遺言〜あなたの想い、伝わってますか?〜

趣味的に書いた台本です。上演してくれる人がいたら是非ご一報下さい。



(過去。仲の良い子供達の声)
(「お父さん」と呼びかける声。子供から大人に変わる)

心音停止SE

(天国への入り口)

正雄、天国への入り口に立っている。
目を開けるも、何が起きたのかわからず困惑。

正雄「ここは…?」

天使「ようこそいらっしゃいました」

突然の声に驚く正雄。

正雄「誰だ?」

天使「私は天国への案内をする者です。あなたが知ってる言葉でわかりやすく言えば、「天使」ですね」

正雄「天使…天国?」

天使「あなたはお亡くなりになったのです」

正雄「(気づく)そうか、おれは、死んだのか…」

天使「工藤正雄さん。改めまして、お勤めご苦労様でした」

正雄「ここは、あの世…?」

天使「その入り口になります」

正雄「(はっとして)じゃ、じゃあ、ここがあの世なら、貴子もいるのか?貴子に会えるのか⁈」

天使「少々お待ちください(キーボードを叩く音)…ああ、奥様の方が先にいらしてたんですね」

正雄「ここにいるのか!」

天使「ええ、いらっしゃいますよ。ただ、お会いになる前にいくつか手順を踏んでいただかないと」

正雄「手順…?」

天使「正式に天国の住人になっていただくために必要な手順です」

正雄「…何をすればいいんだ?」

天使「そうですねー。とりあえずサインをいただきたい書類がたくさんあるので…」

正雄「しょ、書類?」

天使「ハンコはまだお持ちでないでしょうから、早めに作っておいてくださいね。なにかと必要ですから」

正雄「ハンコ⁈」

天使「どうかされました?」

正雄「いや、ただ…なんというか…イメージと違うというか…なんか役所みたいな…」

天使「ああ、多いんですよねー。勘違いされてる方。天国っていったらフワフワ雲の上で、白い衣を着た天使が飛んでて…みたいな」

正雄「そうそう、そうだよ!そういうもんだろ?」

天使「そんなわけありませんよ。大勢の方が暮らすんですから。ちゃんと決まりを守ってもらわないと」

正雄「なんか…納得いかないな…」
(無意識に頭をかく。その時ふと気づく)
「…髪がある…!」

天使「ああ、お話ししてませんでしたね。(キーボードを叩く音。エンターキー)
ポケットに手を入れてもらえますか」

正雄「…そういえば、なんでおれスーツ着てるんだ?」
(ポケットに手を入れると、何かあるのに気づき、取り出す。鏡が出てくる)

正雄「…若返ってる⁈」

天使「亡くなった後はみなさん、一番輝いていた時代の姿になります。それは人によってまちまちですが。あなたの場合は、お仕事が一番調子良かったころのようですね」

正雄「ああ、そうか…ちょうど課長になったころかな。懐かしい…」(顔を愛おしげに触る)

天使「銀行員時代を思い出されましたか?」

正雄「(驚き)そんなことも知ってるのか⁈」

天使「ええ。いらっしゃる前に、ちゃんと確認させていただきましたから。工藤正雄さん。元銀行員。奥様は…先ほどお話がありましたね、30年ほど前にお亡くなりに。お子さんは3人。お孫さんは2人。初体験は高校2年の時同級生のヒロコちゃんと。それから…」

正雄「わ、わかった、もういいよ!」

天使「よろしいですか?」

正雄「…で、なんだっけ?書類にサインすればいいんだっけ?」

天使「ええ、それもあるのですが、その前に大事なことが」

正雄「…何だよ」

天使「現世への未練をなくしていただくことです」

正雄「未練…?」

天使「はい。サービスです。以前よくいらっしゃるんですよ、まだ行きたくない、ってゴネる方が。そうして現世に居座っちゃって。ええと、あなたにわかりやすく言うと…幽霊、ですかね。それが現世の方に見えた姿が、心霊写真、なんて言いますよね?」

