はじめまして！　今日から新社会人になったnanaと申します！

　私は某食品メーカーの事務職としてこの春から社会人の仲間入りしました。
　今日は入社式で、都内のホテルの大きな講堂を借り切って、会社の上役の方々が一堂にそろっていました。私からすると天の上の人たちが壇上に立って、これから私たちがどう振る舞っていくべきか、さまざまに薫陶を頂きました。
　そのうちの一名の言葉は特に心に残っています。「日本古来の書物、古事記によると――」低く透る声で「はたらく、という言葉は傍を楽にする、という語源であるそうです。皆様にとって明日からの”はたらく”が、周囲の人を助ける、楽にしていく、そういう営為になるよう、尽力していただければと思います」
　私もしゃんと背を正して、ただただ聞き入っていました。
　そしてグループの会長さんが、最後に登壇しました。「皆様は今年入社した若人、今年はタツ年であります」威厳のある声で「これからこの会社を背負ってタツ、という心持ちで、明日から研修に励んでいただきたいと思っております」
　そんなふうな軽い洒落を交えたスピーチに、それまで硬くなっていた体がすこしほぐれて、新入社員の席からも忍び笑いがちらほら。ユーモアを交えて感じがすごく良くて、私の緊張もすこしは解けていきました。

　私は「答辞」という大役を任されていました。新入社員の一人から、各役員の方々の激励を受けて、最後に入社式を締める役割。前もって原稿は渡されてあって、じっさいはそれを読み上げるだけです。けれどいざその瞬間が一刻と近づくにつれて、私の心臓は張り裂けそうなくらいどくんどくんとしていました。

　会長のスピーチが終わります。私の番だ。体がまたぎゅっと強張って、背中に変な汗が流れます。

　――新入社員を代表して答辞に移ります。

　そんなアナウンスが流れました。

　はいっ！

　私の声は自分でもわかるくらいに上ずっていて、やり直せるならやり直したくて、けれど私の体は立ち上がって、ステージのほうに歩いていっていました。自分の動きではないみたいな気分。私は何かに流されていくみたいに、壇上に立ちました。花を飾った卓を挟んで、会長さんの目の前に立ち止まります。

「本日はわたくしども新入社員のためにかかる盛大な入社式を催していただき――」内心のテンパり具合に反して私の口は動きました。「――誠にありがとうございます。（息継ぎ）本日より晴れて社会人の一員となりました我々、まだ右も左もわかりませんが……」

　読みあげながら、会長さんと目が合います。それはたとえば自分のお父さんやお母さん、あるいは学生時代に出会ったきた大人の人たちとは違う、歴戦の猛者とでもいうのでしょうか、この世の中をしっかりと生きぬいてきた人の眼でした。

「……〇△グループの一員としてその名に恥じぬよう尽力して……」

　私の口はつらつらと読み上げていきます。

「……明日から諸先輩方のご指導およびご鞭撻を受け……」

　目と目はずっと合っていました。もとより原稿の内容は諳んじられるくらい練習していましたから、手にした原稿を見ずともなんとかなります。

　読み上げながら、私は、このまま終わるのはイヤだと思いました。人事部の方から準備された文言を読みあげてはいおしまい、というのは、すこし、寂しい。

「……職務に邁進してゆく所存です」

　以降は改めての感謝のパート。付け加えるならここしかない。私はまばたきをひとつして、即興で、一息で、一気に、

「そうしていずれは食品業界を背負ってタツ、日本を背負ってタツ、そんな存在になれるよう志していきたいと思っております」

　会長さんの口角がすこし上がって、私もにこりと返しました。

　私はそのあと、原稿通りの締めの感謝の言葉を口にして、壇上から降りました。

　散会となり、人事の方々が新入社員のほうに近づいてきます。みんなお疲れさま、とかそういうふうに寿いで。私は、変に自分の言葉を追加してしまったのが怒られないかとひやひやしてました。

　すると人事の女性の方が一人、私のほうに。

「アドリブよかったよ」

　と、その一言で私は救われた気がして。すこし、泣きそうになりました。

　新入社員は明日から本社研修で、今日はこのまま解散となるようでした。私は内定式のときから仲良くなった同期の子と一緒に帰りました。答辞がんばったね、と言われて、ありがとうと私は応えて、少し早い夕飯にふたりで向かいました。

　
　振り返ると、新社会人の一日目、私は大したことはやっていなくて、けれどもどっと疲れています。明日からの研修ではどんな経験をするのか、それが怖いようでも楽しみでもあります。ともあれ大人としての第一歩をきちんと踏み出せたような気がして、私にとって今日は忘れられない一日になりそうです。

　改めまして、nanaです！　今日から新社会人、これからたくさん学んでいく日々になると思います。そこで得た知識やもろもろを忘れないように、noteをはじめました！　
　ここには業種こそ違えどたくさんの先人の方々がいるかと思います。みなさまの記事を読んでたくさん勉強して、社会の荒波に揉まれながらも、これからも頑張っていきたいです！　
　
　応援よろしくお願いします！