誕生日なのだ。誰のなのだ？　Happy batrthday to me! なのだ。つづりはこれで合っているのだ？　ひさびさに英語を書いたから不安なのだ。でも間違えていても誕生日だから許されるのだ。誕生日ってそういう日なのだ。

　29歳になるのだ。なったのだ。ありがとうなのだ。おかげさまでなのだ。ようやくというかとうとうというか29歳なのだ。みんな褒めてくれていいのだ。誕生日おめでとうというコメント待っているのだ。いいねくれなのだ。マイリスも待っているのだ。amazonの干し芋リストも公開しておくのだ。たくさんプレゼントがほしいのだ。何がほしいのだ？　何がほしいのだ？　何がほしかったのだ？　何がほしかったのだ？　小さいころにはたくさんほしいものがあったのだ。wiiが欲しかったのだ。高いシャーペンが欲しかったのだ。強いデュエルマスターズカードのレアカードが欲しかったのだ。今はけれどそのどれもいらないのだ。ゲームは趣味じゃないのだ。シャーペンを使うような仕事をしていないのだ。デュエマはクロスギアで止まっているのだ。ならば今、この瞬間、いちばん欲しているものは何なのだ？　決まっているのだ。家庭なのだ。amazonに売ってあれば言い値で買うのだ。プライムセールで売りに出されていたら教えてほしいのだ！

　父親がいるのだ。そりゃあ誰にでもいるのだ。うちの父親は、子供が生まれた瞬間に、奥さんと子供を養う自信がないと言って自殺しようとしたのだ。母親から何度も聞かされたのだ。子どもの時分には、ろくでもない父親だと、自らの産みの片翼を想像したりしたのだ。けれど改めて29歳になって、父親の気持ちが分かったのだ。分かったとしても、伝える手段はないのだ。一方通行的に相手の心を想像しながら、お人形遊びをしているのだ。

　その後も父親が性犯罪したりしたので、ただでさえ僻地の生まれ、もし自分が女の子だったらかわいそうランキングでは上位だったのだけれども、あいにく一人息子だから、狙うは西村賢太枠しかないのだ。中卒で風俗狂いの芥川賞作家なのだ。賢太のようにふてぶてしく生きて好き勝手ふるまうのだ。ふてぶてしく生きて好き勝手ふるまってきたのだ。疲れたのだ。家庭がほしいのだ。それだけだったのだ。自分の父親よりもまともな家庭を作ろうと思ったのだ。子どもの笑顔で生活を埋め尽くしたいと思ったのだ。しかしそれがどうだ、なのだ。父親にさえなれず女にさえ相手にされず孤独をかこちやせ細る毎日なのだ。背水の陣、なんてことばは手遅れなのだ。聞こえるのだ？　聞こえないのだ？　この足元今にもひび割れくずれおちる背後には深い深い海その絶え間なく寄せては返しこちらを呑み込もうとする波の音、いっそこのまま沈んでしまえれば楽だろうに生来の生き意地の汚さ父親譲りの性分が、四半世紀を過ぎてなお、こうして生きているのか死んでいるのか判然としない毎日を、どうにか取りつないでいるのだ。こんな下種の血に生かされたくはなかったのだ。だけどオケラだってミミズだってアメンボだってみんなみんな生きているからその力に少しあやかりたいという下世話な一心、いつでも溺れて構わないと半ばあきらめた心持ちで、あがいているのだ。

　家庭を目標にしていない人たちがたやすく家庭を築いているのを目の当たりにすると吐き気がするのだ。どこで何を間違ったのだ？　教えてほしいのだ。たしかに何度も正着を取らない場面はあったのだ。けれどそれがこんなに影響を及ぼすのだ？　これがゲームだったらすぐにリセマラするのだ。データを消去するのだ。次は生まれは日本の、内地がいいのだ。最低限大学卒の両親ともにそろっている家庭がいいのだ。女の子がいいのだ。これは人生で培ってきた嫌悪と偏見のたまものなのだ。輪廻転生なのだ。こんな☆２の人生とはさっさとおさらばして☆６か☆５を目指すのだ。上の条件だったら☆６には届かなくても☆５なのだ。どう転んでも生きていけると思うのだ。

　けれど人生はゲームじゃないから☆２のまま生きていくのだ。☆１を見下すことをせめてものよすがとしているのだ。そうしてとうとう29歳なのだ。ハッピーバースデーなのだ。けれども精神年齢は実年齢にだいぶ見合っていないのだ。積もり積もった不平不満、やるかたのない無力感、そういう消極的な感情をひとつまたひとつと抱えて、どこかせめて一息つける場所を求めているのだ。最近は街中のどの場所にもベンチがないので一息つくこともまともにできずにおうちに持って帰るのだ。何ゴミなのだ？　燃えるのだ？　燃えないのだ？　くすぶってはいるのだ。臭いことだけは確かなのだ。