正雄「ああ、そういや拓也が小さい頃、そんなもの見てはしゃいでたな…」

天使「そういうことがないように、ちゃんと未練をなくした上で、こちらに来ていただくよう、ケアをするのも私達の仕事なのです」

正雄「(考えて)いや、でも…おれは未練なんてないよ。貴子に死なれたのは辛かったけど、子供達も無事に育ってくれたし、みんな仲良くやってるから…問題ないよ」

天使「本当にそうでしょうか?」

正雄「え?」

天使「よくあるんですよ。ウチは問題ない、みんな仲良いからっていう家にかぎって、亡くなられた後ご遺族が揉めちゃうのが」

正雄「な…ウチの子たちが揉めるっていうのか、あんた!」

天使「そういうことがよくあると申しているのです」

正雄「失礼な!ウチの子たちにかぎって、そんなことはない!大体、揉めるような問題なんてないよ!」

天使「じゃあご覧になってみますか?」

正雄「え…?」

天使「あなたが亡くなった後のご家族の様子を」

正雄「そんなことできるのか!」

天使「サービスの一環で」

正雄「よし!じゃあ見せてくれ!ウチの子たちがどれだけうまくやってるか、あんたも見るといい!」

天使「…わかりました。少々お待ちください」

(キーボードを叩く音。光。)

正雄「おお、あれは…ウチだ…」

(正雄の家。今は雅美一家が住んでいる。兄弟三人が集まっている。声)

洋一「…だから言っただろ。隠してるものなんて何も無いって」

正雄「洋一…」

拓也「どうだか。兄貴はいつも兄貴ヅラして自分に都合のいいように仕切るからな」

正雄「拓也…」

雅美「やめなさいよ拓也。そういう言い方」

正雄「雅美…」

洋一「とにかく、残ってるのはこの家と土地、それに預金。それだけだからな」

正雄「…あいつら、なんの話をしてるんだ?」

天使「『相続』についてじゃないですか?」

正雄「…相続?」

洋一(努めて冷静に)「…でだ。親父の遺言がない以上、この遺産は俺たち3人で話し合って分け合うことになる。さしあたりこの家は雅美が住んでるわけだから、残った預金を俺と拓也で…」

拓也「ちょっと待った」

洋一「何だよ」

拓也「取り分は平等にするのが原則だろ?だったら俺もこの家の1/3はもらう権利があるよな?」

雅美「ちょっと拓也、あたし達にこの家から出て行けって言うの⁈」

拓也「落ち着けよ姉ちゃん。そうは言ってないさ。ただもらえるものはもらわないと、ってことだよ」

洋一「そんなことしてどうするつもりだ」

拓也「おいおい、人を一方的に悪者にするのかよ?俺はただ、兄弟3人で平等に分けるべきだろ、って言ってるだけさ」

雅美「何よ!だいたいね、あたしがお父さんの面倒をずっとみてきたのよ!あんたは見舞いにすら一度も来なかったくせに!」

拓也「仕方ないだろ、俺だって忙しかったんだ」

雅美「とにかく、単純に3等分なんておかしいわよ。何もしてないあんたが持っていくなんて。あたしがお父さんの、あれが食べたい、あれがしたいっていうわがままをどれだけ我慢してきたと思ってるのよ…」

正雄「雅美、お前そんな風に思ってたのか…」(ショックを受ける)

拓也「フン、自分が一番多く取るべきだ、とでも言いたげだな」

雅美「…何よ、その言い方」

拓也「知ってるんだぞ。姉ちゃん結婚するとき親父にだいぶ援助してもらったみたいじゃないか。法律ではそういうのは差っ引いた上で取り分を考えるんだったよな?」

雅美「な…あんた!」

拓也「親父の家に住んで、ずっと脛かじってきたんだ。そのへんはちゃんと考慮しないとなあ」

雅美「ちょっと、黙って聞いてりゃなによ!そんなこと言うなら、あんたが留年した時の学費は誰が出したと思ってんのよ!」

拓也「ちょ…学費を出すのは親の当然のつとめだろうが!」

雅美「偉そうに!所帯持ったこともないくせに!」

拓也「なんだと!」

洋一(割って入る)「やめないかお前たち。カネカネカネカネ、みっともないと思わないのか」

雅美「だって…!」

洋一「雅美、お前が親父のことで大変だったのはわかってる。俺だって感謝してるよ。落ち着けよ」

雅美「…」

洋一「拓也、お前も言い過ぎだ。だいたいな、みんながみんなお前みたいに好き勝手に生きてられるわけじゃないんだぞ。そんなんだから、いとこのマサカツみたいにいつまでたっても独身でフラフラしてるんだ」

