100日後に30歳になる日記(6)

◆3月21日

 映画「ブルービートル」を観た。ヒーロー物としてすごく楽しめた。おばあちゃんがいいキャラしてる。家族愛とヒーローって相性いいよな……。アメコミについては不見識だけど、マーベルよりDC系列の物語のほうが家族に寄っている感じがして私は好きだ。敵役もかっけぇし。アクアマン2のブラックマンタの最期なんてあまりに悪役然としていて、これだよこれ! となった。「ブルービートル」のCパートでは続編を匂わせる一コマがあったけど、シリーズとしてはこれでおしまいらしい。まぁ、打ち切りには慣れている。でももったいない。とりあえず新しいユニバースを映画館で流してくれ。

 大谷翔平の通訳がなんかやらかしたらしい。私は最近洋画を字幕で観ているのですこし英語が聞き取れるようになった気がする。翔平、新たに通訳が入り用になったら俺まで連絡してくれ。Damn it! だけなら分かる。

◆3月22日


 映画「ペナルティループ」を観に行った。
 観客はシアターに私が入ったとき誰もおらず、あとからひとり来たくらい。監督の前作「人数の町」が好きだったので、新作情報を聞いてからはずっとワクワクしていた。主演のひとり、伊勢谷友介ってなんか悪いことした人だよなと思い、不倫とかだったら観る気失せるなと調べてみると大麻だった。大麻ならまぁ私の中の倫理観ではセーフだったのでほっと一息。賭博と大麻はまあグレーゾーンだ。さておき「ペナルティループ」はそんな伊勢谷の復帰作であるらしい。

 『おはようございます。6月6日、月曜日。晴れ。今日の花はアイリス。花言葉は”希望”です』そんな文言がループの合図。出だしはサスペンスやミステリー風味、物語が進むにつれてヒューマンドラマの様相を呈してきて、感情がハラハラしたりジーンとしたり忙しかった。コメディ要素もふんだんにある。満足感がかなり高い。いい映画だこれは……。伊勢谷友介が禊とばかりにさまざまに殺されるのは可笑しかった。主要登場人物ほぼふたりでいろんなジャンルを演じていて、俳優の技量もすごい。人に勧めるとき、どういう映画と訊かれたら答えづらいのだけが難点だ。めっちゃ面白いから見ろという熱意でしか答えられない。

 ところで私の毎日の生活もペナルティループしている。悪いことは何もしてないのにね。あの、早く現実に戻してください。ここではないどこかに。

◆3月23日

  かつて彼はソウベルに、なぜそんなにたくさん本を読むのか、とたずねてみた。ところがこの職人は答えることができなかった。あんたはどこか大学で勉強したことがあるのかい、ともきいてみたが、ソウベルは頭を振っただけであった。読むのは知るためだ、と彼はいった。だけど、知るって、何をだい、と靴屋は問いつめてみた。知るって、何のためにかね。だが、ソウベルはひとことも説明しなかったのだ。そのことは、彼が変人だからあんなに多読なのだという証拠になった。

バーナード・マラマッド「魔法のたる」(角川文庫)所収「最初の七年間」

◆3月24日

 そのことは考えまいとしているのだが、二十九歳だというのにトミー・カスタリの生活は、わめき出したくなるほど退屈だった。

バーナード・マラマッド「魔法のたる」(角川文庫)所収「ろうや」

 この一篇、冒頭はすごく親近感がわいたが、続く地の文で主人公の妻が出てくるので悲しかった。私も二十九歳だというのに、右から左へ流れ去る日々が退屈だというのに、妻、その一点でカスタリが殿上人に思える。妻のいる生活が退屈なら、妻のいない俺の生活は、いったいなんだ? 早く。早く俺をどこかに連れてってくれ。頼むよ。落ち葉をごそっと攫うように私をどこかに。この退屈な、労働しかない、幸せとは縁遠い毎日の連鎖をぷっつりと断ち切って、人並みの幸せをこの手に。

◆3月25日


 おはようございます。3月25日、月曜日。晴れ。今日の花はアルストロメリア。花言葉は”未来への憧れ”です。

 大谷翔平が私に金を無心してきたら貸せるように五万おろした。翔平、困っているときはお互い様だぞ。

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