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番外:ラグビーの「面白さ」をわかってもらうにはルール解説より戦術解説が必要では?

 ここんとこ、ラグビーの戦術についていろいろ書いてきましたが、書いているうちに、初心者にラグビーのおもしろさを伝えていくのってどういう方法があるのだろう?と改めて思うようになりました。

ルールは野球の方が難しい

 「ルールが難しい」とはよく言われることで、特に「ブライトンの奇跡」の前の「冬の時代」には、ラグビーファンが増えない口実によく言われたものです。

 ところが、ルールの難しさから言うと野球の方がはるかに難しいです。ラグビーのルールブックも、A4で154ページありますが、その半分は図解やイラストです。一方、公認野球規則はほとんど字で全232ページあり、正味で倍以上あります。

 なので、「ルールが難しい」というのはファンが増えない理由ではないということです。

反則の理解って本当に必要?

 ただ、その「難しいルール」を理解することがファンにとって本当に必要なのか、と思うようになってきました。

 秩父宮で観戦するとわかりますが、試合前にはルール解説の動画が流れてますし、試合中には反則が何だったかのアナウンスがあります(ときどき間違ってますが、それはそれとして)。ただ、説明ってそれだけなんですよね。

 ルールの説明は無駄とは思いませんが、例えば、ノット・リリース・ザ・ボール、ハンド、オーバー・ザ・トップにはそれぞれ○○な違いがあるかとか、スクラムにはアーリーエンゲージとかコラプシングといった反則があるといった知識って、ラグビーという競技そのものを楽しむのに必要なのか?というか、ラグビーをこれから知りたいという人が身につけなければいけない知識なのか?と言うことに疑問があるんです。

 ルールの説明から入ってしまうと、スタティックにしかラグビーを理解できなくなってしまいます。それだけでははっきり言ってつまらない。スポーツとしてのダイナミックな面白さを全く伝えてないと思うんですよね。

 例えば野球のルールを説明するときに、守備妨害とか走塁妨害、あるいはインフィールドフライから説明するなんてことはあり得ません。今の初心者に対するラグビーの教え方(なんかイヤないいかたですけど)って、まさにそういう教え方になっているのではないでしょうか。

どう戦っているのか?というダイナミックな部分を発信すべきでは?

 それよりも、ラグビーで点を取るためにどう戦っているのか、といった戦術というか戦い方の部分をもっと発信していくべきだと思うんです。

 フォワードの縦突進、バックスの横展開、ハイパントといった戦い方があるとか、ダミーを使ってディフェンスを抜くとか、どういう意図があってタッチキックとハイパントとキックパスを使い分けるのかとか、モールってのは何をしたいときに使うものなのかとか、試合そのものの流れがどういう風に展開していくのかといったあたりのことをわかってもらう方が、スポーツとしての面白さが伝わっていくと思うんですよね。

 例えば私は8歳の娘とよく見に行くわけですが、早慶戦を見ているときに、「後ろの空いたところに慶応は蹴ってくることが多いんだよ」と教えていたら、瞬間的に早稲田のキックディフェンスが1枚しかなかったときに、娘が、「空いてる、蹴ってくるかな?」と言ってきました。

 するとその瞬間に早稲田のスタンドオフの吉村がキックディフェンスに入り、ディフェンスライン後方のスペースを埋めました。娘もそれに気づき、「あ!早稲田も走ってきた。速いね、わかってるんだね」と言いました。

 吉村がそこでボールをキャッチし、蹴り返して自分で確保、トライにつなげたプレーです。

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 天理と早稲田の決勝戦でも、「天理は10番が少し離れてボールを受けて、左の3人にパスするんだけど、早稲田がそれを全然止められてない」と何回か話していたら、そのうちにわかるようになって「また止められないね」と言うようになりました。

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 ポイント押さえて簡潔に教えると、子供でもそんな風に先の展開をわかるようになるんです。こういうことの方が、ラグビーを面白いと感じるためには、細かい反則を知るよりも大事なことなのではないでしょうか。

ルール解説だけでなく戦術解説を

 このあたり、テレビ中継もいまいちなんですよね。少なくとも、何の説明もなしに解説者が「バックドア」とか言うのはやめた方がいいと思います。

 試合中には細かな話はできないと思うので、せめてハーフタイムに、特徴的な戦い方を説明するくらいのことは必要ではないかと思います。スタジアムでも、試合開始前に、ルール説明だけでなく戦術解説をするようなことがあっていいのではないでしょうか。ルールの理解は、戦い方がわかるようになってからでもいいと思います。