拓也「…あいつと一緒にするなよ」

洋一「俺から言わせれば、同じ穴のムジナだ」

拓也(カチンとくる)「ケッ、俺だけは違う、みたいな顔してよく言うぜ」

洋一「…なんだと?」

拓也「今度栄治は私立の学校に入るそうじゃないか。兄貴の給料でやっていけるのか?ほんとは親父の金を一番あてにしてるんじゃないのか?」

洋一(動揺して)「な…どこでそんな話を!」

拓也「さあねえ。だが、そのあわてぶりは図星みたいだな」

洋一「だ、だいたいな、俺は長男だぞ!お前と違って家庭もある。少しくらいはもらっても…」

拓也「うわぁ出たぞ本音が。おい聞いたか姉ちゃん。偉そうに兄貴ヅラしといて、一番金に汚いのはこいつじゃねえか。この偽善者が」

雅美「ちょっと拓也、そういう言い方は…」

洋一「もう一度言ってみろ」

拓也「あ?」

正雄「やめろ拓也」

洋一「もう一度言ってみろ!」

正雄「よさないか洋一」

拓也「何度でも言ってやるよ。俺はお前のそういうところが昔から大嫌いだったんだよ、この偽善者が!」

洋一(爆発)「…きさまぁ!!」

雅美「ちょっとやめてよ二人とも!」

拓也「なんだよ、やんのかよ!」

(取っ組み合いが始まる。雅美はなんとか止めようとする。怒号が響く)

正雄「…やめろ」

(取っ組み合いが止まらない)

正雄「…やめろ」

(まだ取っ組み合いが続く)

正雄(爆発)「やめないか!!」

(三人驚いて静まり返る。間。)

拓也「…今、親父の声がしなかったか?」

洋一(動揺して)「な、何バカなこと言ってるんだ」

雅美(怯えて)「やだ、気味悪い…(気づく)もうこんな時間じゃない…ねえ、今日はもう終わりにしましょうよ。夕飯の支度もしなきゃいけないし…もう帰ってよ」

拓也「…そうだな。ちょいと熱くなりすぎたようだ。今日はこのへんにしとくか。…だけど、これだけは言っておくぜ。俺は泣き寝入りする気はないからな」

洋一「お前まだ…」

雅美(遮って)「二人ともやめてよ。もう帰ってったら!」

拓也「フン、じゃあな」

(拓也帰る)

雅美「…あたし、もう一度探してみる」

洋一「なんの話だよ」

雅美「やっぱりお父さん、何か残してるかもしれない」

洋一「だから親父の財産は…」

雅美「遺言書とかよ。あるかもしれない」

洋一「何言ってるんだ。散々探したんだろ?」

雅美「でも、お父さんこんな時のために、何か書き残してるかも」

洋一「親父はそういう人じゃないさ。そんなに家族のことに気が回る人間じゃない。お前だってわかってるはずだ」

(正雄、グサッとくる)

雅美「そんな…お父さんは」

洋一「もういい。そんな話は聞きたくない。親父はいないんだ。これは俺たちの問題なんだ」

雅美「…」

洋一「続きは来週やろう。また連絡する」

(洋一帰りかける)

洋一「…さっきはすまなかった。だけどな、俺はちゃんと納得のいく結論を出したい。あいつのわがままを黙って聞くつもりはない」

雅美「兄さん…」

洋一「必要とあれば、出るとこへ出てもいいと思っている」

雅美「そんな…」

洋一「…それじゃ」

(洋一帰る)

雅美「お父さんがいてくれたら…」

(光消える)

