「何でもいい」から「これがいい」に変わるまで。



飲み放題で1杯しか飲めない理由


氷が溶けかけて薄くなったウーロン茶を飲みながら、こんな事を思い出している。
地元で時々ある、同窓会や飲み会。20代の頃は特に頻繁にあったと思う。

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久しぶりに同級生の●●が帰省してるので、みんなで集まりませんか。

●月✖️日 19:00〜                                           
場所  ▲▲▲                                                     
 会費 3000円(飲み放題)

"はぁ、飲み放題か……。"

そもそも、この同窓会自体、行くのが苦手だった私。
最近になってようやく、自分が行きたい場所、会いたい人も選べるようになって、自分の意思で参加した飲み会では だいぶ楽しめるようになってきたが当時の私は、飲み会に参加すること自体ストレスで仕方なかった。

それでも、断りにくい会には、頑張って参加していた。

親からの圧力

事情があって、厳しすぎる両親の元で育った私は
自分が食べたい物や飲みたい物を選ばせてもらう機会さえほとんど無かった。

冷蔵庫を自由にあけてお菓子やジュースを好きな時に食べるなんてことも あり得ない家でした。

家族で外食に行っても(滅多に無い貴重な機会)
せっかちな父からの、早く決めなさいオーラ
みんな同じメニューを注文した方が早く食べられるからというのが うちでの常識でした。

「Aランチにしようか」
「…うん!」
せっかく連れてきてもらえた外食も
そんなに食べたくない物を美味しいと言いながら いただくしかなかった。

だって、もし少しでも本音を言えば
せっかく連れてきてあげたのに何がそんなに気に入らないの?
そんなこと言うならもう外食なんか連れて来ない。
わかった?あんたがそうさせたんだからね。

母からの返答は だいたい予想がついていたから。


同窓会の場面に話を戻す。

すいませ〜ん!ハイボールください  
あ、待ってAちゃん私も頼む!カシスオレンジ!     他に頼む人いない〜?      はいはい♪私も〜♪
次々とみんなが声を出して 飲んだり食べたり楽しそうにしているなかで

私は1人 最初に頼んだウーロン茶をちびちび飲み続けている。

「Yちゃん 飲み物頼まなくていいの?」って
誰かに言われなくてすむように(聞かれることさえ気を遣うから)
まだグラスは空かないから私は大丈夫っていう雰囲気を醸し出しながら

ただ、飲んでるフリをする。

テーブルに並べられた食べ物だって
誰かのペースに合わせて食べるだけだし
苦手な物も苦手と言えず
このチーズ美味し〜♪と言ってる友人に合わせて
ホント美味しいね〜とニッコリ微笑む。

そして次の瞬間

"私 そのチーズは苦手なんだよね" って堂々と言う友人の声を聞きながら

自分の言いたいことが言える羨ましさと
場の空気に合わせるしかできない自分が八方美人に思える虚しさで
食べても、飲んでも、味がしない。

飲み放題は、時間内なら好きなだけ飲んでいいよっていう意味なのに
私は おかわりを頼むことさえしない。

それに本当は ウーロン茶じゃなくて、ジンジャエールが頼みたかった。(お酒は元々飲めない体質)

でも、みんなと違うモノを選ぶなんてした事がないし
そんなことしたら何か言われるとか
タイミング間違えたら迷惑かもとかいろいろ考えすぎて
 結局 何もアクションを起こさない方が 当時の私にとっては楽だったのだ。

こうして、トイレに立ち上がるタイミングさえも失ったまま 飲み会は終わる。
トイレだってそう。
私が立ち上がった時に もし、別の友達も立ち上がったら
あ、いいよいいよ先に行って~っていう
ちょっとしたやりとりさえ気疲れしてしまうから…。

