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とある透析患者の運動事情

※画像はイメージです。

腎臓病患者、透析患者といえば以前は「激しい運動は控えて、静かにしてください」といわれていたものですが、昨今の腎臓病界隈はちょっと変わってきています。

とはいえ、すべての人がこれからお話する内容に当てはまるわけではありませんし、あくまで個人的な体験なのでご了承ください。

腎臓病発症前の運動

もともと運動は好きではなく家に籠りがちでしたが、それでも5、6年ほど前(腎臓病が発覚する前)は自宅がOBPや大阪城公園に近かったこともあり、距離にして短いときで1km、長くても5km強といったところでしたが、ほぼ毎晩のように走ったりしていた時期もありました。ただ冬になると寒暖差が激しく、喘息や左膝の古傷が痛みまともに走れなくなり挫折。そのままとなっていました。

本人はまったく無自覚に過ごしていましたが、このとき既にIgA腎症自体は発症していたようです。

腎不全発覚〜保存期の頃

2015年の夏頃でしょうか、事務所のトイレで烏龍茶のような血尿が出て驚きましたが「ただ疲れてるんだろうな」といった感じで軽く考えてました。当時好きだったアーティストのライブを観に行ったりもしたんですが、2時間程度のライブで吐きそうなぐらい疲れたことを覚えています。ちょっと運動するだけでも筋痙攣がひどい状態で、ライブを観たあとは歩くのもままならないこともありました。

そして毎年秋、京都の伏見稲荷大社へお参りに行くのですが、山頂に登るのが前年までと違って異常に疲れる、とてもじゃないけどまともに歩けない、そんな状態になっていました。

この頃には腎臓病がかなり悪化しており、この後の検査で末期の腎不全と発覚するわけですが、当時はまったくそんな意識もなく、自身の不勉強さに呆れるばかりです。

IgA腎症からの腎不全と診断(ステージ5)されてからは、激しい運動を控え、タンパク制限も厳しく、500mも歩けば息切れしてしまうのでそもそも運動どころではありません。

そして2016年の年末に向けて病状は悪化していくわけですが、ソファーで横になっているだけで筋痙攣、最後には100m歩くのに5分はかかるといったようなひどいありさまでした。

運動するとかしないとか以前に、これでは生活がままならないといった状態ですね。

透析導入〜短時間透析の頃

年が明けて2017年、年始早々に透析導入のための入院となったわけですが、はじめての透析(3時間)で、それまでとは明らかに体調が異なることを実感。その後は先生に相談をし、病室内での軽い運動(スクワットや腕の上げ下げ、伸びなど)を取り入れながらしばらく入院し維持透析へと移りました。

移行後のクリニックでは運動療法などにはあまり積極的ではなく、できれば避けてほしいといったニュアンスでしたが、個人的にいろいろ調べる限り、予後の状態は何もしないでいるより軽い運動をするほうが明らかに向上しているとあったので、無理のない範囲で運動(透析後の帰宅時に20分ほど、普段も買い物や散歩など)をするように心がけました。

※このあたりは自身の体調だけでなく、できれば主治医には相談してください。あまりいい顔されないかもしれませんが。。。

当時のDWは80kg弱で透析時の増えは中1日で0〜1kg未満と非常に優秀ではありましたが、あまりしっかり食べていなかったような気がします。そのせいか、やはり体力は落ち、筋力も低下。結局透析開始から1年ちょっとで10kg近く痩せてしまいました。

透析後の血液検査の状態も思ったようには改善されない、また倦怠感や頭痛なども酷く、ますます体力も落ち、さらにシャントの件もあり転院を決意することになります。

長時間透析導入

導入当初は4時間、1週間ごとに30分づつ延長し最終的に6時間まで伸ばしたんですが、これが驚くほど効果的でした。何より身体が軽い。頭痛も軽くなり頭もスッキリする。もっと早くに長時間透析を導入したほうがよかったと後悔するぐらいでした。

ただ、先の病院で食事制限や運動制限など苦労をしたおかげで、長時間になっても暴飲暴食をしない習慣ができていたのは結果としていいことだったと思います。

いきなり長時間透析(6〜8時間)で透析を始めてしまうと、かなりの確率で暴飲暴食、ようは間違った意味で「しっかり食べる」を実行してしまう方が多いそうです。短時間の方に比べると除水も食事制限も楽ですからね。

そしてどんどん良くなっていく体調にあわせて、もっと運動をしてみたいと思うようになり、室内プールとトレーニング施設へ通うように。なぜそう思うようになったのか、自分でもよくわかりません。

始めたばかりの頃は筋肉痛が酷かったり、泳ぐ以前に浮かばないといったこともありましたが、1ヶ月も通えば慣れてくるもので、筋肉痛も減り、なんとか25mは立たずに泳ぎきれるように。

