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おしゃぶりは歯並びを悪くするのか

風船を使って子供をおしゃぶりと決別させる動画がXのタイムラインに流れてきました。こちらがその動画付きツイートです。

おしゃぶりや風船を環境中に放出することについていろいろ思うことはありますが、そもそも無理に離れさせず飽きるまで好きなだけ吸わせてあげたらいいのではないか?という疑問が湧いてきます。

この疑問に対し、リプ欄では歯並びが悪くなるから2歳までにはやめさせたほうがいいという意見がありました。

おしゃぶりで歯並びが悪くなるなんて初耳です。というわけで今回の記事ではおしゃぶりが取れるのが遅いと本当に歯並びが悪くなるのかという疑問を検証することにします。


おしゃぶりで歯並びが悪くなるという根拠

石川朋穂、高田貴奈ほか:おしゃぶりについての実態調査―第4報 2歳6ヶ月児のおしゃぶりの使用状況と咬合について―,小児歯科学雑誌44(3):434-438,2006.

これは2006年に昭和大学小児歯科によって行われた調査結果です。確かに、おしゃぶりを1歳半を超えて使用していた児童は開咬が多い傾向があります。おそらくおしゃぶりが取れないと歯並びが悪くなるという主張の根拠はこの統計が元になっていると思われます。

ほら、やっぱりおしゃぶりは1歳半までにやめさせないとね!

そう思ったあなた、典型的な統計の罠にかかってますよ。

統計学的反論

原因と結果が逆ではないか

統計はあくまでAとBが相関しているという事実を示しているだけです。Aが原因でBになったという因果関係があるようにこじつけるのはただの想像に過ぎません。たとえて言うなら天井のシミが顔に見えるという程度の話です。

噛み合わせが悪いのはそもそも骨格に歪みがあるからであり、これは遺伝の影響を強く受けます。顎の骨格に歪みがあれば違和感を覚えるはずで、かゆいところを掻くように何かを噛みたくもなるでしょう。

つまり歯並びが悪いからそれを治そうとしておしゃぶりに頼るという逆の因果関係も考えられるわけです。

第三の要因があるのではないか

もうひとつ考えられるのは、おしゃぶりが離れられなくなる原因であり歯並びを悪くする原因でもある第三の要因が存在するケースです。

候補として考えられるのはストレスです。どのような種類のストレスが共通の原因になりうるのか即答できませんが、例えば無理やり離乳させることが共通の原因となっても不思議ではないでしょう。

進化論的反論

もしおしゃぶりが本当に歯並びを悪くするとしたら、進化の過程でおしゃぶりを1歳半までに卒業するようになっているか、あるいはおしゃぶりをいつまで吸っていても歯並びに影響しないように進化していないとおかしいはずです。

おしゃぶりは自然界にないじゃないかと言われそうですが、おしゃぶりの代わりになるものは自然界にいくらでもあります。代表的なものは自分の指です。

地質学的には一瞬である数十万年という年月があれば、全員がおしゃぶりや指しゃぶりを早く卒業するようになるか、おしゃぶりをいつまで続けても影響を受けない骨格を獲得するか、いずれかが進化論的帰結となるはずです。

逆に言えば、1歳半を超えておしゃぶりをする人が無視できない割合存在するという事実は、それが無害あるいは有益であることを証明していると言えます。

結論:おしゃぶりは歯並びを悪くしない

以上の理由からおしゃぶりは歯並びを悪くしないので安心して好きなだけ吸わせましょう。

統計的におしゃぶりが取れるのが遅いと歯並びが悪くなるという傾向があってもそれはおしゃぶりが歯並びを悪くする根拠になりえず、そして進化論的におしゃぶりを長く吸う遺伝形質が淘汰されてない事実はおしゃぶりを吸い続けても悪影響がないことを証明しています。

また、おしゃぶりを吸っている大人をこれまでに見たことがなく、精神年齢が3歳で止まってる大人でさえおしゃぶりは吸ってないので、永久にやめられないということは絶対にないです。

むしろ無理にやめさせることで指しゃぶりに移行したり、就学後のえんぴつしゃぶりの原因になるでしょう。

また、明確な根拠はないもののタバコが大人用おしゃぶりであるという説もあります。これが本当ならおしゃぶりを早くやめさせることが将来タバコ好きになる確率を高めることにも繋がるかもしれません。

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