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挿絵を描くこと② 〜その先にあるもの〜  ウミネコ童話集


「真夏の四ツ辻」クララさん 

その物語をひとめ読んだ時から
心が離れなかった

白い花のヘッダーにしっとりとした
大人の童話

大切な人をなくした悲しみと喪失感の
その先にあるもの


私の心の深い部分にいつもあるそれと
重なった

その言葉たちは水のように
するすると私の心に沁み込んでいった

絵を描きたいと申し出た私にクララさんは
「お花とパラソルを描いてくださったら
それでしあわせ」と言ってくださった


私は夢中で絵を描いた

その時、はらりと音が聞こえたような気がした。次の瞬間、花は、散った。それは見事に潔いという言葉さえ霞むくらいの勢いで、手を差し伸べる暇もないほどに。 
 しかしその茎はまだ凛と立ち、身に纏うものもないのに美しい。まるで悔いなしと笑っているかのようだ。はっと胸を打たれた。

「真夏の四ツ辻」クララさん



その花びらは散りさっても、なお残る一本の芯

いつも笑顔で凛とした強さを感じる

それは「お兄さま」の生き様

それを目を逸らさずに見る主人公の「私」



私は、物語の要の四ツ辻を描こうか描くまいか
迷っていた

そんな私にクララさんは
「hohoさんの感性にまかせる」と言ってくださった


新しい日傘をさし、顔を上げて表に出る。青い生垣へと急いだけれど、真昼の四ツ辻に人影はなかった。だけどもう泣いたりはしない。
 右へ行こうか、左へ行こうか、私はくすりと笑った。どちらでも、どちらにも。思うまま、気の向くまま、好きな方へ。きっと答えはそこにある。日差しは今日も容赦なく照りつけたけれど、白い花を探してどこまでも歩いていけるような気がした。

「真夏の四ツ辻」クララさん



私は四ツ辻を描かなかった

「どちらへ行ってもいい」と言う感覚を

大事にしたかった



クララさんは私の「青」が好きだと言ってくださった
だから私はどうしても「青」をお届けしたかった

私がクララさんご自身へお贈りした絵は
白い花ではなかった




「白は青に見えるときがある
全てを内包している色
だからきっと見たい色が見えているんだって
そんな風に思いました」

その言葉が印象的で何よりうれしかった



後日私は
また青い花を描いていた

挿絵ではないけれど
私がただただ
描きたかった絵

月明かりに向かって凛と咲く花

人の生きる姿
行ききった後に残すもの、残るもの
それは花の一生に似ている



〜一輪の花〜

その花があの人に似ていたから 描きたくなったんだ






このたびウミネコ童話集の掲載作品
クララさんの童話に挿絵を描かせていただきました。
自分の内面と向き合い、喪失感のその先にあるものに目を向けられたような気がしています。

クララさん、そしてこの素敵な出逢いをくださった
ウミネコ制作委員会さんにとても感謝しております。

本当にありがとうございました。



素敵な本になるのでしょうね。
とても楽しみにしています🍀




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