そんなこんなで
飲み会が終わった後の私は ぐったり。

私は急いで、こんな私を受け入れてくれる
今の我が家に帰って、タイミングを逃したトイレに行く。
トイレから出たら すぐに冷蔵庫を開けて、ジンジャエールを飲み干す。

美味しい…。

お腹も心も空っぽの私


この日の会費3000円で、私は
たった1杯のウーロン茶とわずかな料理しか食べてなくて
周りに遠慮して言いたいこと言わずに顔色ばかり伺って消耗した体力と
八方美人しかできない自分に呆れて
自分の全てが空っぽに感じた。

お腹も心も満たされました

って表現されるあれの、正反対の状態になっていた。

何やってんだろ私…

飲み放題の3000円は
当時の私にとって 無駄な浪費でしかなかった。

好きな物を選ぶことを教えてくれた夫

 「Yは何が食べたい?」
結婚前、夫がまだ 彼氏だった頃、外食先でこんな会話になりました。

私   "んー、先にあなたが決めて。"
夫     "俺は、唐揚げ定食"
私       "じゃあ 私もそれでいい"
夫   "え、Yが好きなメニュー いっぱいあるやろ。   チーズハンバーグは?"
私     "んー、でも……。同じの頼んだ方が早く食べられるでしょ"
夫       "早くたべられるかどうかでメニュー決めるのはもったいない気がするなぁ。頑張って働いたお金を使って、美味しい物食べたいって出てきたんやから、自分の好きな物選ぼう"

付き合って何年たっても、変わりたくても変われない私を理解してくれていた夫が、私の心の声に応えるように話し始めました。

何も相手に合わせることだけが正しいんじゃないで。自分の好きな物を選ぶことは悪いことじゃない。Yは 目の前の人と違う物を選んだらいけないと思ってるみたいやけど、俺もYも違う人間だから、好みは違って当たり前。気にせんで自分がほんとに好きな物何か言ってみて。

夫の言葉が 空っぽの胃の中にじんわり入ってきて
私は泣きそうになりながら

ほんとはアボカドチキンランチが食べたい
あと、チョコレートパフェも。

気づいたら、ほんとはメニューの中で1番最初に目に止まって
食べたい!と思っていたデザートまで口に出してしまった。

うんうん、そっか、それで良いのよ。大丈夫。じゃあ注文するよ。

もうあの世界とは違うんだ


自分が何を言いたいかよりも、何を言えば親の機嫌がとれるか
自分が何をしたいかよりも、何をすれば親に褒められるか
自分が何になりたいかよりも、親が叶えたかった将来の夢を私が代わりに…。

そんな暮らしを18年も続けていたから
その家から出て一人暮らしをしても
パートナーと一緒に暮らしていても
目の前にいるのは いつも あの世界の両親の姿で
私はその姿を前に 
自分には何も選ぶ権利は無いと思っていた。

でも、よく見てみたら
私の目の前にいるのは
自由に選んでいいよと言ってくれる彼だ。

もうあの世界とは別なんだ。

*****

そう気づいた日から 20年。

いまだに 飲み放題の席は得意ではない。
けれど

行きたい飲み会
行けない飲み会
行かない飲み会
この3つを、自分で判断して選べるようになったし

今は、私を受け入れてくれるこの大好きな我が家で、プチ飲み放題を開催している。

月に2回ぐらいかな
週末に家族でホットプレートを囲んで、たこ焼きかお好み焼きを焼きながら三ツ矢サイダー、ジンジャエール、カルピス、
それに デザートに焼くためのマシュマロを置いて、わいわい 騒いでいる。

"お母さん、お代わり入れるけど同じでいい?"
さっきまで飲んでいたサイダーを注ごうとしてくれる息子に向かってすかさず私は言う。

「待って〜 お母さん 次はカルピスがいい♪」
 子どもの頃の家族とはできなかった
私はこれがいい!と言う練習を
大人になってからのこの家族の間でさせてもらっている。

自分の残りの人生、長いか短いかわからないけど
日々、選択の場面で
'なんでもいい’ではなくて
’これがいい’と言える自分でありたい。


私の書く記事は多分、伝わる人が限られています。いじめ、機能不全家族、HSP、病気などの記事多めなので。それでも深くせまく伝えたくて書いています。サポートとても嬉しいです。感謝します。コメントも嬉しいです🍀