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香高堂 地中海北縁の旅と生活 第2章の⑤

第2章<2016年真夏の南仏マルセイユ観光記>
2-5 《また旅猫GRIS、今度は南仏マルセイユに暮らすのよ》

 皆さん、こんにちは、あれ?こんばんは?かしら。南国生まれのグリ(GRIS)と呼ばれていますが、弟に黒猫の<NOIR>がいたので、フランス語では灰色を意味する<GRIS>と名付けられたみたい。私は1999年生まれ、マレーシアのゴルフ場で拾われて4年半の間に東京を数度往復したわ。その後は何とアフリカまで行き、セネガルのダカールで3年暮らし。狭いマンションだけど、やっと東京暮らしに慣れたと思ったら、2013年に東欧のサラエボまで来てしまったわ。ここは階段も多く、年寄りには辛かったけど、結構足腰は丈夫になったみたい。
 
 どうやら私は2016年8月28日から南フランスのマルセイユで生活することになったみたい。フランスはペットを大事にしてくれるから、今度はドライブにも連れて行ってくれるかもね。もしかして人間が汚れ始めた日本より「南仏プロヴァンスに死す」ということもいいのかもしれないわ。そうそう、私も17歳を過ぎて、人間ならば90歳を超えているから、まあ、温かい心のふるさとに帰るようなものね。

 プロヴァンス地方の冬は季節風のミストラルが吹き、風が強いみたいだけど暖かく、私にとっては栄養となる陽光の差し込む明るい土地と聞いたわ。環境は良いみたいでひと安心。マルセイユの治安は以前に比べてだいぶ良くなったみたいで、エクサンプロヴァンスやアヴィニョン、アルル、ニームまで近いし、ニース、カンヌまで2時間みたい。

 7月2日から夏休みと称して二人で2週間もいなくなったから、どうしたのかしらと思ったら、私のために?マルセイユでアパートメント探しをしていたみたい。<第一主人の家のカミサマ>はどうやら最後の赴任地になるようで、フランス語圏を希望していたから念願が叶ったみたい。この前も電話でフランス語を話していたみたい。でも、サラエボでは通信と広報を兼務して多忙で、上司にも恵まれていなかったようで仕事は大変だったみたい。

 その代わり<第2主人の香高堂>は昼間お相手をしてくれたけど、時折ふらりといなくなるのよ。肝臓がんや後背部の瘤も出来て治療に日本に戻っていたようなのね。テレビやインターネットの故障、不揃いの家具など住宅問題もあったみたいだけど、私が寂しくて壁に向かって吠え始めると「壁に何かいるのか? 悪魔の気配でもするのか?」などと頓珍漢なことを言っていたわ。
 
 夏のサラエボは空気が乾燥し、緑の壁に囲まれて庭のデッキに座らせられ、青空を見ていると本当に気持ちが良かったわ。でも冬はスモッグに覆いつくされ、身体を蝕むのではないかと心配してじっとお布団の中でお休み。どんな場所にも良いところと悪いところがあるけど、相性というものもあるみたい。人間って大変な生き物だとつくづく思うわ。

 常に自分の知恵や智恵を広げていかないと、狭い価値観の中でしか思考や判断が出来なくなるようね。淡々とやり過ごせたらどんなに良いかと思うのですが。私も5か国目、まだまだ頑張って、引っ越し騒動記や最後のサラエボの夏を伝えていくように香高堂父に伝えておくわ。

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