見出し画像

デザイナーの「考える力」をはかる

この記事はGoodpatchのUIデザインアドベントカレンダー4日目の記事としても掲載しています。

はじめに

自分はサービスデザイン会社を経営しており、過去に何度もUIデザイナーを採用してきました。(今は自分1人の会社ですが)

応募してくれた候補者の経歴やポートフォリオを見て、やりとりして面接し、最後は直感に頼りつつ一緒に働いてくれる人を採用してきました。

正直に言ってしまえば、予想以上に成果を出してくれたメンバーもいたし、期待通りには行かなかったこともありました。

デザイナーとしての制作スキルは整えられたポートフォリオで、考えて議論する思考力は短かい面接でそれぞれ判断しようとしていたのだから仕方ありません。

そんな背景もあり、今だったらどうやって採用前にデザイナーの制作スキルと思考力を見極めるだろうか考えてみたので書いてみます。

先に言っておきますが、1時間かそこらで判断するのは困難です。有償にして3時間は確保してもらう前提です。


先人に学ぶ

まず、デザイナーに求められる思考力についてもう少し分解してみます。

ビジネスデザイナーの濱口秀司氏の著書に、Zibaにおけるディレクター採用の話があります。

Zibaで求めるのは、イノベーションを起こせる人材である。より具体的に言えば、「ストラクチャー(構造・論理)型」と「ケイオス(混沌・直感)型」双方の思考バランスに優れた「ストラクチャード・ケイオス」型である。彼らは学習速度も速い傾向にある。

ディレクターの採用について書かれていますが、デザインという行為も「プロトタイプを作っては批評する」まさに直感・ケイオス型思考と、構造化・ストラクチャー型思考の繰り返しでは、という印象を受けます。

さらに90分の採用面接について、こう書かれています。

簡単な挨拶を終えると、「あなたの履歴書を一行にまとめてください」と受験者に課題を投げる。 〜中略〜 のっけからケイオスティック(直感的)モードに入ってもらうのだ。同時に、私たちはスタビリティ(精神的な安定性、強靭性)も審査している。コンサルタントとして、見たことも聞いたこともない課題に直面した時に、うろたえたり、ひるんだりすることなく、平然と向き合える資質があるか否かである。

履歴書も提出しているのに、自分自信を見つめ直し、一言で表す作業を課されます。いきなりケイオス型思考を課され、その際の反応まで見られています。ここで適当に答えてしまうと、すぐに後悔します。その後

「一分ほど考えて、あなたの履歴書を三つの項目でまとめてください」と、一転してストラクチャー(論理的)レベルで計っていく。直感で一行にまとめた自分の履歴書について、論理的に三項目に分類できるか、その整合性は取れているか、などを判断する

こんなやりとりが90分の面接の冒頭10分で行われます。思考の瞬発力がないと、この時点で振り落とされそうです。

このあとも二つの思考力を計る課題が繰り返されます、詳しくはSHIFTを読んでみてください。ちょっと怖いですが、受けてみたくもあります。

この「ケイオス(混沌・直感)型」「ストラクチャー(構造・論理)型」双方の思考力とバランスがわかれば、デザイナーとしての資質も見えてきそうです。


ケイオス(混沌・直感)型思考力を計る

前述の自分を一行で表す課題に倣うと、

・前提条件も成果も自由度が高い
・内容を予想しづらい
・短い制限時間

に沿っていれば似た課題が作れそうです。デザイン以外の話題でも良さそうですが、例えばUIデザイナーなら

「みかんに関連したスマホアプリのアイデアを5分間、思いつく限り考えてみてください」

目の前にみかんがあるので書きましたが、別にみかんでもコーヒーでも、クリスマスでもなんでも良いです。広告やグラフィックデザイナーなら

「このみかんを5分間で、できるだけいろんな言葉で褒めてください」

どこかの研修で聞いたことがありますが、こういう課題でも良いんじゃないでしょうか。

時間内でどれくらいのアイデアが出せるか、うろたえずに対応できるかを見てみます。

ストラクチャー(構造・論理)型思考を計る

上記の質問と対にして考えます。

「お疲れ様でした、では今出したアプリアイデアから2つを選び、それぞれA4一枚に企画としてまとめてください。見せる相手は架空のクライアントで構いません。準備時間は20分です」

と伝え、構造化する力を測ります。褒める課題の後なら「広告の企画」でどうでしょう。

構造化、言語化能力と、プレゼンテーションのうまさも見ます。


制作スキルを計る

ここまで書いて、こんなんでデザイナーの実力はわからないだろと突っ込まれそうですが僕もそう思います。

最後にデザインの制作能力を見ます。

「では2つの企画のうち1つを90分間で、自由にデザインしてみてください。プロトタイプでもデザインコンセプトでも構いません、得意なところを生かし、自由にアウトプットしてください」

現実的な範囲で最低90分、本当は3時間くらいあげたいところです。ここではもちろん具現化する能力、制作スキルを見ます。

限られた時間で仕上げるためには取捨選択が必要です。

インタラクションにこだわるかもしれませんし、全体設計を優先するかもしれません。自信がある部分に集中したアウトプットになります。

実力が発揮できる作業環境の確保は必要です。パソコン、マウスなどは持参いただいた方が良いかもしれません。

制作スキルの高い専門家タイプならこっちで頭角を表すはずです。きっと

円満に終える

最後にプレゼンしてもらい、褒めちぎって終わりとしましょう。「こんな短時間ですごいですね!」が適当です。

濱口さんも書いていますが、いつかどこかで部下や同僚、あるいはクライアントになるかもしれません。謝礼と感謝を伝えて、労って終わりにしましょう。合否は後日伝えます。


というわけで、思考力制作スキルを計る採用試験を勝手に考えてみました。

多分に濱口さんの本を参考にしていますが、チームで働く素養を見るAtlassianの採用記事も面白いので紹介しておきます。


同業の自分でも面接とポートフォリオだけでは計れないと痛感しています。とにかく相応のコストをかけて、慎重に素質やスキルを見極めるスタンスは必要です。

あとこんな試験は実施していませんが、自分も参画しているGoodpatch AnywhereではUIデザイナー、UXデザイナー募集中です。

パートナーとがっぷり四つで作るので、思考力と制作スキルに自信がある方、ぜひ一緒にバチバチやりましょう!


それでは


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?