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わるいのは、"だれ"か?|為事探し日記⑧

――いいえ。
悪い人はいませんでした。
善い人ばっかりでした。
真面目に仕事へ取り組んでいる人達ばかりでした。

――はい、不真面目なのは私です。
誰も、会社に損をさせたいとか、人をこき使いたいとか、縦割り組織にしたいとか、チェックを厳重にしたい、とは思ってはいませんでした。
皆、それらの問題に対して、なんとかしなくちゃ、とは思っていたみたいです。
――でも、わたしは「もういい」と思ってしまったんです。
許容範囲を超えた人数の所属する組織では無理だ、と。
あきらめてしまったんです。

――そうです。
真面目にやってれば、一生安泰だ、と。
努力すれば、評価される、と。
それが恒久的な真実ならばどんなに良かったかと、何度羨んだことでしょうか。
「がんばっていれば、良い。」
「サボらなければ、良い。」
ああそれはなんと、幸せで、楽なことでしょうか!
私がそれを批判するはずがありません!
誰よりそんな優しい世界を愛しています。

――でも。
やっぱり、どうしても、駄目みたいなんです。
そんな優しい世界は変に思えてくるんです。
だって、自然界はそんなに優しくありません。
必死に頑張っても獲物の捕れない空腹の日があり、
懸命に育てた実を無残に奪われることがあります。
それでも、次の日も狩りに出、次の年にまた実を結び、
生きとし生けるものたちは、そうやって必死で生きているんです。

――頑張り屋。真面目な人。
そういう人たちが楽々と暮らせる世界はどんなに素晴らしいか!
それでも。
はっきり言ってしまえば、"真面目"や"頑張り"は"生きていくこと"に関しては何の関係もないんです。
「会社にさえ行っていれば、命令やルールに従っていれば、毎月決まったお金がもらえて、安定して生きていける。」
これは、豊かな生活でしょうか。
……生き物の一員である以上、自然界で生きていく者としては、…やはり、変だと言わなくてはいけないのだと思います。
生きのびていくということは、厳しいことなのです。”有り””難い”ものなのです。
だから協力し、団結してきた。逆ではありません。手段が目的になってはいけない。
逆さになった状態は…変な状態は、やはりどこか歪で、諸々の問題が生じるのでしょう。これはもはや自然な現象で、特定の人のせいではないんだと思います。

――現状維持は、変化に対応するよりも難しいです。
ゆく河の流れは絶えずして、
雲は流れ、草木は生い茂り、食べても食べても腹は減る。
安定しているのは、「不変のものはない」ということくらいでしょうか。

――ええ。
離婚問題で揉めている知人も、原因は同じなのだろうと思います。
善い人であること、良い親であること、いい夫婦であること。
人間関係の継続にも、真面目と頑張りは必ずしも必要なものではなかったのでしょう。
あるいは、変わらないこと、を求めすぎたのかもしれません。

――はい。
安定を求めるなら、白鳥のように水面下で必死に掻き続けなくてはいけません。
本当に変わってほしくないものがあるなら、その維持には相当の努力と、そして何より、効果的な対策が要ります。……スキンケアもそうですよね、うふふ。

何もせずに欲しいものが全部手に入る何不自由のない快適な人生より、激動で過酷な世界を白鳥のように優雅に泳ぎ続ける――それが、豊かな人生なんじゃないかって思います。しんどいのは嫌なんですけどね、あはは。


取材:ほかる
インタビューイー:unknowns

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