漫画家による個人出版① マンガ図書館Z編


 マンガ図書館Zは、厳密には個人出版ではないかもしれませんが、手持ちの作品がある人にはとても入りやすい、素晴らしいサイトです。
もっとも負担なく参加できるので、まず何かやってみたい、という方には本当におすすめします。
読者としても作者としてもいいことばかりのシステムなので、個人的にもっともっとこのサイトが有名になることを願っています。

マンガ図書館Zとは
 漫画家の赤松健さんが立ち上げたサイトが元となっており、現在は赤松さんも取締役会長として関わっていらっしゃるJコミックテラスの運営です。
 元々は赤松さんの「廃刊になってもう読めない漫画を読みたい!」というお気持ちからスタートしたと聞いています。
その辺りのことはサイトを辿っていけば説明があると思いますので、こちらではシステムのことを書かせて頂きます。
 マンガ図書館Zでは、会員登録なしでどなたでも配信中の漫画作品、最近では文章作品も加わり、それらを合法的に読むことができます。pdfデータとしても購入できます。
ただし成人向けだけは制限があり、こちらは有料会員になれば読むことができます。 
 投稿作品については、私は現在のところ参加していないので、詳細はサイトをご覧ください。
 そして、何より画期的なのは、マンガ図書館Zでは無料で読める代わりに、広告料を発生させ、会社の経費を差し引いた全額を漫画家に還元してくれるということです。
 実は、私が参加したあたりから、この広告料ががっくりと下がったようです。
原因はあるようですが、それはまた別の方にお任せします。
私などは広告料にそれほど期待を寄せていたわけではありませんし、あまり気にしていません。
 ただ、広告料が下がったことを理由に「もう作品を置く意味がない」などというつぶやきを見ると悲しくなりますね。
まさに、お金を稼ぎたいなら普通に個人出版にチャレンジすべきだと思います。
マンガ図書館Zは稼ぐ場所ではなく、時間の流れの中で沈んでしまった作品を多くの方に読んで頂くチャンスであり、そこで名前を、作品を覚えて頂くことこそが、最大のメリットなのです。
私も、15年以上前の作品がこんなに多くの方に読んで頂けるんだと、本当に励みになっています。

 というわけで、こちらでは商業漫画家として、マンガ図書館Zから配信することについて書いていきます。
 

マンガ図書館Zへ問い合わせよう

 こちらはプロアマ問わず、作品を投稿することができます。
プロの方は、先ずはサイトから運営さんへ問い合わせましょう。
商業誌に掲載経験がある方は、まずプロ扱いだと思います。
 プロ漫画家は「Zオフィシャル作家」として契約を結ぶことになります。
(プロの方で一般として投稿されている方もいらっしゃるので、そこは選べると思います)
 スタッフさんはとても親切なので、不安なことがあれば相談されると良いと思います。 
全てメールでOKです。
 また、プロの方がZオフィシャル作家として新作を投稿したい場合は、いきなり自分で投稿するのではなく、スタッフさんと相談しながら進められると良いと思います。 
そうすれば便宜が図られるのか?はちょっとわかりませんが、応援してくださる体制なんだと思います。
 私も新作を予定しており、1話分だけ数ヶ月間無料公開のつもりで配信していただけないかとご相談し、快く応諾頂いています。
 ここでは、あなたはZオフィシャル作家として契約したと仮定します。
以降は、その後あなたが用意することになる手順です。

・原稿(データ)を用意する
 契約終了した単行本を配信したいと思っている方は、これを自炊してデータ化するか、生原稿、生データを用意します。
 自分でデータを作ることができない方は、単行本そのものをZさんへ送るか、Zさんの方で古本を入手し、データ化してくれることもあります。
ただ当然時間がかかるので、自分でデータを出す方が早いですし、スタッフさんの負担も軽くすみます。
 これはZさんだけだと思うのですが… 本来、単行本の表紙などのデザインも著作権というものがあるので、そのまま使うのはNGなんです。
ですが、Zさんは特に断りを入れることなく普通に使っていらっしゃるので、これは出版社は文句を言わない体制なのかな…などと勝手に思っています。
知らないだけなのかもしれませんが(^_^;)
もちろん出版社のロゴなどは、Zさんで消してくれます。
 紙原稿しかない方は、自分でスキャンするか、Zさんでもスキャンはして頂けるようです。