天使「…ね、言ったでしょう?よくあるんですよ、こういうの」

正雄「…なんなんだよ」

天使「え?」

正雄「なんなんだよお前たち!なんで喧嘩なんかするんだ!昔はあんなに仲良かったじゃないか…恥ずかしいと思わないのか!どいつもこいつも、自分のことしか考えないで…」

天使「そんなもんでしょ」

正雄「なに?」

天使「人間なんて、そんなもんでしょ。自分が一番大事なんです」

正雄「な…!」

天使「ましてやみなさん大人でしょ。それぞれ事情もありますよ。もう子供じゃないんだし」

正雄「うるさい!あんたになにがわかる!」

天使「わかりますよ。だって、あなた何もしてこなかったでしょ」

正雄「何を言うか!俺は必死で働いて、あの子達を養ってきたんだ!確かに、母親がいない分足りないところはあったかもしれないが、それでもあの子達はちゃんと大人になった!」

天使「いや、そうじゃなくて」

正雄「なに?」

天使「あなた亡くなった後のこと、考えてなかったでしょ?」

正雄「…死んだ後のこと?」

天使「あなた生きてる時、自分がいなくなった後のこと、真剣に考えたことがあるんですか?ないでしょう?それなら、ああなるのは当然ですよ」

正雄「それは…」

天使「何もしてないのに、いつまでも家族が仲良くいられるなんて思うのは、私から言わせれはただの傲慢ですよ」

正雄「…」

天使「まあ、娘さんは期待してたみたいですけど、お気の毒でしたね」

正雄「雅美…」

(うなだれる正雄。雅美の言葉が繰り返される)

雅美「お父さん、何か残してるかもしれない」

正雄「…」

雅美「お父さんこんな時のために、何か書き残してるかも」

正雄「…」

雅美「遺言書とかよ」

(正雄、ハッとする)

正雄「遺言書…それだ!」

天使「? どうかしました?」

正雄「遺言書だよ!俺、遺言書書くよ!あの子達に、俺の想いを伝えるよ!」

天使「…どういうことですか?」

正雄「なあ、俺、遺言書書くからさ!子供たちへ届けてくれよ!」

天使「ちょ、ちょっと、何言ってるんですか。あなたもうお亡くなりになったんですよ?」

正雄「いいじゃないか!今から書くからさ、なんとかしてくれよ!」

天使「そんな…」

正雄「安心して天国に行けるようにしてくれるのが仕事なんだろ?頼むよ、このとおりだ!」

(正雄土下座する)

正雄「このままじゃ、ウチの家族はバラバラになっちまう!俺のせいでそんなことになったんじゃ、俺貴子に会わせる顔がないよ!な!お願いだ!」

(正雄頭を下げる)

天使「…まあ、なんとかできなくはないですが…」

正雄(顔を上げて)ホントか!」

天使「条件があります」

正雄「条件?」

天使「ひとつだけ、私の頼みを聞いてください」

正雄「頼み?なんだよ?」

天使「先に答えてください。やりますか、やりませんか?」

正雄「え…?」

天使「あなたが覚悟を決めるなら、私もなんとかしてみます。どうしますか?」

正雄「わ…わかった、やるよ!やる!何だってやってやるよ!どうせ死んだ身だ。なんでもこいだ!」

天使「わかりました」

正雄「え…?」

天使「協力しましょう」

正雄「ホントか!ありがとう!」

天使「では、こちらの用紙に…」

正雄「ああ、書く!書くよ!あの子達へ遺言を!」

(暗転)

(公証役場。慌ただしく入ってくる音)

雅美「あ、来た来た!」

拓也「遅えぞ兄貴!」

洋一(息を切らせて)「すまん、会議が長引いて…それよりホントなのか、親父が遺言を残してたって!」

雅美「そうなのよ!」

洋一「まさか…あの親父が…」

雅美(嬉しげに)「ね、あたしの言った通りだったでしょ?」

洋一「でもお前、散々探したって遺言なんて見つからなかったんだろ…?」

雅美「それがね、この前お父さんが夢に出てきたの!」

洋一「親父が?」

雅美「それでね、お父さんが言うのよ」

(正雄にスポットが切り替わる)

正雄「雅美、父さんのことですまなかったな。実はな、父さんこんな時のために『公正証書遺言』というのを作っておいたんだ。ウチにも一部とっておいたんだが、どうも失くしてしまったみたいでな…でもな、公証役場に行けば謄本を出してくれるから、悪いが連絡してみてくれ」

