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ウクライナ平和の鐘 089 「一切れのパン」

https://youtu.be/WAOc8n46TKA

■2022(令和4)年6月24日 089 「一切れのパン」
(動画の2:57~7:07)

本日の「平和の鐘 鳴鐘の輪」。小説の中で、ユダヤ教のラビが託した「一切れのパン」は主人公に苦難を乗り越えるための心の力を与えました。今、同じように、ウクライナの人々の心の力となる国際支援が必要です。

合掌

 昨日は<私の中学生時代の国語の教科書に載っていた小説「最後の授業」についてご紹介をしました。その連想でもうひとつ 、当時の国語の教科書に載っていた小説を思い出しました。ルーマニアの小説家フランチスク・ムンテヤーヌの作品「一切れのパン」です。

 舞台は第二次世界対戦のただ中のハンガリー。ルーマニア人の主人公は当時ハンガリーに働きに出ていました。しかしドイツの同盟国だったルーマニアで政変が起き、連合国側についたのです。ルーマニア人の主人公はナチスドイツにとって敵国人となり、ハンガリーで拘束され、列車に押し込められてどこかに連れて行かれることになりました。

 その列車の中で主人公はユダヤ教のラビ(お坊さん)と出会います。やがて列車から脱走する機会が訪れるのですが、そのまま電車に残る道を選んだラビは、脱走する主人公に小さな布包みを渡し、次のようにいいました。

「この中にはパンが入っている。たった一切れしかないから、ぎりぎりまで食べずに我慢なさい。見ると食べたくなるから、包みを開けないように。どうしても食べなければならない時に、開けて食べなさい」

 その後主人公は、ナチスの監視をかいくぐって長く困難な旅を続け、その間何度もお腹がすいてパンを食べようかと思ったけれども、ラビの言葉を思い出しどうにか我慢して、ルーマニアの我が家にたどり着きました。

 家で一息ついたところで(このパンのおかげでここまで逃げる心の力を得られた)と思いながら包みを開いたところ、包みの中にはパンではなく木切れが入っていました。

 主人公は「……ありがとう、ラビ!」と列車の中で出会ったラビに感謝の言葉を発して、物語は終わります。

 その包みの中身がパンではなく木片だったということは、あまり重要ではありません。「これはパンだ」といって託されたものを
心の支えにして逃げ延びることができた主人公、彼にとっての包みの存在の大きさを、この小説は示しているのです。

 今ウクライナでは、ロシア軍の激しい攻撃が続いていて、現地の人々は大変な目に遭っています。私たち国際社会がウクライナに提供すべきものは、まさにそのような人の心の支えになる一切れの包みの筈。それを差し伸べることが、私たちに求められています。

再拝

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