そして25m毎に休んでいたのが50m毎になり、途中何度か休憩は挟むものの200mを3〜5本程度泳いで帰るぐらいの体力はついてきました。

目標とするトライアスロン

ここまでくるとただ運動することを目的とするより、何か大きな目標があって運動をしたいな、と思うようになりました。たまたま同世代の知人からトライアスロンにチャレンジしているといった話を聞いたり、周りにジョギング、トライアスロン、バイクにチャレンジしている同世代、先輩が多いことから自然と自分の目標もトライアスロンへ。

とはいうものの、まだまだクロールではまったく泳げないし、左膝は古傷や加齢の影響もあって軟骨がかなりする減っている状態。肝心のバイクも手元にない。なので本番への参加はすぐに、とはいきませんが、目標として50歳までに短距離のレース(ショートやスプリントなど)に出たいと考えています。
それまでに機会を作って10kmやハーフなどの市民マラソンにも挑戦してみたいですね。これは膝との相談になりますが。。

そもそも腎臓病患者や透析患者の運動はいいのか?

これは医師によって見解は異なるので患者としてあまり深く突っ込めるものではありませんが、ただ「運動を控えて良くなるといったデータも乏しく、逆に運動したからといって悪くなるといったデータもない。であれば積極的に運動するほうがいいんじゃないか?」といった考え方に基づいて適度な運動を勧める先生はおられます。

運動療法を積極的に取り入れないのは、これまでの習慣や患者さんの年齢、体調などもあるとは思いますが、リスクを避けたいというところも大きいと思います。

最近では透析患者の運動療法はメジャーなものですし、腎臓リハビリといった言葉も聞かれるようになりました。以前とは異なり「腎臓病患者はじっと安静にしなくてはいけない」というものも過去のものになりつつあります。特に透析クリニックで透析中にペダル漕ぎ運動などを勧めているところは増えているようですね。
https://www.sankei.com/life/news/180109/lif1801090024-n1.html
https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/career/upskilling/398/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/7/105_1296/_pdf

また最近ではフレイル(虚弱)を防ぐためにも適度な運動が必要とも言われています。
https://dialysis.medipress.jp/doctor_qas/18

私も水泳をはじめて1ヶ月ほどで血圧が10ほど下がり、最高血圧が150〜170台の間だったものが130〜140台、時には120台といったこともあります。中性脂肪も以前は200近くあったものが現在は77と非常に良い数値になりました。

私のようにトライアスロンなどはかなり極端だと思いますが、自分がチャレンジしてみたいと思う意識は必要だと思います。

透析というとやはり絶望感や焦燥感に襲われてしまいがちですが、しっかり透析、しっかり食事をすることでなんの問題もなくしっかり運動ができるようになります。

そのためには腎臓病や透析、自身の体についてよく理解することが大事で、先生にいわれたままを受け止めるだけではなく、自分から積極的に質問してみることも重要です。それでなかなか受け入れてもらえない先生であれば、セカンドオピニオンとして他の先生から意見をもらったり、極端ですが転院してもいいと思います。いちばん大事なのは患者さんのQOL向上です。

もちろん諸般の事情によりなかなか転院できない方もおられると思います。そういった方はまずいきなり激しい運動はせず、まずは軽いウォーキングや室内でのストレッチ、ヨガ、ピラティスなどから。そして血液検査の結果やDWなどを毎回確認しながら徐々に切り替えて、事後報告でもいいと思います。運動を始めることであきらかに数値が改善しているのであれば、それは確実に運動の影響ですからね。

あとは、日常生活においてタンパク質は良質の物(有機リン)をしっかり取るように心がけておけば、かなり改善されていくと思います。毎日の生活の中で良質なタンパク質を摂取していれば、特にプロテインのサプリなどを取る必要はないと思います。

リンについてはこちらの記事にも記載しています。
https://note.mu/hkb_life/n/nd5415dbb6dfc

またMediPressさんのこちらの記事も大変参考になります。
https://dialysis.medipress.jp/doctor_qas/23
https://dialysis.medipress.jp/doctor_qas/10
https://dialysis.medipress.jp/doctor_qas/21
https://dialysis.medipress.jp/doctor_qas/14
https://dialysis.medipress.jp/doctor_qas/36

最後に

透析は人生の終わりではありません。

人によっては憐れむような目線や言葉をかけてくる方もおられるとは思いますが、そんなことをにする必要ありません。
確かに腎移植でもしない限り、生涯に渡って続けなくてはいけないものではありますが、捉え方によっては新たなチャレンジをするタイミングでもあるといえます。

私自身、透析はしていますが、おかげで健康に目覚め、血液検査の数値はおそらく同世代の一般的なサラリーマンより(クレアチニンなど透析患者特有の数値を除けば)はるかに健康的な数値だといえます。何よりトライアスロンにチャレンジしたいなんて、普通は思いませんからね。

まだまだ透析患者に対する運動療法、積極的というにはちょっと遠い気もしますが、まずはできる範囲で軽い運動からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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中の人はIgA腎症から2017/01より人工透析になりました。11月からオーバーナイト透析になります。このnoteでは少し緩めの減塩生活(透析食)について掲載したいと思います。