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野球をする子どもの成長と上達にどのように焦点を当てるべきか



元広島カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

野球は、子どもたちにとって楽しいスポーツだと思います。

しかし、試合に出場できる人数が決まっている以上、時には厳しい競争と評価の問題が伴います。

レギュラーを争っているわけですから、他の子どもたちと比較されるのは避けられませんね。

今回は、子どもが野球で成長し、上達していく過程で直面する問題に対して、親がどのようにサポートすべきかに焦点を当てていきます。

また、子どもの興味や感情をどのように理解するのか、その方法についてもお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

それでは、はじめていきましょう。


他の子どもと比較しないで

野球をする子どもにとって、同じチームのメンバーや他のチームの選手たちと比較されることは避けられません。

チームでレギュラー争いをしていることこそが、比較されていることと言えます。

しかし、あなたは、あなたのお子様と他の子どもを比較するのではなく、お子様自身の成長に注目するようにしてください。そうすることで、お子様は自分のペースで野球に挑戦し続けられます。


我が子の成長にどう焦点を当てるか?

小中学生の間は、体の成長が早い子の方がチャンスに恵まれているはずです。

現実的に、子どもの成長には個人差があります。それは、長期的な視点で成長をサポートする必要があることを意味しています。

ですから、お子様を他の子どもと比較するのではなく、あなたのお子様独自の成長と進歩に焦点を当てることが重要です。

地道に繰り返し練習をすれば、独自のペースで必ず成長します。あなたは、お子様が自分の進歩を感じることができるように、個人的な成長に注目してサポートしてあげましょう。

他の子ができることにとらわれず、お子様の小さな進歩に目を向けることが大切です。また、得意な分野は子どもによって異なります。ですから、それぞれに違う「光る場面」があるはずです。

たとえば、他の子はバッティングが得意でも、あなたのお子様には走力があるかもしれません。走力でチャンスを掴んだのであれば、それを賞賛しましょう。

打球スピードが速くなったと感じたのであれば、それをお子様に伝えましょう。

上手に捕れなかったフライが捕れたのであれば、たとえ一度だったとしてもそれは大きな進歩だとお子様に伝えましょう。

もちろん、結果だけでなく、努力をしているプロセスに対しても、細かな部分を見逃さずに褒めるようにしましょう。

現実問題として、野球の試合に出られるのは9人です。試合に出られない子どもであれば、選手として比較されていることは感じているはずです。

仮に、今は出場機会が少ないとしても、劣等感や挫折感が生じないように、頑張りや努力をほめることを優先してください。そして、自分のペースで野球を楽しめるよう背中を押してあげましょう。

このように、他の子どもとの比較にとらわれず、個性を尊重することが大切です。

お子様の良いところをほめて、自信をつけられるようサポートしましょう。


比較の落とし穴とその対処法について

先ほども言いましたが、試合に出られる人数は決まっています。決まっている以上、ほとんどの子どもは、指導者や周りの大人から、他の子どもと比較されていることを感じとっています。

しかし、それは子どもの自己評価にネガティブな影響を与える可能性があります。比較によるストレスやプレッシャーを避けるためには、独自の成長と達成を称賛し、それぞれの子どものユニークな特性を認識することが重要です。

とはいえ、他の子どもとの比較は、ついついしてしまうものです。たとえば、無意識にこんなことを言っているかも知れません。

「つよし君は、それ上手にできてたよ」
「しょうた君ができたんだから、あなたにもできるでしょ」

このような言葉には、親としての複雑な思いがあるはずです。ですが、このような言葉には、次のようなマイナス面があります。

  • 自尊心の低下
    子どもは、他の子どもと比較されると自分が劣っていると感じ、自尊心が低下する可能性があります。

  • モチベーションの喪失
    他の子どもと比較されることで、挑戦する意欲を失うことがあります。

  • 親子関係の悪化
    親が他の子どもと比較することで、親子関係が悪化する可能性があります。

何より、このようなケースの比較は、他の子のほうが上手くできた部分だけに焦点があたりがちです。また、比較されている子どもの努力のプロセスが見落とされがちです。それでは、子どもの自尊心は低下してしまいます。

そうならないためには、次の点を意識してみましょう。

  1. 個別の進歩を称賛する
    お子様独自の成長や進歩に焦点を当て、それを称賛することで、自尊心を高めることができます。

  2. ポジティブなフィードバック
    お子様が成し遂げたことに注目し、ポジティブなフィードバックをすることで、モチベーションが維持できます。

  3. サポートの強化
    お子様が直面する困難や挑戦に対して、サポートを強化し一緒に解決策を考えることで、親子関係を強化できます。

そのほか、お子様の得意不得意を把握し、まずは得意分野を伸ばすことを考えてみてください。得意な部分を伸ばすことで、不得意なことにも挑戦する気持ちが湧いてくるはずです。

