反省の反対の小野
『反省』という単語には明確な対義語が存在しない
『盲進』『増長』『居直る』『慢心』『自賛』
調べれば対義語として幾つかの単語が挙げられるがー、
反省の反対=『 ? 』
今回の場合は『何』が当てはまるのだろうか…
ー裏話ー
その全てを語る上で、自分の身の上を多少なりとも知ってもらう必要がある。
時は遡り、2017年6月。その年は劇団Summer Summer『クロノス』に客演として参加。同年7月には盛岡市民演劇賞を受賞する事となる。更に言えば、2007年に参加したワイヤーワークの『ゴールデン⭐︎ドーン』そして記憶に新しい2020年。劇団Summer Summer『水平線の歩き方』これらも盛岡市民演劇賞受賞作品であり、関わらせてもらった。身の丈に合わない自分が、これらの作品に触れられたこと、とても誇らしく思う。
2018年。花巻市自主制作映画『ネクタイを締めた百姓一揆』ソガワ役で出演。なんの間違いなのか門真国際映画祭2018において、助演男優賞にノミネートされる。
2019年。自劇団、劇団天体望遠鏡『名も無い星は、僕の星』38歳にして人前でスカートをはく。
自分を語る上でと述べたが、前述には1つの大きなピースが欠けている。それはー、
『千田秀幸』である。
劇団Summer Summerの主宰、小笠原利弥と自分を引き合わせてくれたのも、ネクタイ映画に出るのを面倒くさがり嫌がる自分を、言葉巧みに騙して裏切り、出演させやがったのも、転職して間もない時期、情緒不安定な俺の背中を支え、自信持って人前でスカートがはけたのも全てー、
千田先生、その人のお陰なのである。(以後、先生と呼称)
自分の演劇人生は全て先生の影を踏んでいたと思う。
それ程に影響力があり、進むべき先を示してくれたのは先生に他ならない。
そんな先生が2020年から音信不通となる。
厳密には2019年の12月頃と記憶しているが、それから約1年間、連絡という連絡が無かった。
俺は何か失礼な事をしたのか?
それとも事故にでも遭われてしまったのか?
理由がわからないまま月日は流れー。
2020年1月某日。唐突に先生からの連絡が入る。
しかし、その内容は自分にとって辛いものだった。
『お前とはもう会わない。いや、会えない』
理由を聞いたが、更に意味が分からなくなった…。
…。
今の自分は、その時の先生に発した言葉を恥じる。
何故、己の事のみを考え、先生の気持ちを汲むことが出来なかったのかと…。
今の自分なら分かる。その時の先生は俺の為に自分を犠牲にし、俺を遠ざけようと、助けようとしていたのだ。
今になって先生の『言葉』を理解するー。
そう、俺は先生に会ってはならない。
もし、会ってしまったなら、
俺は先生を殺してしまうのだからー。
劇団天体望遠鏡
旗揚20周年
第16回公演『賛成の天体2021』
2021年4月。昨年より続いた『コロナ禍』が猛威を奮い、未だ収束の目処が立たない不釣り合いな春の季節。そんな状況下でありながら、代表川辺は天体稽古の開始を宣言した。
不安が拭えぬ状況でありながら、団員、参加者は笑顔を絶やさない。目に見えぬコロナに怯え、一同、心中穏やかでは無かったと思う。自分もその内の1人であろう。
だが、自分には別の思惑もあった。
先生の一件である。
先生のあの言葉に納得がいかず、何度も会えないかと連絡を入れたのは今でも覚えている。
その甲斐あってか、先生の方が折れ、会うことを約束してくれた。
その時ー、
季節は春から夏へと変わっていた…。
稽古の終わりに先生の家を訪れ、そして部屋へと向かう。そのときの連れに、今回の客演として参加している劇団ボンボヤージュ切っての美青年、菊地淳也。そして天体マドンナ、通称『めぐ姉』を連れて行った。
自分から願い出た事ではあったがー、内心、1人で会う勇気が無かったのだ。
久しぶりに先生のお顔を拝見する。
我ら3人を迎え入れた時、半裸。
女性を前にしても、放屁。
そして、ダルそうに寝タバコ…。
いつもの…、普段通りの先生ではある。
だがー、
連れの2人はその姿に呆れ返っていたが、俺には直ぐに分かった。
『先生は演技をしている…』
俺は注意深く観察する。五感を研ぎ澄ませ、更には第六感を持ってして先生の全てを隈なく注視するー。
ーー。
先生は衰弱している。
それを我々に悟られまいと演じている。
そう、先生は病床に伏していた。
ーー。
自分はあの時の先生の言葉を思い出す…。
2020年1月某日ー
先生
『お前とはもう会わない。いや、会えない』
小野
『何でだよ先生!』
先生
『言っても理解出来ねーと思うぞ』
小野
『言わなきゃ理解出来るものも出来ませんて』
先生
『…』
小野
『先生っ‼︎』
数刻の沈黙の後。先生は重い口を開く…。
そして、俺はそれに対して発した言葉を恥じる…。
先生
『俺、笑うと死にそうになるぅ〜』
小野
『ハァ⤴︎何スカソレェ〜⁉︎笑』
先生は嘘はついていなかった…。
先生は死にかけていた。
続くー
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