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千葉大学デザイン学科のみんなへ

昨日五反田で行われた同学科の卒業研究・制作の発表「意匠展」に行ってきました。
自分は2010年3月に卒業した学生番号06世代です。当時はデザイン工学科 意匠系という、なぜか建築系と同じ学科でした。(でも接点なし)

今でもそうだと思いますが、課題コンセプトを見つけ、解決策としての成果物をデザインしプレゼンする。この苦行を何度も何度も繰り返すハードな学科でした。Illustrator, Photoshopが使えないとまともに課題提出できませんが、誰も教えてくれないので全員独学でマスターして行き、4年後には大抵のものが作れるようになっている。今思えばだいぶ学生の頑張りによって支えられたカリキュラムでした。

そしてもちろんデザインを研究すると言う意味でも大変ユニークな場所です。その広告で統計的に有意差は出るのか、人間工学的に負荷が少ない形状はどれか、その環境がコミュニケーションをどう変えるのか。単純にものを作って終わりではなく、その背景に学術的な根拠を求めたり、仮説検証を得意とする研究機関でもあります。

自分は学部を卒業後に大学院へは進まず、桑沢デザイン研究所というデザインの専門学校へ編入学しました。当時の自分は「作れるやつが世の中を変えているんだ。」と信じ、グラフィックデザインの力を養うために専門学校を選びました。デザイナーとして就活する手もあったのでしょうが、実力が伴っていなかったので技術を身につけたかったのです。

結論から言って、当時の自分のように職人的に物作りを極めたいと思う人は院に進む必要はありません。

研究の片手間でも制作はできますが、仕事として作っている人と比べれば質・量とも差が開きます。桑沢のようにグラフィックにまつわる技術をプロの先生方が効率的に教え、エディトリアルや写真、イラスト、広告、あらゆることを体系的に学び実践できる場所はたくさんあります。

紆余曲折経て自分はデザインとビジネスを繋げるような仕事をしていますが、専門も出て、サラリーマンもして、会社を立ち上げてみて気づけるデザイン学科で得られた大切なことが2つあります。

その一つはデザイン思考です。

問題を定義し、アイデアを出し、プロトタイプを作ってテストする。学科で当たり前に行なっていたこれらの行動は、モノづくりの基本です。

仕事をしているとあらゆる「作る」と言う行為が伴います。「なぜこれを作るのか」と言う目的をぶらさずに、確実になんらかのアウトプットが出せる人材は希少なのです。

もう一つはデザインを他分野と繋げられることです。

卒業研究で行なったであろう、統計学的な処理はデザインを客観的に評価する上で立派な手法です。あんなに嫌だった線形代数も統計学も本気でものにして操れれば、統計のできるデザイナーとして引く手数多です。

デザインを客観的に評価し、ビジネスに活かすことはMBAを取得してもできることではありません。

職人的な道を目指さなくても、世の中には重要なポジションがたくさん存在します。

今の学生に伝えたいこと
作る人に憧れて、職人的に極めたいと考えている人は4年で卒業して外へ出ましょう。現場で場数を踏めるのがベストですが、専門技術をもう少し学んで就活と言うのも手です。

デザインを研究したい学生は時間をかけて一つのテーマを掘り下げ、誰よりも詳しくなれる機会はそうそうありません。企業でもデザインの価値が高まっている昨今、企業に直接アプローチすれば就職せずとも片手間のコンサルティングや産学協同で稼ぎながら研究するというポジションも取れます。視野を広く持って可能性を探ってください。

卒業生に伝えたいこと
工業製品をはじめ、各所で活躍されている先輩方をみては嬉しく思います。(最近では根津孝太さんの本を読み切ってから先輩だと知りました。。)学んだことが仕事に生きていないと言う同窓生にあったことはありません。一見デザインと関係ない業種に進んでも、何かしらその学んだ力を発揮している人がほとんどだと思います。異分野で働いている卒業生こそ、その特異性で重要な仕事を任されているんじゃないでしょうか。
なので卒業生はブログでもなんでも発信をもっとしていきましょう。先輩の仕事は後輩の励みになりますし、キャリアの参考にもなります。

研究者として学び直すという手段もあると思います。一度働いていから研究者になった方もたくさんいらっしゃいますし、今ならどんな研究に企業ニーズがあって、誰にアプローチすべきかもわかるんじゃないでしょうか。


真面目にデザインを捉え、考えるこの学科が好きです。

今年も非常勤講師を少し勤めますが、本当に日本を良くするデザイン人材が育っていく助けになれればと願っています。

今年卒業する学生のみなさま、おめでとうございます。力を発揮すべき世界は広く、みんなあなたを待っています。


それでは

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