継続的な採蜜に避けられない2つの壁(養蜂の最近事情)

(大手の)間室養蜂場のHPの新着情報(2019/3/11)に以下の文章が掲載されているのを読みました。
 花粉媒介用にミツバチを利用する農家さんと蜂蜜を目的とした養蜂家に向けた文章ですが、一般の方が読んでもちょっとショックな内容となっていると思います。


ミツバチご利用のお客様へ
■ネックになるダニ処理
 “アピスタン”“アピバール”だけでは、もはや限界ではないでしょうか? 限界というのは、全く効かないという意味ではなく、量や処理回数を増やさないとダニが残るという意味です(雄蜂巣を補助的に使う方法は手間がかかり、大量飼育にはあまり向かない面があります)。
 一方、採蜜には一つのジレンマがあります。採蜜期間の薬剤使用が禁止されているため、その期間にダニが増えると、蜂が消滅します。蜂の消滅を避けるため薬剤を使用すれば採蜜は中止になります。昨今、残留農薬には消費者も生産者も神経質になっています、採蜜する人の蜂が消滅してしまうことが多いのは、こんな事情があるのではないでしょうか? 使用方法を守った結果「蜂が消滅する」これはかなり異常な事態です。要は薄氷の上で蜂蜜やミツバチが供給され続けているということです。
………”

 大手の養蜂場でこんな現在の養蜂の状況が掲載されるなんて本当に厳しいのだなとしみじみと思い知らされるものがあります。
 文中の“アピバール”と“アピスタン”は、西洋ミツバチの天敵のミツバチヘギイタダニに対する薬剤で文中の説明の通り採蜜期間中は使用できません。
 私も昨年採蜜期間中にダニが増えて採蜜期間が終わるまでなんとかと思っているうちにダニが爆発的に増えてしまい、一時期は消滅覚悟の状態になりました。その後、思い切った対応をすることでなんとか消滅は免れましたが。しかし、このヘギイタダニに対応できるかどうかは、近年、ハチミツの収穫を目的とする養蜂家には避けて通ることができない高い壁となっています。

 もう一つの壁は、女王蜂の育成です。西洋ミツバチの女王蜂は3〜5年生きると言われていましたが、最近では2年もたないと聞くようになりました。そして、女王蜂の育成に失敗する確率も高くなっているそうです。

 一昔前までは、継続的に養蜂をすることは、ある程度の知識・技術があればそれほど難しいものではありませんでした。ですが、最近では昔から養蜂をしている人でもどんどん蜂群を減らしているそうです。蜂任せではもう乗り切れなくなっている。そんな話を度々聞くようになりました。

 定年後に養蜂をと考えている人からたまに話を聞くことがあります。最近では、趣味と言うよりも販売を視野に入れた実益が目的と言うひとが多くなりました。
 諦めろとは言いませんが、始めるなら早くがいいです。蜂任せに見える養蜂も技術が必要です。そして、日々変わっていく問題に対処出来るように技術の向上も欠かせません。
 そして、養蜂(農業にも当てはまりますが)の試行錯誤は一年単位で行います。人それぞれですが60歳から始め70歳までとするとたった10回です。教わった内容をそのままやって上手くいくほど甘くはありません。数年は試行錯誤が必要です。
 もし、養蜂を副業として始めたいなら、出来るだけ早く開始されることをオススメします。

 ミツバチヘギイタダニは、もともと東洋ミツバチ系のミツバチに普通に寄生していたダニで日本ミツバチでは問題になりません。ただし、日本ミツバチにもアカリンダニと言う西洋ミツバチに寄生していたダニが大流行し、一時期は絶滅も危惧されていました。

 こんな状況も広く知られることで早く対策がされるかもしれません。
 現在、チモバールと言うミツバチヘギイタダニ用の薬剤が再審議されています。世界的には広く使用されていて、ハーブであるタイムの香り成分のチモールが原料です。審査の議事録をみると薬害の心配はなく劇薬の指定も不要だが、ハチミツに匂いが残る可能性が指摘されつつの五年間の継続再審議中です。昨今の厳しい状況を思うと素早い認可をお願いしたいです。
 こういった審査も世間の関心が高いともっと早いのではと思うのです。

読んだ感想などコメントを書いて頂けたら、はげみになります。 ハチミツは、お仕事依頼の記事にネットオーダーのページへのリンクがあります。購入希望の方はそちらからお願い致します。