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「どんどんやってみればいいべ」~取材レポートvol.7-2 志比内地区の若手農家 齊藤峻顯さん~

 こんにちは。地域おこし協力隊ののぞえです。
 前回記事に引き続き、東神楽町の東端に位置する「志比内地区」で農家をやられている、齊藤峻顯(としき)さんへのインタビューの模様をお届けします。前編では生まれ育った故郷から海外に飛び立つまでの話を伺いました。後編では、ご自身と東神楽町の「いま」「これから」についてお話をしていただきました。

 (前編はこちら↓)


新しい変化

(話はぐっと志比内地区に移りますが、ずっとこの地区を見続けてきて、変化を感じるところはありますか。)

 そうですね。 僕が小学生の頃は、ガソリンスタンドもあって、交番も警察官がいて、ガソリンスタンドの真向かいには農協があって買いものもできたんですよ、アイスとか売っていた記憶があって。
 そのときから比べたらちょっと寂しくなったなって思いますね。
 でも公民館が新しくなったりとか、 今、国営事業で田んぼも区画整理して大きくなったりとか、エア・ウォーターさん(※)が来られたりとかして、
それもまた今の変わり方なのかな、と思いますね。

志比内地区の公民館。インタビュー時には子どもたちがのびのびと過ごしていました。
エア・ウォーター北海道株式会社

※エア・ウォーター:産業ガス大手の会社。陸上養殖事業に参入し、志比内地区にニジマスを養殖する施設「杜(もり)のサーモンプラント・東神楽」を2023年に建設しました。


 僕は農家をやっていて思うのは、結構人が好きというか、1人よりも人といる方が好きなんです。だからこそ、農家で同じ世代の人がいないのはちょっと寂しいなっていうのは正直感じますね。(東神楽町の)中央地区(町役場がある、人口の多い地区)の方に行ったら、同世代の人はたくさんいるので、「いいな」とはちょっと思います。いつか一緒に働く方を自分で迎えられるようになりたいなと思ってますね。そのためにいろいろ試行錯誤してやってます。

「やってみればいいべ」

(頂いた名刺に「販売担当」とあります。どういったことをされているのですか?)

 今年は東京のレストランや札幌の結婚式場、三重県のホテルが商品を買ってくださっています。自分の商品がどこでどういうふうに出されているのかがすごくわかるので本当にやりがいを感じます。これ、家族に言っても「へー」「ふーん」って言われるんですけどね(笑)。僕が料理人として現場を見ていたから、感じるのかな。 例えば結婚式って新郎新婦のお二人にとって特別な席じゃないですか。自分の作ったものがそういう特別な場に出るお料理になることを思うと嬉しいな、って思いますね。

 それこそ、トウモロコシ(齊藤さんが手がけた冷凍トウモロコシ。詳しくは前編へ)も、自分が通っていた志比内小学校の給食に出たときに、子供たちのリアクションを教えてくれて、そういうのもすごく嬉しいですね。みんなが喜んでくれているっていうのが分かって。

齊藤さんが手がけた冷凍トウモロコシ

(リアクションが返ってくる、というのはうれしいですよね。今まで繋がりをつくってきた札幌や三重に、ご自身の商品を出しているのですね )

 そうですね。でももっと、本当に営業してみようとは思っているのですが、例えば冷凍トウモロコシは技術的にパックがまだたくさん作れなくて・・
 あとは、それが農業のかたちとして正しいのかとか、経営にあたってどういう形がいいのかなとか、いろいろと考えるときもあります。周りがやってないからこそ自問自答しながら。
 そんな中でも、「そんなんやってみればいいべ」「どんどんやれ」と言ってくれる方たちが、農家の先輩方をはじめ東神楽にはいらっしゃるので、そういう方々にいつも背中を押してくださってますね。

こうなったらいいな、東神楽

(今の東神楽町をみて、こうなったらいいなと思うことはありますか?)

 お隣の東川町には日本語学校があって、外国人の方がたくさんいるけど、でも、東神楽にはいない。ちょっと遊びに来てもらえる場所があったり、場所じゃなくても、わかりやすく東神楽にはこういうものがあるんだって教えてあげられたりするものがあるといいのかなと。(接点を持つことで)東神楽でお仕事をしたいと思ってくれる人がいるかもしれないし、そんな風に接点があればなにかに繋がっていくんじゃないかなと思ってます。
 また、出身の志比内小学校は児童数がとても少ないのが特徴ですが、そこから進学で東神楽中学校(町内唯一の中学校)に行くと、ギャップが大きいんですよね。人数が全然違うし・・そういったギャップに馴染めない子が自分の身近にもいたので、そういうところをもうちょっと何かできたらなって思いますね。

