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デジタル新刊の紙書籍版を刷ってみた

*①に追記しました(2020.6.28)

個人出版しているフラメンコ漫画『Arriba! 2nd season』1巻は、電子書籍として7月3日から順次配信をスタートします。
同時に紙書籍も1巻だけは作りたくて、30数年ぶりに同人誌を作りました。
現在BOOTHでの販売を控え、ご予約受付中です。

私が前に同人誌を作ったのは、デビュー前。
もちろん原稿も印刷もアナログで、内容はオリジナルでしたが、いわゆる薄い本です(笑)
現在もたくさんあると思いますが、カラーもついていない本当に素朴な本でした。
今回はデジタルになるなど違いもあり、個人的に隔世の感があったので、何かのニーズがあるかもと思い、経験を書いてみます。

166p(表紙裏表含む カバー除く)
・フルカラーカバー
・表紙(表1のみ)フルカラー
・本文モノクロ

これが基本的な仕様です。
当然ながら、ページが増えるごとに印刷価格も増えるので、ギリギリまでシェイプアップし、漫画部分だけを抜粋したバージョンとしました。
商業版の電子版には、私やアドバイザーの方のエッセイ、コメントなどの書き下ろし部分、私がデザインした他のタイトル含む広告ページなどが、カラーでたくさん差し込まれています。

印刷所は株式会社ポプルスさん。

社長が描いた猫ちゃんの絵も健在ですね(笑)
私がお世話になっていた頃は、猫ちゃんがたくさんいましたが、今はワンちゃんに癒される日々とか。
私がデビュー前から大変お世話になっている会社で、もちろん最後の同人誌もこちらにお願いしています。
空白期間(というには長すぎますが)に、印刷機器をゼロックスのデジタルのシステムに変えたという話は聞いていたのですが、今回身を以てその美しさを体験することになりました。
小ロットだからということもあるでしょうが、正直、出版社から出して頂いている単行本より美しいです。
是非、読者の皆様にもコレクターズアイテムとしてご入手頂きたいですね(>▽<)

ポプルスさんは一度会員登録し、ウェブ上で入稿の相談から入金、入稿などを一括して行うことができるシステムを独自に構築されています。
私も久しぶりの同人誌なので、一度会社へ伺って色々教えていただく予定だったのですが、ちょうど状況が自粛要請期間とぶつかり、諦めました。
しかし、ウェブ上のやりとりや、時にはメールをやりとりして、問題なく本が仕上がりました。

①入稿原稿の体裁
今回の原稿は、カラー350dpi、グレー600dpi、B4サイズ、psdファイルにトンボ付きで書き出し という体裁で入稿しました。
全てウェブサイトに書いてありますが、ファイル名は「001.psd」などのように、数字のみで作ります。
また、電子版では原稿サイズを自分でB6まで縮小して入稿しますが、ポプルスさんではB4のまま受け付けてくれます。
このおかげか、例えばデジタルでは汚くなってしまうトーン化ノイズやグラデーションなどがとても綺麗に印刷され、嬉しかったです。

*追記2020.6.28
モノクロ原稿ですが、薄墨、グレー部分について、私は一つ誤解をしていました。
こちらで網掛け(トーン化)しなければならないと思っていたのですが、グレーのままで大丈夫です。
印刷所の方で細かい網掛け処理をしてくれます。
(なので、ファイルもモノクロではなくグレーで作りました)
一つ注意するのは、印刷所でトーン化するため、原稿にトーン化された部分があればモアレてしまう可能性があるということです。
私の印象では、あまり荒れることなく綺麗に処理してくださっていました。
元々デジタル想定で原稿を作っていらっしゃる方も、ここは懸念なくグレーで原稿作りができるのではないかと思います。

②ファイル名を揃える
私が使っている漫画制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT EX」ではストレートにこのファイル名を作ることができません。
「0_001.psd」のように、最初の0に当たる部分だけは何か設定しないと書き出せないのです。
今回のように166pもあると大変ですが、ここは頑張って手動で書き直して下さい…(^_^;)

③作成アプリのバージョンを確認
また、Photoshopで作る場合も、バージョンを記載する項目があるくらい、ここは大切です。
CLIP STUDIO PAINTを通す場合も同じですが、思った通りにデータが復元できない場合もあるのです。
私の時はデザイナーさん(カラー部分のデザイン担当)がラスタライズしたデータとしていないデータ両方を作ってくれましたが、ラスタライズした方が綺麗に復元できました。

④トンボの位置を確認(原稿テンプレートを揃える)
また、今回はサービスで調整して下さいましたが、トンボの位置も原稿テンプレートにより微妙に違いますので要注意です。
私も初めてのデジタル作画で試行錯誤しながら作ったため、テンプレートが統一されていませんでした。
これからは気をつけます(^_^;)

⑤カバーの体裁
今回カバー、表紙はデザイナーさんにお願いしました。
(デジタルでも同じ方にお願いしています)
まず、商業として販売する本の表紙デザインは、プロにお願いするに限ります。
私の場合は、そもそも商業誌で長年描いてきた漫画家ですので、読者さんも商業誌作家としての私しかご存知ありません。
本の装丁レベルを下げることは初めから考えられず、小学館様にお願いしてタイトルロゴを譲り受けました。
改めて、小学館様、デザイナー様に感謝申し上げます。

