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読書感想『ブルーバード、ブルーバード』

“Bluebird, Bluebird”
by Attica Locke
『ブルーバード、ブルーバード』
アッティカ・ロック 著
高山真由美 訳

テキサスの小さな町で2人の他殺死体が発見される。1人は都会で弁護士をしていた黒人男性。もう1人は地元のバーでウェイトレスをしていた白人女性。友人から依頼され、しぶしぶ調査にやってきた停職中の黒人テキサス・レンジャーであるダレンは、事件に関わる内に自分の抱える問題にも対峙せざるを得なくなるが…

ハヤカワミステリ、そして翻訳が高山さんときて、面白くないはずがない!と意気込んで図書館から借りたら、思った以上に面白くて読むのをやめられず、あっという間に読み終えた。

アフリカ系アメリカ人への根強い人種差別が残る南部を舞台にした、で始まると、「あ、またか」と安易な人種差別問題だけのステレオタイプな作品に思われてしまうだろうが、この作品はそれだけでは終わらない。
現代を生きるインテリ層の有色人種が持つ独特の悩みや、同じ有色人種のアメリカ人でも、生まれ育った地域が違うと、こんなにも意識が違うかね?という格差や断裂という問題も描かれており、そこへまた、それらを全て取り払っても、基本的に人間は弱くて愚かで哀しいという真実が突きつけられていくのだが、なぜか、読後は後味が悪いというよりは、諦観のようものを感じてしまう、かなり読み応えのある、骨太な作品だった。
同じ南部が舞台でも、先日読んだ『ザ・プロフェッサー』より、こちらの方が数段素晴らしいと思う。
この作家の他の作品も読んでみなければなるまい。

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