「翻訳を勉強する会」 #公開勉強会1110に参加しました

11月10日に大阪で開催された「翻訳を勉強する会」公開勉強会に参加してきました。昨年関西在住の個人翻訳者数名で自主勉強会を立ち上げられ、毎月集まって勉強しておられる様子は、会のメンバーであり公設第一秘書ことsayoさんの「屋根裏通信」で興味深く拝見していました。翻訳分野を問わない、全員参加型の英文和訳勉強会。会でふだんやっておられることを紹介し、実際に体験できる会を企画されるとのこと。ぜひとも参加したいと思い、大阪行きを決めました。

もう、とにかく楽しくて、面白くて、あったかくて、最高にステキな勉強会でした。10日経った今も、余韻に浸っています。

当日の様子は、sayoさんがいくつかの記事にまとめておられます。

公開勉強会終了しました-Side運営

公開勉強会終了しました-Side一翻訳者

公開勉強会-おまけ

また、記事中にリンクのある齊藤貴昭(Terry Saito)さんの「翻訳横丁の裏路地」、関連ツイートをまとめたTogetter「20181110翻訳を勉強する会(仮)関連ツイートまとめ」でも当日の様子をまとめてくださっています。

以下、私なりに感じたこと、特に感銘を受けたところを思いつくままに書きたいと思います。

翻訳そのものを学ぶ会

会のはじめに、管理人さんより、本会の趣旨についてお話がありました。翻訳関連のセミナーやイベントでは、ツールや単価の話など、翻訳の周辺についての話題が多い。翻訳そのものを学ぶ会を始めたいと思ったのが、勉強会を立ち上げた動機だったそうです。機械翻訳技術が進むこの時代、翻訳者がしっかりとした翻訳の土台を築く必要性はいっそう高まっている。そのためにも、プロの翻訳者が翻訳を勉強する会はぜひ続けていきたい。管理人さんは、ご自身が始めた会をきっかけに、全国にこのような勉強会が広まれば、と願い、公開勉強会を企画したとのこと。このお話には、深く感銘を受けました。

翻訳のための要約

日頃の勉強会では、和訳に取りかかる前段階として、洋書の各パラグラフを要約しているそうです。会の前半では、要約の目的や具体的な方法について、詳しい解説がありました。翻訳のための要約とは、原文と訳文の間に位置するもので、原文にある作者の考えや描写を明らかにすることが目的。学校で習う要約とは異なり、翻訳作業をスムーズに進めるための準備として要約をすることが必要。

これは、どの分野の翻訳にも当てはまる、大切な考え方ではないかと思いました。「木を見て森を見ず」「森を見て木を見ず」どちらになってもダメ。要約によって森の全体地図を捉え、その後、個々の木や葉、枝、実をていねいに観察することが大事ということだと理解しました。翻訳を始めるにあたって全体像を把握することが目的であり、要約そのものが目的になってはならない。翻訳に限らず、小説を書くときのプロットや、映像やアニメーション制作の絵コンテ作りなどとも共通する話ではないでしょうか。翻訳中は、つい木を見すぎて迷子になってしまいがちですが、森を見て、木も見る翻訳を心がけようと思いました。

私もここ数年間参加してきた翻訳の勉強会で、原文パラグラフをそれぞれ1文程度にまとめ、その後翻訳に取りかかる、という課題に取り組んでいました。その根っこにある考え方は、今回の公開勉強会と同じです。しかし、今回の会での管理人さんの解説は、他では決して聞くことのできないお話だったと思います。それは、管理人さん自身が徹底して研究してこられたことに加え、約1年間勉強会のみなさんと議論を重ねてきたからこそ。ご自身の言葉で語られるお話には、とても説得力がありました。翻訳の基本であり、とても大事なことを、あらためて教えていただきました。