得意なことにしても、不得意なことにしても、取り組むときには「達成可能な具体的な目標」を設定してください。

小中学生の子どもの成長には、個人差があります。それを理解して、比較の落とし穴に気をつけつつ、お子様の成長に着目していくことが大切です。


子ども自身の進歩をどう認識し評価するか

次に、お子様自身の進歩をどう認識して評価することができるか、考えてみたいと思います。

  • 小さな成長を祝福する
    祝福により、お子様は自信を持つことができます。どんなに小さな成長でも、積極的に祝福をしましょう。お子様が持つユニークな価値を認め、それを称賛することが重要です。

祝福は、野球のプレーだけに限りません。たとえば、お子様がチームの勝利に直接貢献しなかったとします。ですが、お子様がチームの雰囲気を良くしたり、メンバーに精神的なサポートを提供できたとしたら、これもまた重要な役割です。

  • 日記を書く
    あらかじめ達成可能な目標を設定しておき、お子様の日々の小さな成果を記録する日記を書くようにしましょう。

野球の技術向上のことはもちろん、友人関係のこと学業での成果なども記録し、親子で共に振り返りましょう。

  • 成果を展示する
    野球のトロフィーやメダル、賞状など、お子様の成果を家の見える場所に展示します。

展示するのは野球のことだけでなく、描いた絵や作文などが評価された時にも展示してみましょう。これにより、お子様は自分の努力が認められていると感じることができます。

  • 達成式を開催する
    目標を達成した時や、新しい技能を習得した時などに小さな達成式を行いましょう。

野球以外にも、学校の行事や習い事などで成果が出た時も、達成式を行うことをお勧めします。家族だけでなく、時には親しい友人を招いて成果を祝うことで、お子様の自己効力感を高められます。

以上のように、野球をするお子様に対しては、他の子どもたちとの比較を避けましょう。そして、お子様が自己評価を下げてしまわないように、個別の成長と進歩に焦点を当てることが重要です。

小中学生は成長に個人差があります。ですから、小さな成長に目を向け、自分のペースで進歩することをサポートする必要があります。

お子様が自分の進歩を感じることができるよう、小さな成果を称賛し、自信を持たせることが大切です。これは、自尊心の低下やモチベーションの喪失を防ぎます。また、お子様が自分の成長を実感し、自己効力感を高めるのに役立ちます。

何より、お子様自身が自分の成長を楽しむことができる環境を提供することが重要です。


興味のタネをどのように育むか

野球のどの部分に、お子様が楽しみを感じているのかを理解することで、あなたは、適切にサポートをすることができます。そして、それはお子様の野球への情熱を育むためにも重要です。

ここでは、お子様が野球にどのように関心を持ち、その興味をどう育むかについて掘り下げていきます。

それを理解することで、お子様のやる気をひき出すことにつながり、成長をサポートすることができます。


どうやって子どもの興味を把握するか

まずは、試合や練習で、お子様がどんな場面で、どのような反応をするのか注視しましょう。

お子様が目をキラキラさせる瞬間があれば、そこから興味のタネを読み取ることができます。

お子様が、野球のどの部分に興味を持っているのかを知ることで、親としてもサポートがしやすくなるはずです。そのポイントを見つけるには、やはり日頃からの観察がカギになります。

そのためには、あなたが練習や試合を見ている時、お子様がどのような場面でどのような反応をするのかを注意深く観察しましょう。

たとえば、どんな練習の時に熱中しているでしょうかどんなプレーの時に集中力が高まっているでしょうかそして、どんな時が楽しそうでしょうか

このように、お子様が特定のプレーやスキル練習に取り組んでいるときの感情にも注目しましょう。これらの感情を理解することで、お子様の内面に深く関わり、お子様の情熱をよりよく理解してサポートすることができます。

また、喜びや挑戦への意欲など、ポジティブな感情は、お子様が真に興味を持っている分野を示しています。

バッティング練習は、ほとんどの選手が好きだと思います。でも、バッティングが苦手で、苦戦しているかもしれません。または、ピッチングをしているときに、一番目を輝かせているかもしれませんね。

中には、仲の良いお友達と一緒にいることが楽しいという子もいるかもしれませんし、一人でコツコツ練習をすることが好きな子もいると思います。

このように、お子様の様子を観察することが、野球のどの部分に最も興味を持っているかを理解する第一歩となります。


子どもの感情にどのように注目するか

お子様のグラウンドでの感情を理解することは、野球の上達をサポートする上で大切なポイントです。

たとえば、普段の生活であれば、お子様の表情から好きなことや嫌なことが読み取れることが多いと思います。

しかし、野球の練習や試合中の子どもは、多くの場面で、緊張のためか感情が見えないことが多いです。無意識に、指導者や親からのプレッシャーを感じているのかもしれません。

そのような場合でも、お子様の感情の変化に気づける観察眼を磨いていければ、親子のコミュニケーションも良好なものになります。お子様も感情を理解してもらえたと感じることで、プレッシャーや不安を軽減することにもつながるはずです。