・写植(テキスト)を入れる
 ただし写植は入りません。
これはなんとかしてご自分で頑張るか、業者を頼るかして、入れましょう。
 私も「恋するフラメンコ」という単行本に収録されていないエッセイ漫画の時は、作品データにClipStudioPaint EXというソフトで、頑張ってテキストを入れました。慣れていないので、大変でした…
 そして、私はやっていませんが、必ずしも単行本のボリュームで出す必要はないので、人によっては内容を編集したり、分冊版に直したりということはあるようです。
これはご自分の判断だと思います。

 私の場合を書きますと、今のところ一度は単行本の形になったものは、収録作も表紙イラストも同じパッケージで再出版する、と決めています。
過去作をお買い求めになった方と比べて(価格は下げますが)クオリティが下がってはいけないし、混乱を招きたくありません。
 ただし、これまでにお預けした単行本は、そもそも電子化されていなくて絶版状態だったもの。
これは残念ながら販売されても多くの売れ行きは期待できないため、せめて多くの方に読んで頂きたくてZさんへ丸ごとお願いしました。
 今後はきちんと電子化されてはいるタイトルも個人出版していくかもしれない(最新の「獣の年頃(マンガ図書館Z未掲載・出版のみ)」はこのパターン*こちらのタイトルはマンガ図書館Z様での配信を現在のところ見送りましたので、訂正させていただきます。)ので、その時にはまた違う判断になるかもしれません。

後は待つだけ

 マンガ図書館Zでは、私の場合は古本を入手していただくか、特に編集しないで自炊データをそのままお渡しし、クリーンアップして出して頂いているという感じです。
作中の、例えば雑誌の広告などはマンガ図書館Zさんの方で外してくれます。
 PDFデータ販売は、確かZオフィシャル作家の作品だけだったと思いますが、価格は300円プラス税と決まっています。通常の単行本よりお安いのが売りですね。
 実は私が他のストアで個人出版する時も、300円プラス税が基本です。
 私は1冊目の「死ぬほどメロウ」の時ははよくわからなくて、350円プラス税で取次会社を通して出版しました。
 その後何ヶ月か様子を見て、やはり元の定価(400円プラス税 いや、ヤングユーのコミックスはおそらくもっと高いです)では売れない、はっきり言って安ければ安いほど読んでもらえるのが現実だと理解しました。
 なので、その次のタイトルからは300円プラス税に下げました。(Apple booksのみシステム上別価格)
 「定価なら買わないが、無料なら読む」「安ければ買ってもいい」という層があるなら、そこに働きかけようと思いました。
まず作品を読んで頂くための無料公開、再出版と捉えています。

 現在単行本では2冊お願いしてありますが、後から出した「探偵は恋をしない」の方が少し閲覧数の速度が速いかな、と言うくらいで、それほど変わりません。
どちらも女性向けの短編集ですからね。
 最初の1、2ヶ月が過ぎるとがっくり落ち込んでしまいますが、トップページから消えるのも痛いのだと思います。
公式ツイッターで一生懸命紹介して下さっていますし、作品をお持ちなら、頃合いを見計らって新しい作品を入れれば、つられて読んで下さる層がある気がします。

 広告料、データ販売による利益など、報酬は掲載月プラス2ヶ月後から支払われます。
オフィシャル作家となるとサイトに作家専用タブが現れるので、そこで確認できます。
自分のプロフィール、作品のあらすじなどもそこで編集して掲載できます。
先に書いた通り、私はこちらでの報酬に大きな期待は抱いていないのですが、それでも小学館で最低レベルの売り上げの単行本よりはたくさん頂けそうです(汗)
ありがたいことです。


 私は最終的には個人出版をすると決めていたので、こちらで閲覧数の推移など見られたことは、とてもいい経験になりました。
いいねやリツイートを頂いたりの反応は、やはり嬉しかったですね。
この場をお借りして、読んでくださった皆様に感謝したいです。
ありがとうございました。

 そんな訳で、漫画家にとって最も手間がかからず優しいウェブサイト「マンガ図書館Z」
最初に書いたように、もっともっと有名になってふつうに読んで頂きたいので、まずは多くの方にこのサイトを知って頂きたいですね。
個人出版を考えていらっしゃる方も、ハードルの低いこちらから始めてみるのも良いと思います。
 是非一度「マンガ図書館Z」を見に来て頂ければと思います!
 

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