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『風の名はアムネジア』

The 3rd of 7 Days Book Cover Challenge.

『風の名はアムネジア』
菊地秀行 著

全人類を未曾有の災害が襲い、荒廃した世界を1人の少年と1人の女性が旅する、という、銀河鉄道777のような、よくあるディストピア小説ではあるものの、お得意のエログロナンセンスな部分も含めて、菊地秀行さんはこれこそがいちばんの作品であり、他は『吸血鬼ハンターD』含め、全て自作の劣化コピーだったんじゃないか、と思ってしまうほど、長年経っても手離せない、力のある作品。

私がこの本を読んだのは高校生、当時付き合っていた大学生からのプレゼントであった。
彼は私に多くの書籍や映画を教えてくれたが、私の書く文章をことごとく貶すので、いつしか私は「文章を書きたい」という夢を失い、親に強いられた進路も嫌になり、勉学全てに興味を失い、家に閉じこもるようになった。

そんな私を友人たちが新しい世界に引き出してくれ、メンターでもあった恋人に別れを告げた時、

「俺は自分も物書きになりたかったが、君の文章を読んで夢を砕かれた。育ててやりたいという気持ちと、嫉妬で潰してやりたい気持ちがいつもあった」

と言われ、薄々気づいていた、彼の卑屈で歪んだ愛憎によって、自分の中にあった何かを壊されたんだ、と悟った。

思春期の少女にとって、親よりも歳が近く、しかしまだ見ぬ世界を知っている存在は神にも等しい。それだけに、周りの大人たちはよくよく気をつけてあげて欲しい。どんなに大人びていようと、彼らは子どもなのだから。

新型コロナウイルスにより、多くの子どもたち、若い人たちが学ぶ機会を奪われている。社会も大きく変わる。
彼らに荒廃した世界を歩かせるのか、未来を作る力を与えるのか、いまこそ、我々大人が本気で取り組まないといけないのではないだろうか。

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