雅美「で、言われた通り連絡してみたら、確かにお父さんの遺言が保管されてるって!」

アナウンス「番号札、93番でお待ちの方、2番窓口へお越しください」

雅美「あ!じゃあ行ってくるわね!」(一旦退場)

洋一「しかしあの親父がそんな手際のいいことを…信じられんな」

拓也「でもよ、公証役場があるって言うんだったら間違いないだろうよ。それによ、ウチの分失くしちまったってのがいかにも親父らしいじゃないか」

洋一「それはそうだが…」

(雅美戻ってくる)

雅美「お待たせ!」

拓也「で、どうなんだよ?親父はなんて…」

雅美「(制止して)落ち着いて、今読むから…(途中から正雄の声に切り替わる)「洋一、雅美、拓也。お前たち兄弟が私のいなくなった後もちゃんと仲良くやっていくためにも、これから私が言うことをよく聞き、守ってほしい。まず、私名義の家と預金についてだが…(フェイドアウト)」

雅美「やっぱりお父さん、あたしたちのこと考えていてくれたのね…」

洋一「親父…」

拓也「父さん…」

(暗転)

(天国への入り口。正雄が満足げに立っている)

天使「…で、いいんですか?これで」

正雄「ああ…」

天使「でも、これでこの先もずっと、うまくいくとは限りませんよ。また揉め出すかもしれないし」

正雄「そうだな」

天使「その時はどうするんです?また書くんですか?言っておきますけど、あれはあくまでも異例な…」

正雄「その必要はないよ」

天使「え?そうなんですか?」

正雄「あの子達なら、きっと大丈夫さ」

天使「…全然根拠がないように思えますが」

正雄「俺が言いたいことは全部伝えた。あとはあの子達でうまくやってくれるさ。親が子供を信じないでどうする」

天使「いや、私、親じゃないですし」

正雄「それに」

天使「え?」

正雄「これから先は、あの子達の人生だからな」

天使「…それで、今回の異例な対応についてですけど」

正雄「あんたホント冷たいな。今せっかくいいこと言ったのに…で、なんだよ?」

天使「約束は守ってもらいますよ」

正雄「え?」

天使「忘れたんですか?私の頼みを聞いてくれる約束でしょ?」

正雄「ああ…そうだったな、わかってるさ。俺も男だ、約束は守る。で、何すりゃいいんだ?地獄めぐりでもするのか?」

天使「ホント発想が古いですね」

正雄「うるさいな。もったいぶらないで早く言えよ」

天使「…書かなきゃいけないんですよね…」

正雄「は?何を?」

天使「決まってるでしょ。稟議ですよ」

正雄「りんぎ…?」

天使「あんな異例対応しちゃったんだから。ホントは事前にあげないといけないんですけどね、あなたが急かすから。事後になっちゃったけど、やっぱり書いとかないと」

(正雄、唖然とする)

天使「でも私、こういうのニガテなんですよね…だから、手伝ってくださいね。あなた元銀行員だし、慣れてるでしょ?」

正雄「…それが、頼み…?」

天使「ええ」

正雄「…」

天使「…どうしました?」

正雄「…」

天使「工藤正雄さん?」

正雄「…なんなんだよ」

天使「え?」

正雄「なんなんだよあんた!そんなことのために、あんな人を脅すような真似をしたのか!」

天使「いやあ、私も上司に怒られてしまいますから。あなたにも覚悟を決めていただかないと」

正雄「心臓に悪いわ!」

天使「大丈夫ですよ。あなたもう死んでるんですから」

正雄「あ、そうか…ってごまかすな!」

天使「さあ、そんなことはいいですから、早くこっちに来てください。私の書いたの見てくださいよ」

正雄「あ、おい!」

(中央に光が射す)

正雄(光の先を見つめて)「この先が天国…?」

天使「ええ。さあ早く」

正雄「ったく。(笑顔)わかったよ…」

(光の先へ向けて歩き出す。立ち止まり、振り向く。笑顔。また歩き出す)

(暗転)

正雄「なんだよこれ!あんた文章ヘタだな。何が言いたいのか全然わからないよ。いいか、まず最初に主旨を書いてだな。それから本件に至る経緯を説明して…」(フェイドアウト)

〜完〜


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honestk3no

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