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遅れてきたバースデーサプライズ

気が置けない仲間というのは、時に何をしでかすのか分からない。
しかも普段からアホほど忙しくしている人ほど、くだらない事に知恵と労力をかけることを厭わないのだ。

三日間の東京出張から金沢に戻り、東京から金沢に来ていた部下の蟹沢と片町で2時過ぎまで飲みながら仕事の話をしていた。
そして翌朝も早くから会議の予定をしていたのだが、今週は出張続きで疲れていたせいなのか、珍しく寝坊をしてしまった。

お昼をはさんで午後から銭屋の高蟹さんが会議に参加する予定だったので、オフィスで待っていたところメッセンジャーに、

「そろそろ到着します」

というメッセージが届き、暫くしてエレベーターが開く音がしたので入り口の方を見ていると、カメラを持った山森が入ってきた。
そしてその後ろから肩に大きな白い箱を抱えた高蟹さんが

「お届け物です」

と言いながらニタニタしていた。
「なんですか?これ」と尋ねると、いいから開けろと。
発泡スチロールの大きな箱は、どう考えても鮮魚用の箱だった。
このまえの私の誕生日のお祝いに大量の車海老が入った同様の箱が届いたので、記憶に新しい光景だった。


蓋を開けると、そこには見事なズワイ蟹が入ってた。
この時期なのに。
蟹を見た瞬間に「あ、これは孫蟹蔵さんからだ!」と、ピンときた。


その理由は、二年前の九月、シリコンバレーの怪人として有名な、蟹村さんのバースデーに日本からシリコンバレーに極上蟹を贈り届けるという壮大なミッションに立ち会っていたからである。
その際の手配を経験しているので、それがどれほど大変な事であるのかは痛いほど理解している。
https://www.facebook.com/hhokamura/posts/10153109624768837

蟹と一緒に届いた謎の小袋には、カニタンがプロデュースした、とんでもないモノが仕込まれていた。
左胸の、通常であればワニか馬がいる場所に、それは見事な5色もの糸を紡いでデザインされた蟹が刺繍されたポロシャツだった。


しかもそれは某有名海外ブランドのデザイナーがデザインしたものだという。おまけにタグまでオリジナルという凝りようだ。


なにをしているのだ。
そして送り主達の指示で、蟹の被り物をつけて写真を撮れということらしく、部下の蟹沢が紙袋から帽子と蟹爪型ミトンを出してきた。
いったいどこに隠し持っていたのか。
この時点で私の心は、感謝を通り越してこれまで味わったことの無い謎の気持ちになっていた。

これは単にモノを頂いたというよりも、普段からアホみたいに忙しい皆さんがこれを企画して実行するまでの貴重な時間を頂いたということに他ならない。この蟹なんかこの大きさになるまで10年はかかっているだろう。
その時間も含めてありがたく食べさせて頂いた。

ここまでして頂いたからには「八日目の蝉」にインスパイアされたストーリーで「五月の蟹」を書いて映画化を目論み、皆さんに出演して頂き恩返しをしたいと思います。

ありがとうございました。

平成29年5月13日
蟹クラブ主宰
宮田人司

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