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忘れられない言葉がある

※メンタルヘルスに関連する言及があります


大学生になってから少しの頃、自律神経失調症と抑うつだと診断を受けた。
田舎から上京して環境が変わったこと、バイトを頑張り過ぎたことで精神も身体も削れたことが原因だと思う。それは結局、数年間引きずった。

そんな中で、インターネットを介して出会った歳下の異性がいた。彼は社交的で、私以外にもたくさん友人がいたと思う。私は昔も今も、少ない交友関係で生きている。
お互いに成人していたこと、都内に住んでいるので会おうと思えば会えること、いろんな要素が合致して「会おう」という話になった。今思えば結構怖いことをした気がする。

共通の女性の友人と合わせて三人で、夕方あたりに合流して、どこかの飲食店に入った。どこかって、渋谷なのは確かなはずだ。その頃の私は服用していた薬の副作用なのか、それとも精神状態ゆえだったのか、いろんなことの記憶が曖昧だ。
原宿で合流して、上京組だった私と友人に「渋谷までなんて歩いていけるよ」と道案内をしながら歩いて向かったと思う。だから、店は覚えていないけれど、場所は渋谷。

いろんなことを話したような気がする。彼の顔は薄らぼんやりとしか浮かんでこないし、声ももう思い出せない。けれど、ひとつだけ。会話の中で言われたセリフは覚えている。

「今の時代、メンタル的な(病気や色んな事情を)持ってる人がほとんどじゃない?」

一言一句同じではなくて、もうニュアンスでしかないけれど。
ああそうだよなって、言葉が胸にすとんと落ちてきた記憶がある。
その頃の自分は、自分がメンタル的な異常を抱えていることをどこかで認めたくなかった。長く眠ったと思ったら30分しか経っていないことに絶望した。どうしてこんなことに、と、ずっと考えていたような覚えがある。

でもたぶん、街を歩く人の中にも同じような事情を持った人はいっぱいいたと思うし、インターネットには心療内科や闘病レポもたくさんあった。私だけじゃないんだろうな、と、それだけでなんとなく気持ちが軽くなった記憶がある。

彼とはもう連絡を取っていないし、きっと私のことは忘れている。こんなやりとりをしたことも、こういう風に会ったことも覚えてないだろう。
私も確実に覚えているのは名前だけだし、それも結局ハンドルネームだ。
けれど、言われたことは覚えている。気持ちが重たくてしんどくて泣いていた時に、私だけじゃないと思って少しだけ軽くなったこともある。逆に、健康的な心理状態の時に思い出して「私の中にまだ、あの頃の根っこが残ってるのかな」と考えたこともある。でも全体的に言えば救われている。

彼にとってはなんでもない言葉だったかもしれないけど、そういう風に救ってくれたことがあるんだよ、と伝えられたら良かったな。というのを、昨日の夜。泣きたいくらいにしんどい中で無理やり眠ろうとした時に思い出した。

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