ゆるし

ガラスの割れる音を聴いた気がする

のさばっている幸せ

わたしの目覚め


無限に跳ね続けたピンポン球が貫く

ゴミ箱の中の確かな夢


かけなかったこと、かくのをためらったこと

その全てを殺してわたしはわたしを書いている


放浪の旅でもらった記憶

全部井戸にかくしてしまおう

忘却にともなうその責任


失われた命の中に家族を見る

怒号の中で回り回る経済資本


どぅぅぅうんと夜明け、あなたを待っている

われわれはもそこにいた、許されることもなく


痛みが愛しくそして惜しく

自由になりたいがゆえ

わたしは描きました

一度カモメをみた、蠢く悪霊たちの戦場で


人権携え牛歩の救い、それは

蠱惑ですね 蠱惑ですね 蠱惑ですねと

助詞を無くした彼女ら笑う


流行病に経済的責任を押し付けて

わたしは海をわたらなかった


根掘り葉掘りと緑を求めて

不幸な顔してベンチに座って


かつて森だった食卓

見つめて笑う

生きていたいと


死ぬ気を無くしたわたしはただただ独りで

それがどうしようもなく嬉しかった


他者の顔をわたしは踏みつけていた

体を明け渡すことは暴虐的な試みで


朗々とした声に少し憧れて

どうしても低い声で喋りたかった


わたしはおそれおののきあなたを手にした

どこにでもわたしはドミソシを挟んで

雨の中でもかけていける気がした。


死に物狂いで学んだ言葉で溺れてしまう

ここでわたしはわたしを殺す


コップに祈りを。死人に喫茶去。

そんな日にわたしはきっと恋をしている


忘れないことは貢献であり

引きちぎられたわたしを

わたしは拾い集めている


生まれたことを置き去りにして

蛾のぱたぱたという音だけが物悲しくて


君を思うと殺人の不可能性について考えます

夢から覚めたのは幸福で


財布の中に鎮座する

入り混じった線のその名残


指をつたわせたんですが

あなたはどこにもいませんでした


でも不思議で

胸の中のなか

煌々とあの痛みが瞬いている


非凡になりたいとは思うんです

違う訛りではなすみたいに


持ち主を忘れたぬいぐるみ

飼い殺しの犬を見つめてわらっていたんです


ここでは誰もが殺されていくから

バスタブの中

わたしはさよならをまぜ入れました


化石になった言葉と

何も知らない子供をつれて

検閲官と対峙するんです


濡れたタオル

道標とも

凶器ともなる


愛することは諦めに似て

ただ赤子みたいに笑うしかないんです


それは死の終わりの瞬間で

アラバマからわたしはやってきたんです

独裁者に殺されるため


炊飯器スイッチ入れたわたしの不安

埋葬したあのかんじ

養分となって

新しい言葉が育てばいいと


色褪せた表現を手紙にしたためて

全部をもやしてしまおう


それは着地点のない思考であって

その意味すら間違いでした


ストーブつけてから

かもめはどうしようもなくうるさく

トークショーを繰り広げている


差別しようにもあなたたちには顔がない

殺したければ殺せばいい


わたしは言葉を探しています

エティモロジーが役に立たないこの世界で


わからなかった

涙がどこから流れてくるか


でもどうしてか

こころが痛むのです


また水辺で

いつか手を取りあいましょう

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