本を読むことの大切さ

勉強会では英文和訳のほかに、翻訳の情報交換の一環として、メンバー全員が本を紹介し合う、という試みもしているそうです。本気で学んでおられる姿勢が伝わり、刺激を受けました。管理人さんは月に最低10冊以上は、文法や日本語文章作法の本など翻訳に関連する書籍を読んでいるそうです。どれくらい読んでますか? 本を読むのは大切ですよ、の問いかけに、下を向くしかなかった私。そういえば私が今年になって翻訳者同士の読書会を始めたきっかけのひとつは、ひとりでは読めないむずかしい本もみんなで集まれば読み通せるかもしれない、というヘタレで不純な動機でした......。

会の終わりには、管理人さんおすすめの参考書籍を簡単に紹介してくださいました。それぞれの本のどんな点が参考になるか、ポイントを押さえた解説を聞き、すぐにも読みたいと思わされました。もちろんこのリストは、管理人さんがこれまでに読んでこられた膨大な書籍のごく一部に過ぎないはずです。管理人さん自身、この2年間で翻訳に関する本を誰よりも読んできたという自負があります、と仰っていました。管理人さんご自身の言葉で語る翻訳のお話を聞くと、その言葉に偽りはないことがうかがえました。私はというと、参考書籍の中には持っている本もありましたが、ほとんどが未読、読みかけのまま。さっそく読み進めなくてはと痛感させられました。

温かい雰囲気の中で

とにかく終始笑いに満ちた和やかな会でした。本記事のトップに載せた画像は、会のはじめに、主宰者の方から参加者全員に配られたお菓子です。また、主宰のみなさんをはじめ、参加者ひとりひとりが自己紹介をする時間がありました。お互いのバックグラウンドやジャンル、経験年数をはじめ、楽しいエピソードを知る時間は、翻訳の対等な議論をするために欠かせないものだったと思います。おかげで、休憩時間には名刺交換をして、初対面の方々とも大勢お話することができました。数年前まで翻訳のイベントに参加しても知り合いがほとんどおらず、1人ぽつんとしていたことを思うと夢のようです。この日の大阪のお天気そのもの、秋の陽だまりのようにぽかぽかと心温まる会でした。

ずっと続いていくもの 勉強会のもうひとつの意義

その後もSNSなどでつながった参加者のみなさんと、楽しかったね、また一緒に勉強したいねという言葉を交わしています。本番の仕事ではないところで、同じ課題文を解き、一緒に議論をし合ったからだと思います。机を並べて勉強し、翻訳ど真ん中の議論をした翻訳者とは、その後もずっと信頼関係が続く。これまで先輩方の背中を見てそう学んできましたし、私自身ここ数年で実感していることでもあります。今回の公開勉強会、かけがえのない経験のひとつになりました。

これほどに温かくも和やかな雰囲気、なかなか作り出せるものではありません。管理人さんをはじめ主宰のお三方が綿密に打ち合わせを繰り返し、会の企画準備を進めて下さったおかげだと思います。

同じ個人翻訳者として、これほどの会を開いて下さったことには感謝してもしきれません。今も当日を振り返ると、温かい気持ちになります。これからも、ひとりで翻訳する中で、悩んだとき行き詰まったとき、この会のことをたびたび思い出すことでしょう。

「翻訳を勉強する会」では、第2期目スタートに向けて、新たにメンバーを募集しておられます。出席回数など会則を見ると、中途半端な気持ちでは参加できない会のようではあります。ですが、翻訳技術を高めようと本気で思うなら、仕事と同等以上に勉強の時間を確保して、一時期自分を追いこむ必要があるのは確かです。これを主宰・運営するみなさんの覚悟と労力には、つくづく頭が下がります。東京ー大阪と離れているため、毎月の参加は残念ながら難しいですが、このように翻訳を真剣に学ぶみなさんと、またいつか、ご一緒に勉強したいと願わずにいられません。また、私自身も、プロの翻訳者が学び合う機会について、自分なりにできることを探ってみたいと思いました。

[追記]

この素晴らしい勉強会が東京でも開催される運びとなりました。「翻訳を勉強する会」管理人さんと第一秘書さん、第二秘書さんのお三方をお招きして翻訳勉強会を行います。

3月3日(日)午後、都内にて。詳細は追ってお知らせします。


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YasukoHoshino

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