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日本の有料放送を思う

digitalstudioから面白い記事を見つけました。"What Lies in Store for the Media Box Market in 2020 and Beyond?"というFuturesourceのリサーチ記事です。有料放送がストリーミングにより劣勢に立っているが、多くはまだトラディショナルメディア(放送)とIP(インターネット)とをSTB経由で設置しているハイブリッド型だということ。STBを低価格にして、今まで届かなかった世帯へ有料放送を普及させていく手もあるが、なかなか難しい。更に言えば、安価で開発のしやすいAndroid OSに代表されるように、SVODを中心としたプレイヤーが増えてくれば、自然とアプリがシームレスに操作する方を選択される。また、いくら放送局が疑似OTT(自分たちの放送コンテンツの一部をオンデマンドで配信して、スマートデバイスで展開する)ことに挑戦し続けたとしても、デバイスの発展に対するノウハウの蓄積がないので、前途多難ではあるだろう、と。

アメリカやヨーロッパを対象にしている記事なので、日本人にはあまり実感のない記事かもしれない。ただ、同じようなことは実は起きている。STBと言えば、J:COMのようなケーブルテレビ会社は、Blu-rayを付けたり、4Kを観れるようにして高額なSTBを開発しては、加入者を増やそうと努力してきた。そして、今はJ:COMにはJ:COMオンデマンドが必須であるように、放送とIPとをフィーチャーしたいわゆる「ハイブリッド」型で加入者を増やそうとしている。そしてそこには、疑似OTTである、各専門チャンネルのオンデマンドサービスが並んでいる。

疑似OTTと言えば、アマゾンチャンネルも同様の発送だ。映画専門の有料チャンネルであるスターチャンネルは、スカパーやJ:COMだけでなく、アマゾンでIP同時再送信型でスターチャンネルEXというIP放送を数年前から展開している。編成されたコンテンツの見逃し配信は、もちろんアマゾンプライム上で視聴可能だ。察するに、放送をメインにしているように見えるが、99.99%の加入者の目的は、間違いなく、アマゾンで見られるスターチャンネルEXの見逃し配信の為に加入していると思われる。

日本でもコードカットのような現象がが叫ばれる中、有料放送は疑似OTTに固執して加入促進すればよいだろうのか?私はそうではないと思っている。元々日本では専門チャンネルが多チャンネルサービスの中心であったのに、なんだか0.x%の視聴率を争う為に、内容を浅く幅広げすぎて、何をコアにした編成なのか見失っている局が多い気がしている。Takarazukaスカイステージが示すように、ターゲットである視聴者が誰なのかを知り、彼らに求めるものに忠実に答えて、期待の二歩先を行くのが編成型の放送の醍醐味と感動であると思う。番組と番組との間のインタースティシャルやインフォマーシャル、そして情報番組にこだわってこそ、それが視聴促進させるのだという基本は、昔からあったはずだ。その魅力で、〇月〇日〇時に放送されることを加入者に意識させ、時間通りに視聴や録画へと導くのだ。放送局による疑似OTTは、あくまでもプロモーションであって、本丸の放送をおろそかにしてはならないと思っている。逆転したら、それはただの安っぽいオンデマンドサービスだ。そして放送編成は巨大な無駄なコストになってしまう。それで局と言えるだろうか?デジタルに放送局が放つニュース性や24時間の演出を真似できないように、その逆もしかりなのです。

コードカット:少し前のアメリカでの生活を言うと、引っ越した際には、必ずテレビの多チャンネル契約をする。迷うのは、HBOのような高額のチャンネルをいくつ入れるかというもの。つまり、アメリカのほとんどの家庭がケーブルテレビや衛星放送といった有料放送に契約していた。Netflixなどのストリーミングサービスの発展により、この有料放送契約が顕著に打ち切られているということを「コードカット」と呼びます。


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