私の個人出版タイトルをデザインして下さっている畠山愛さんも、元々は漫画のデザインはされていなかったのですが、短期間にスキルを取得し、いつも本当に素敵なデザインを作って下さっています。
今回はカバーの折り返し、背表紙という、デジタルには(あまり)存在しない部分もありましたので、ポプルスさんの規定に従い、作って頂きました。
もちろん裏表紙もあります。
デジタルにはない部分として、お楽しみいただけたらと思います。
とにかく、デザインはセンスと経験です。

⑥入稿
ポプルスでは会員ページに現在の進捗状況が出ます。
入稿可能になると入稿ボタンが現れますので、クリックして入稿に進みます。
私はカラー部分、グレー部分に分けて圧縮し、入稿しました。
同人誌としてはページ数が長くボリュームがあるので、時間はかかります(^_^;)
しかし、我慢してアップロードを見守りましょう。
私はグレー部分も30分くらいで送れました。

⑦支払い
打ち合わせも会員ページでやりますが、ここで印刷代が確定しています。
入稿すれば、支払いもできると思います。
私はクレジットカードで支払いました。

私は「カバー付B6・A5セット」オプション無しでお願いしました。
カラーのチェックなど有料でできるのですが、とにかく経費を抑えねばと(^_^;)
値引きシステムもあるのですが、それを使うとチェックをして頂けません。
万が一のことがあるといけないので、そこは一声頂けるよう定価でお願いしました。
そのおかげで、カラーにちょっと不備があったり(確かデータを統合し忘れていた)、トンボの位置がずれていたりしたことにも対応して頂けたと思います。

⑧到着
「印刷終了」のお知らせは特になく、私は気にしていなかったのですが、予定通り進行していますということなのだと思います。
普通はイベントに向けて印刷する人が多いでしょうから、日程には注意しているものなんでしょうね(^_^;)
ある日突然本の段ボールが届き、びっくりしました(笑)
もちろん嬉しい驚きです。

到着してから、「送りました」のお知らせがありました。
印刷がとても綺麗で感動したので、「問い合わせ」のページ(ここにはとてもお世話になりました。ただし字数制限があるので、長文になる場合にはメールでのやりとりになると思います)からお礼のメッセージを送りました。
社長さんの奥さんにもメールいただいたのですが、現状印刷所もコミケがなくなり大変な時なので、私の依頼を喜んで下さったようです。
若い頃、とてもお返しできないほどの恩を受けているので、本当にささやかですけど喜んで下さり、私も嬉しかったです。
今回は8冊余分に同梱して下さっていました。
端折れなど、不備があった場合の予備ということです。
梱包はこの通り。
日焼けも防ぐことができそうだし、本当に丁寧ですね↓

たば

正直、ポプルスさんのシステムがしっかりしているので、初めて印刷する人も問題なく綺麗な本が出来上がると思います。
この本の仕上がりサイズはB6で、フラワーコミックスより少しだけ大きくなっています。
やはり電子本より紙書籍を見慣れたかた(私も(^_^;))には、とても見易いと思います。

⑨価格
最後に価格ですが、990円としました。
BOOTHは送料もかかるので、ご購入者様にはご負担をおかけします。。。

BOOTHで他の同人誌もチェックしてみたところ、それでも166p新作カバー付きでこのお値段は安いです。
流石に1000部くらい刷ることができたら、印刷単価は下げられるとは思いますが、それはそれで倉庫代金がかかるんでしょうね(^_^;)
個人でやっていくには、どうしてもこんな感じになってしまいます。

私はBOOTH以外での販売は想定していないため、他へ持ち込む場合は(参加料などが上乗せされるので)もっと価格が上がると思います。

価格には、印刷代の他送料、デザイン料がかかっています。
幸い保管料はかかりません。
段ボール2箱なので、家に置いておけます。

販売用には100部ご用意していて、完売しても少し赤字になってしまいます。
しかし、2巻を印刷する代金は出そうなので、完売すれば次も出そうと思っています。

1巻だけは出したかったのは、この作品の広告宣伝用に使いたかったからです。
多く想定されるのはフラメンコ関係者です。
フラメンコに関係する人なら興味を持っていただける可能性が高いですし、私も知って頂きたいです。
例えばフラメンコライブで知り合った人がいた時、
「こういうの描いているんです」
とお渡しできるものがあるのとないのとでは、全くインパクトが違います。
「電子本ならあるんですが…」
と言っても、いきなり買っていただくのはハードルが高すぎます(^_^;)
また、フラメンコ関係でお世話になっている方にも、お礼としてお送りしたいと思っています。

贈呈、広告分もそれなりに在庫していないと困るので、当初予定していたより印刷部数を増やしました。
ただ、1巻があれば広告には事足りるため、販売分があまり売れない状況だと2巻は出すことができません。
今は、元々ブログやSNSをチェックして下さっていた熱心な読者の方からご注文が入っている状況です。
やがて電子版が発売になり、紙書籍の存在を多くの方が知って下さるようになれば、残りも売れていくんじゃないかな〜と期待しています(^_^;)

今回は、デジタル出版している本の印刷について書きました。
販売についても、お知らせする価値のあることがあれば、また書いていきたいとおもいます。



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