ドコモICT利活用研修会2019 in福岡 part2 講演編
教育講演会
12月14日 午前。福岡市内の筑紫女学園中学・高校で
近畿大学附属高校の乾武司先生の講演会が行われました。
まるで美術館のような豪華な建物。
タイトルは「iPadのある学校2019〜Society5.0に向けて学校は?〜」
スタートは近畿大学附属高校の取り組み。
乾先生たちがどのような取り組みで日本のICT教育をリードしてきたか。
近畿大附属のICTポリシー
Free Internet
Free Apps Download
Free Use 24 hours
つまり
・1学年1000人が一人一台のipadを所有。非常にゆるい制限
・クラウドを本格的に活用
・生活全般で利用
一般企業と同程度のICT環境を用意しています。
具体的には
1 紙ベースのデータ化
2 教員が副教材を減らし極力デジタル化
このような取り組みを日本で初めて近大附属が取り組んだ理由は
「生徒は未来からの留学生。「ICTが当たり前の世界」で生きていく力を」という当時の校長先生のビジョンから。
当然最初は批判の多かったこの改革。しかしゲームよりも楽しい授業を!と取り組み、現在の成功につながっています。
シンガポール・ショック
AppleにはADEという資格があります。Apple Distinguished Educatorの略です。この教員に認定されると、Instituteという世界中で行われる研修で、海外の教員と研修、交流ができるチャンスが与えられます。
乾先生が影響を受けたと語る、2015年ADEのInstituteはシンガポールでした。
ショーケースといわれる3分のプレゼンを行うメインイベントがあるのですが、このショーケースで乾先生はプレゼンを行いました。
内容は
他の学校に先駆けてiPad一人一台を達成したこと。
いかに近大附属では他の学校と異なり、制限をかけずゆるい管理をしていること。
ところが外国の先生方の反応は
「うちの国も当然一人一台。本当に日本ではそんなガチガチの制限をかけてやっているのか?」
自信満々に乗り込んだ乾先生たちは、物凄いショックをうけたそう。
しかも帰りのタクシーでは
「日本人か?この車はプリウスだ。素晴らしい車だが、シンガポールは必ず日本をすぐに追い越す。なぜならば、シンガポールは莫大な投資を教育にしているからだ」
乾先生はこのシンガポール・ショックの体験が忘れられず、今も学校・教育改革を続ける原動力になっているそう。
最新のPISAの結果
OECD生徒の学習到達度調査(PISA)とは「OECDが進めているPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査に、我が国も参加しており当研究所が調査の実施を担当しています。PISA調査では15歳児を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの三分野について、3年ごとに本調査を実施しています。」(国立教育政策所HPより)
教育ニュースで非常に注目された今回の結果はこちら
OECD加盟国では数学、科学がトップクラス。そして今回ショックを与えたのが、「読解力」の低下。11位に落ちたショックがマスコミで大ニュースになりました。
ちなみに
OECD以外の79か国でみた資料かがこちら。まさに乾先生がシンガポール・ショックと表現したものが現実に起きています。
しかし一番の問題は、「2018年調査補足資料(生徒の学校・学校外におけるICT利用)」。
例えば「コンピュターを使って宿題をする」日本の79%の生徒がまったくか、ほとんど使用しない。調査国ないでぶっちぎりのワースト1位です。
これは「携帯電話を使って宿題をする」という調査でも同様です。
授業内ではどのような結果なのでしょうか?私の教科、社会で見てみます。
質問は「普段の 1 週間のうち、教室の授業でデジタル機器をどのくらい利用しますか。」
日本の学校の75%は「利用しない」。これもぶっちぎりのワースト1位です。
乾先生の見解
乾先生はPISAのICT活用の結果がどんどん世界に取り残されていることを強調されつつ、以下のクイズを出しました。
「 ① はまもなく学校では時代遅れになるだろう。
人類知のあらゆる分野が ② を使って教えられることもありうる。
我々の学校制度は10年以内に全くかわっていることだろう
③(人名)④年」
正解は
① 書籍 ②映画
そして③はエジソン ④の年号は1913年です。
世界はエジソンの予言通り、大きく変化している一方で日本の教育は取り残されています。
例えばイギリスでは電子書籍やe ラーニングが積極的に活用され、教師と生徒の利用できる知識に差がなくなっています。
日本でも質の良いeラーニング教材が増えてくれば、学校に行かせるという需要はいつまでも続くものなのか?と乾先生は警鐘をならします。
重要なのは誰のためのICT環境。
ICT ➡️ 授業効率があがる。丸つけが不要に。 ・・・これは教師うのためのICTであり、一方通行です、
本当に向かうべき先は、生徒が主体的に学ぶ環境。
自由度の高いICT環境を使い、共同しながら学ぶ。その時の教師はサポートが役割です。21世紀型スキルも学力の三要素も、求めているのは多彩なアウトプット。
ブルームのタキソノミー
タキソノミーとは分類学のこと。
ブルームは認知のレベルを6段のピラミッドに例えます。
乾先生はPISA2018 の読解力が15位だった理由を、「情報を探し出す」「評価し塾考する」というクリティカルシンキングの力が低いから、と分析します。
この「情報を探し出す」力はピラミッドの3段目の「分析」。「評価し、塾考する」力は2段目の「評価」が該当します。
このようなことを踏まえて
学校じゃないとできないこと
みんながいないとやれないこと
という視点でこれからの学校づくりをすべきだと乾先生は言われます。つまりコミュニケーションやコラボレーションの力を育む環境。
現在近畿大学附属高校では、乾先生を中心に評価制度の変更をしているそう。
定期テストの結果のような総括的な評価の配分を下げ、クリエイティブな作品を創造するものを評価する形成的な評価の配分を上げているそうです。
クリエイティブな作品の一例とは、動画などで学びを表現・共有すること。
乾先生は理科の授業で、元素を生徒が動画で表現する。しかもグリーンバックで合成した高クオリティーの動画に仕上がっていました。
まとめ
乾先生がAppleのイベントで影響を受けた言葉。
「Ignaite creativity」 生徒の創造性を点火する
乾先生は講演の最後にこう締め括りました。
学校をもっと楽しく、
生徒が主体的に動ける場に!
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