ですから、グラウンドでは、お子様の喜怒哀楽を観察するようにしましょう。

たとえば緊張しているときは、顔がこわばって、ぎこちない動きになっていると思います。逆に、落ち着きのない動作をしている子もいるでしょう。

不安や悲しみを感じている時は、目線が下がっているかもしれません。不満や怒りがある時は、視線を避けることがあるはずです。

それらの場合、特に子どもの場合は、言葉で表現しづらいことがあります。ですから、非言語的なサインにも注意を払いましょう。

そして、緊張や怒りなど、感情が乱れている場合には、安心感を与えることが重要です。穏やかな声のトーン、理解を示す言葉を使って、お子様が安心できる雰囲気をつくりましょう。

ネガティブな感情は、多くの場合、失敗に対するプレッシャーや恐怖心が引き金になります。また、過度な期待もプレッシャーになります。

そして、野球は失敗の多いスポーツです。特にお子様が失敗した時の感情に注意を払い、失敗が失望や挫折につながらないように、適切に対応しましょう

その具体的な方法は、順を追ってお話していきます。

まずは、お子様の野球への情熱を深めるためにも、常日頃から、結果よりもプロセスが大事だと伝えましょう。

あなたは、お子様の内面に目を向け、感情に寄り添い、それを尊重することに注力してください。そうすることで、お子様の精神的な安定と成長を促し、自信と能力の開花へとつながっていきます。

次は、お子様との会話について考えてみます。


会話を通じてどう興味を探るか

日頃の会話で、お子様の野球に対する興味を具体的に知るように努めましょう。

そのために、お子様の思いを聞く習慣を持ちましょう。

お子様との会話を通じて、どの選手が好きかとか、どんなプレーをしてみたいと思っているかといったことを聞いてみましょう。

たとえば、「どの選手が好きなの?」と聞くだけでなく、「その選手のどんなプレーが好きなの?」とか「どんなところに憧れているの?」などと聞くことで、より深くお子様の興味を知ることができます。

また、お子様は、どのポジションに憧れを持っているでしょうか?そして、どんなバッターになりたいと思っているのでしょうか?

その時も、そのポジションでどんなプレーをしてみたいと思っているのかとか、どんな場面でどんなバッティングをしたいと思っているのかといったことを具体的に聞いてみてください。

そして、「じゃあ、その目標にどうやって近づこうか?」などと、会話を弾ませることで、お子様にとって具体的な目標設定ができ、なりたい自分をイメージ化することができます。

そのほかにも、「今日の練習で新しく覚えたことは何?」などと聞き、その練習のどんなところが楽しかったのかを聞くことも、お子様の興味を知ることにつながります。

このように、お子様との会話を通じて、興味や感情を理解しましょう。

さらに、お子様が試合や練習で直面している困難についても、理解するように努めましょう。そうすることで、あなたは、どのようなサポートが必要かを理解する手がかりを得ることができます。

お子様が興味を持っていることに注目し、その興味を育むことは、お子様が高校、大学、その先へと野球を続けるために不可欠です。

大切なことは、受容と共感です。お子様が、あなたに受け入れられていると感じれば、自分の思いを話してくれるはずです。

ただし、小中学生の子どもの場合、自分の興味や気持ちを言葉でうまく表現できないことがあると思います。そんな場合でも、答えを与えるのではなく待ちましょう。

そこは、色々と質問を変えながら理解するようにしてください。

以上のように、あなたが興味を理解しサポートすることで、お子様は自分の興味に対してより熱心になることでしょう。

そして、それは野球に対する情熱を育むだけでなく、親子の絆を深め、お子様の全面的な成長を促すことにつながります。


今回のまとめ

いかがでしたか?

今回は、野球をする子どもの成長と上達に、どのように焦点を当てるべきかを考えてみました。

子どもの成長と進歩の個人差を理解し、他の子どもたちとの比較を避けることが大切だとお話をしました。

お子様が自分自身のペースで成長し、野球に挑戦し続けることをサポートしていきましょう。

野球の上達のためには、地道な練習や小さな進歩を繰り返す必要があります。親としては、お子様の小さな成果を称賛し、自尊心を育てることを心がけましょう。さらに、ポジティブなフィードバックを与えて、モチベーションを維持することに注力しましょう。

お子様が楽しんで野球を上達させるためには、得意分野を伸ばすことが大切です。そして、日々の観察と会話を通じて、お子様の感情や興味に注意を払うことが効果的です。

最終的には、お子様のユニークな能力を認識し育てることで、野球を楽しみながら成長し、自己効力感を高めることができるようになります。

今回は、以上です。

次回もまた、野球の上達に必要な情報を、エビデンスに基づいてお伝えします。

それでは、またお会いしましょう。


【石橋秀幸プロフィール】

広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。

現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
著書多数。

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■石橋秀幸これまでの業績:
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