった。どういう指示があったのか?
 外で1対1で生きる場面もあるし、ああやって中に入ってゴール前に飛び出していくシーンもあるし、今、サイドアタッカーは僕はウイングではないと言っているので、サイドアタッカーが真ん中に入ったり、外を引き上げていく。そのバリエーションを増やしている最中なので、非常に身体の切れもいいし、今日は点も取ってくれたし、これにアシストが付けば最高だったのですが、ちょっとずつ成長しているなと思います。


パウロの,中に移動してボールを引き出すプレーは,まだまだこれからの部分があると思いましたが,それを可能にしたのは小野原の存在だったと思いました。

というのも,パウロが中にポジションを取ると,右サイドにいるべき選手がいなくなってしまい,中が渋滞してしまう可能性があります。

小野原は,そのバランスをうまく取るようなプレーを何度か見せていました。

山口の得点は,まさにその形で生まれました。

44分15秒ぐらいからですが,パウロが中でボールを受けた瞬間に,小野原が右サイドに向かって走り出していることがわかります。その瞬間にボールは出ませんでしたが,結果的には,右サイドに流れて待っていた小野原に,三幸からロングボールが出て,そこからのクロスを,左サイドの大外で待っていたパウロが合わせてのゴールでした。

ちなみに,小野原に変わって池上が入った後,パウロが中に入ってくることは減りました。

中に入ってくる徳島のサイドハーフ対策で,スタメン起用されたと思われる小野原ですが,パウロを生かすという役目も担っていたように感じます。

今後,パウロが右サイド,小野原が右のインサイドハーフで出場する時には,右サイドバックの前貴之とともに小野原にはチームのバランスをうまく取るようなポジション取りやプレーが求められるのだろうと感じました。



2.シーズンの6分の1を消化して見えてきたもの


開幕してから7試合を消化し,シーズンの6分の1が終了しました。ここまでは,霜田体制1年目の昨シーズンとは,大きく異なる結果となってしまっています。

ただ,内容は決して悪くなく,先程書いた小野原のプレーのように試合の中で収穫も多くあります。

では,今年のレノファ山口というチームは,現状どのような段階を過ごしていると言えるのでしょうか。

私が至った1つの答えは,「長いシーズンを戦う上でのベースを整えている段階」です。

そのように考えている理由を,次の表を使ってお話ししたいと思います。

*緑が見づらいかもしれません…すみません…

これは,2018シーズンの開幕7試合と2019シーズンの開幕7試合でスタメン出場した選手たちを,出場試合数に応じて分けたものです。文字の色で大雑把ではありますがポジションも分けました(黒:GK,緑:DF,赤:MF,青:FW)。

この表からまず言えることは,2018年の方がメンバーが固定されているということです。
2018年は,GKを除いた10個のポジションのうち7個は固定されています。特に,2018年前半の山口の代名詞であった「3トップ」の並びは圧巻です。選手が固定されていないポジションは,4-3-3のCB1枚左サイドバックインサイドハーフの右だけだったことが読み取れます。

一方で,2019年は全試合スタメンで出場した選手が3人しかいません。特に,3トップが固定できていないことが,2018年と比較することでより際立っています。また,CBもドストンが代表に行っていたことを考慮しても,昨年ほど絶対的な選手がいるとは言えない状況が,示唆されます。

こうやってみていくと,2018年シーズンと2019年シーズンの違いがよくわかります。

昨年は,前線に1人で得点を生み出すことができるオナイウ小野瀬がいました。この2人がいることで,チームとしての最適解を探りながらも,困ったら彼らにボールを預ければ,勝ち点を拾えるという構図ができていたのだと思います。だからこそ,他のメンバーも固定することができ,その最適解が早くに見つかり,チームとしての戦い方が確立されていったのだと思います。

今年は,開幕前から怪我人が出たり,昨年から大きくメンバーも変わったりしました。ただ何と言っても,1人でなんとかしてくれるオナイウや小野瀬のような選手がいないこと,これが大きいと感じています。実績十分で加入した工藤も,周りに使われることで最も輝くタイプだと思います。

つまり,今年の山口は,よりグループとしてチームとして戦う必要があるのです。「それぞれの選手が,1番輝くためには,どのような組み合わせにしたら良いのか」ということが何よりも重要なのです。

また,様々なチームに対して,グループで戦いを挑むわけですから,戦い方のバリエーションは多いに越したことはありません。そこで重要なことは,より多くの選手が試合に関わること,選手層だと思います。誰がどんな場面だったら起用できるのか、またできないのかといったことを見極めることが必要になります。

これを見つける作業は,そんなに簡単にできることではありません。(私の応援するフロンターレも苦労しています。。。)どうしたって時間がかかります。

ですから,私は,現状の山口を「長いシーズンを戦う上でのベースを整えている段階」だと考えているのです。

昨年と異なり,結果については大きな代償を払ってしまっているかもしれませんが,ベースを整える作業もかなり進んできていると思います。

CBはドストンが軸になれそうな状態であり,ここ数試合で菊池流帆という男も計算できるようになってきました。いざとなれば,坪井さんだってまだまだやれることを証明してくれました。楠本も虎視眈々とスタメン奪取を狙っているはずです。

中盤も不動の三幸佐々木に加え,吉濱がいて,この試合で結果を残した小野原も今後計算できそうです。そして何と言っても「俺たちのジョージ」(池上)が帰ってきました。これは大きいです。

前線についても,工藤は怪我もそろそろ癒えてここからコンディションを上げてくれるでしょう。右のパウロもサイドバックのや中盤の小野原との連携が徐々に良くなっている兆しが見えていると思います。高木大輔もこのまま負けているはずはないでしょう。あとは,左です。高井なのか山下なのかそれとも他の選手なのか,ここがまだ見えてきていないように感じています。


ここに書いていない選手も当然重要になってくるわけですが,怪我人の復帰ルーキーの台頭によって,チームとしてのベースはこの7試合で着実にアップしています。それが固まるまでもう少し我慢する必要があるかもしれませんが,反撃の体制は整いつつあることは間違いありません。

その日が1試合でも早く来ることを願って,次節の長崎戦を待ちたいと思います。



最後までお読みいただきありがとうございました。

*文中敬称略

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