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超高齢社会のバリアフリーツーリズム

※今から6年くらい前に沖縄のバリアフリーツーリズムについて考察したレビューが出てきたので公開します。

 内閣府の調査によると2013年10月1日現在、我が国の高齢者人口(65歳以上)は総人口の25.1%・3190万人と過去最高の割合に達した。 
 我が国は、わずか36年という凄まじいスピードで今まで世界のどの国も経験したことがない高齢社会に直面し、WHO(世界保健機構)の高齢化率定義に照らし合わせるとすでに「超高齢社会」に突入している。2015年からはいわゆる「団塊の世代」が65歳以上となり、この状況はさらに顕著となる。 
 経済産業省の調べによると、現在60歳以上の高齢者消費における市場規模はすでに100兆円を超え、毎年1兆円の伸びを見せている。このような背景から、超高齢社会の消費ニーズを敏感に察知するとともに高齢者予備軍であり購買意欲の高い団塊の世代の消費動向に着目し、ユーザーの「不の解消」をテーマとした新商品の開発、新市場獲得、準市場の仕組み構築が大変重要であり急務である。
 
1.高齢者における旅行意識と需要
 平成23年の内閣府「高齢者の経済生活に関わる意識調査」において優先的にお金を使いたいと考えているものとして、38.2%の高齢者が旅行と答え、健康維持や医療介護のための支出42.8%に次いで高い割合を占めており、そのニーズは多種多様である。所得状況や貯蓄の程度などの経済格差を考慮し、低額所得者層向けの日帰りバスツアーなどの充実から、定年を迎えた団塊の世代層を含む比較的裕福で購買意欲が高い層に向けた宿泊型・滞在型の「価値の見える旅行」の開発が重要である。また、「生活福祉」を観点とした良い年の取り方をサポートする「いつでも、どこでも、誰にでも、どのようにでも利用できる」健康的でホスピタリティ溢れる余暇(旅行)の創造」は旅行業界の重要な役割である。

2.沖縄のバリアフリー状況
 沖縄県は、バリアフリー化を積極的に取り組んでいる先進観光地であり、2007年には仲井眞知事が「誰もが楽しめる、やさしい観光地」を目指し「沖縄県バリアフリー宣言」を発表、全国に先駆けてバリアフリー化を推進したように、高齢者や障害者が安心して旅行を楽しめる安全な施設やインフラの整備、サービス介助士の育成など質の高い受入態勢が注目されている。

3.高齢社会における旅行商品の展開
 こうした背景からも高齢者市場における沖縄旅行のニーズは高まることが予測され、今後さらなる需要が見込まれる。それでは、「生活福祉型」をテーマとした高齢者向けの商品企画を沖縄本島を例に、有効と考えられる方策および事例を5つ提示する。

①比較的健脚である高齢者へのスポーツ提案~富裕層への提案として恩納村や名護市を中心とする施設でのゴルフプレイは当然のことながら、国頭村を中心として整備されているパークゴルフ場は全国でも有数のコンディションを誇り、非常に安価で夫婦で気軽に楽しめる健康的なスポーツとして人気である。

②カルチャー体験や地域社会との交流~琉球ガラスや陶芸(やちむん)などの伝統工芸体験や沖縄の高齢者(おじい・おばあ)が居住する地域社会との交流で高齢者の観光に対する自主性を養うとともに観光を超えた高齢者同士のコミュニティの形成を目指す。

③避寒地としての長期滞在~北国に住む高齢者は冬期間、除雪や悪路での買い物が大きな負担となっている。この時期、避寒地として沖縄の長期滞在は有効であり、恩納村・本部町・今帰仁村を中心とするコンドミニアム系ホテルは比較的安価で、そのニーズは近年高まりを見せている。

④高齢者本人も介護者も楽しめる観光~地形が隆起珊瑚や隆起石灰岩で形成される沖縄はアップダウンがあり、ゆいレール以外の公共交通機関も乏しいことから、貸切タクシーでの観光が有効である。課題としては、福祉車両の整備や個人旅行に同行し旅程管理と介護を同時に行うコンダクター、介護福祉士や介護ヘルパーの育成が急務であり、介護者の負担を軽減して高齢者とその家族がともに楽しめる旅行が望まれる。

⑤障害者・高齢者観光案内所の設置~NPO法人バリアフリーネットワーク会議は、那覇空港と国際通りの2カ所に高齢者や介護が必要な旅行者が安心して観光できるサポートをする窓口を開設し、高齢者ツアーの誘致を展開している。

 上述のように官・民・地域・NPOが一体となり受入態勢を構築することにより、観光資源が点から線につながり、滞在型のビーチリゾートやコンドミニアムホテル、琉球文化やアメリカ文化がちゃんぷるーしたオキナワンテイストが高齢者に浸透し、避寒地としても人気を集め高齢者がリピートするよう戦略的に取り組むことが超高齢社会においての沖縄観光には有効である。 

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