PERCHの聖月曜日 33日目
質問
マンガをかくのが好きで、マンガ家になりたいのですが、どんな本を読んで勉強すれば、いいのですか?
答え
どんな本を読んだらいいか、という問の答えは“あらゆる本”です。
ぼくの仕事場には大きな本だながありますが、試みに端の方から本の題名を、デタラメに拾い読みしてみましょう。「映画百科事典」「学習魚介図鑑」「宇宙からきた客」「お料理読本」「すまい」「リンカーンが撃たれた日」「人間とイルカ」「ヒルダよ眠れ」「一茶名作物語」「写真百科」「明日泥棒」「現代っ子教育法」「中近東を行く」「舌出し天使」「漫画映画論」「われら九人の戦鬼」「シナリオ創作研究」「背番号0」「さなぎ」「現代用語の基礎知識」……いや、もうやめましょう。きりがありません。つまり……こんなふうに、なんでもかんでもかじることです。深く突っこむ必要はありません。広く浅く、あらゆる知識をたくわえることです。それがやがて、あなたの頭の中で分解され、いろいろに組み合わされて–––どんなマンガでもかける源泉となるわけです。
あるマンガ家は「マンガ家になるなら大衆文学だけをいっぱい読んでおけばことたりる。」といったそうですが、そんなことはウソです。
それから、あんまり遊ばない–––マンガばかりかいている、とのことですが、それもいけません。“遊び”もやがては資料の一つになるのです。もちろん、学校の勉強も……さあ、大いに遊び、大いに勉強しましょう。
この答えが、つまりは次の“子どもたちに受ける絵と自分のかきたい絵(マンガ)との落差”という悩みの解決にも、あてはまります。
自分のかきたいマンガ、かいたマンガが、スタイル画でなくとも、すばらしい内容を持ったものでさえあれば、子どもたちはやがてついてきます。そうです! ついてこさせるのです。
子どもたちの好みばかり、目の色を変えて追っていると、やがてそれにあきられたとき、動きがとれません。子どもたちはどんどん成長する動物です。次々と好みが変わります。
そして、どんな好みにも応じられるマンガをかくには–––あらゆる勉強が–––というわけです。
ーーー石ノ森章太郎『石ノ森章太郎のマンガ家入門』秋田書店,1998年,p200-201
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