志比内小学校。全国各地から集った子供たちが、のびのびと学校生活を送っています。

  あとは、僕は「100人カイギ」(※)に参加して、同じ町内にいながら今まで知らなかった人や活動を知って、コミュニティが新たに広がったなと感じました。それを通して最近僕が思うのは、色んな活動をもっと多くの人に見えるようにしていけたらな、と。
 どんな人がどんな活動を行っているのかというのを、知らない人は多いのではと思うんですよね。役場の仕事や「花のまち」としての活動でもそういう面があると思うのですが、 活動そのものや活動している人たちを、「広げる」というか、紹介してくれたら、活動している側も嬉しいよな、と。

(人や背景にスポットライトを当ててみると、物事の見え方・感じ方も変わっていきますよね。コラボレーションが生まれる可能性もある。)

 そうですね、こういう人たちがこんな思いでやっている、ということを知るだけでも、感じ方が変わるんじゃないかなって思います。

※100人カイギ:地域内で活動している人同士をつなぐコミュニティ活動。毎回5人のゲストに登場いただき、ご自身の活動についてや地域への思いを語っていただきます。「ゲストが100人に達したら解散する」という独自のルールがあることから「100人カイギ」と名付けられています。齊藤さんは「第6回 東神楽町100人カイギ」に登壇されました。



(地域おこし協力隊の活動として、デジタル技術を学んでいるところなのですが、デジタル技術が入ったらもっと良くなるのでは、と思う領域はありますか?お仕事でも生活でも。)

 何かあるとは思うんですよね、こうだったらいいよねっていうのは絶対あるんですけど。デジタル・・。

(「デジタル」という言葉が指す範囲が広すぎて、ピンときにくいですよね。行政の中ではデジタル化・業務効率化が進んでいて、道内から視察に来たりするけれども、町民からは見えづらいよな、と思います。)

 そうですね、僕も町民としてみても「あ、そうなんだ」という感じですね・・。
 ちょっとふと思っただけなんですが、ライブカメラみたいなのが志比内にあったら、嬉しいなって思いました。今ってYouTubeですすきの(札幌の繁華街)の交差点とかどこかの風景が見られるけれど、そういうものがあったらなと。見る人いないかも分からないですけど・・

(「今日の旭岳」みたいなものは見たいかも。)

 いいですね。そういうのがあったら、面白そうだな。旭岳ってみんな紅葉とか見に来られますからね。

いつかの旭岳

 僕は、農家として購入した資材とかが携帯で見られたらいいのに、とは思いますね。そういうシステムがあったら、いつ何を購入したとか見返せるし、いくら使ったかを見られる。内容が分かったら見方も変わるのかなと。もう少しこれを抑えようとか、判断がしやすくなると思いますね。
 あとは、ZOOMとかLINEとかが、農家の仕事、例えば会議や書面のやり取りなどでつかえたらいいと思う場面もありますが、農家は幅広い年代の方がいるので、難しさがあるのかなと。

(最近は、「詳しくはホームページで」「詳細はQRコードを読み取って」などと書いてあることが増えていますが、「いや、それが分からないんですけど」という声があって、そういう出来事を聞くと協力隊として「スマホ相談会」を開催している意義はあるのでは、とは思います。)

 そうですね。自分の祖父が、「いきなりNHKが英語になった」って言い出して、行ってみたら、ただ音声ボタンを間違って押しただけみたいで。でも近くに(機械などが)分かる人がいなかったら、高齢者の方って大変なのかなって思います。結構お子さんが道外にいらっしゃったり、若い親戚が近くにいなかったりする人が多いので・・。


行動あるべし

(峻顯さんからお話したいことはありますか?)

 頑張っていただきたいなっていうのはすごい思います。応援しています。新しい風を持ってくる人は貴重なことで、本当にいいことしかないと思っていて。もし駄目だったら、戻ってまた違う方向に進んでもいいと思いますし。
 みんなそれぞれ意見があるじゃないですか。批判もあると思います。でも全部聞いていたら大変ですよね。批判するだけで誰かが行動しなかったら何も変わらない。頑張ってやってくれようとしてくれる人がいるだけでも感謝だよなと思います。

(ありがとうございます。心強いです。 )

オーストラリアにて

 本当にどんどん、人の目を気にしないでやってほしいなと思います。僕も気にしないでやっているので。僕も来年は冷凍カボチャを給食で皆さんに届けるために頑張ろうと思います。

(峻顯さんのフロンティア精神に刺激をうけました。今日はお時間をいただきまして本当にありがとうございました!)


取材を終えて

 周りの方々の後押しを受けながら、自らの足で新しい世界へ踏み出し、視野を広げてきた齊藤さん。悪い意味での無鉄砲な行動をしているわけではなく、悩み・葛藤を抱えながらも挑戦を続ける姿に感銘を受けました。
 自然の中でのびのびと学び、子供たちそれぞれの良さを伸ばす「山村留学校・志比内小学校」に代表されるように、志比内地区には挑戦を後押しする風土が宿っているのかもしれません。

 次なる目標に向かって歩みを止めない齊藤さん。私たちも「やってみればいいべ」精神を持って、一歩一歩踏み出していきたい、そう感じたインタビューでした。


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